iPhoneユーザーであれば、「Lightningケーブル」の1本や2本持っていることだろう。9月24日に発売された「iPhone 13」シリーズも、接続はLightningケーブル仕様となっている。しかし現在、そんなLightningケーブルに存続の危機が訪れているのだ。
今回は、Lightningケーブルに訪れているピンチと、アップルがこの局面をどう打開していくつもりなのかについてお伝えしていきたい。
“Lightningケーブル廃止法案”の議論がEUではじまる
Lightningケーブルは、デバイスの充電やデバイス間のデータのやりとりに使われているケーブルおよびその規格だ。アップルが開発し、2012年の登場以降iPhoneなど多くのアップル製品に搭載されてきた。
しかしそれはあくまでアップル製品に限った話であって、世間的にはマイナーもいいところ。世界のスマートフォンの大半を占めるAndroidスマホではUSB Type-Cが標準的な規格となっている。
そうした世間の流れを受けて、EUでは「デジタル機器の充電端子をUSB Type-Cに統一する」法案が公開された。この法案が成立すれば、スマホやタブレット、カメラ、携帯ゲーム機などの充電端子でUSB Type-Cの搭載が義務づけられる。充電端子を統一することで、「『消費者の不便』を減らし、充電器の製造と破棄に関連する環境負荷を削減できる」としている。また、同法案では「サードパーティー製の充電器を使用すると充電速度が限定的になってしまう」という現象にも言及。デバイスのメーカーが不当に制限をかけないよう求める内容も盛り込まれているようだ。
だがアップルとしては、自社で開発を進め普及に努めていたLightningケーブルを、急にUSB Type-Cに統一しろと言われても、「はいそうですか」と簡単に従えるわけがない。BBCの取材に対し「1種類のコネクタのみを義務付ける法案は、イノベーションを促進するどころか抑制し、ヨーロッパと世界中の消費者に害を与える」と語り、法案へ反発するスタンスを鮮明にしている。
アップルにとっては寝耳に水の法案かもしれないが、これまでもLightningケーブルに対するユーザーの不満は噴出していた。iPhone 13シリーズの発表後、ネット上では仕様を見たユーザーから「Lightningケーブルだし指紋認証無いし、あまり魅力が感じられず」といった、Lightningケーブル続投を決めたアップルの判断に疑問を呈す声が多く聞こえてきた。さらには「早くUSB Type-C対応のiPhone出ないかな~」「USB Type-Cになるまで買わない」など、USB Type-Cを切望する声も少なくなかったのだ。
こうしたユーザーの反応にも背景が存在する。iPhone 13シリーズと合わせて発表された「iPad mini」では、USB Type-Cが採用されているのだ。これはPC周りのアクセサリパーツはUSB Type-Cが多いため、利便性を高めたいという判断による苦渋の決断なのだろう。しかしユーザーからしてみれば「iPadでできるならiPhoneでもやってほしい」という思いが出てくるのは当然のことと言えるだろう。
今回の「USB Type-C統一法案」は、あくまで内容が公開された段階であり、2022年中の採択を目指していると報じられている。そこからEUに加盟する各国の国内法の整備に1年、メーカーの対応のために1年の猶予がそれぞれ設けられるとみられており、実際に“USB Type-C搭載のiPhone”が出回るのは2024年以降となりそうだ。果たしてアップルはLightningケーブルを廃止せざるを得なくなるのだろうか。今後のゆくえにも注目していきたい。
参照元:EU、スマホ充電端子を「USB-C」に統一する法案 Lightningに存続危機【Engadget 日本版】