2022年10月11日、NHK(日本放送協会)は、テレビを設置しているのに不正に受信料を支払わなかったときに、通常の2倍の割増金を徴収できる制度の素案を発表しました。また、この制度は2023年4月に運用する目標も示されています。もし、NHKを受信できるテレビを持っているのに、受信料を払っていない人は、今後注意が必要ですね。
不正にNHKの受信料の支払いを免れると2倍の割増金を徴収される!
何かと議論のあるNHK(日本放送協会)の受信料ですが、2022年10月11日に、NHKを受信できるテレビを設置しているのに不正に受信料を支払わなかった場合、通常の2倍の割増金を徴収できる制度の素案を公表しました。
2倍の割増金が適用されるのは、(イ)不正な手段で受信料の支払いを免れた場合と、(ロ)正当な理由なしで受信機を設置してから期限までに受信契約の申し込みをしなかった場合の2つです。
(イ)の場合は「不正解約」や「不正免除」など、虚偽の内容で受信料を免れる悪質なものが対象となり、(ロ)のほうは受信機を設置してから「翌々月の末日」までに、受信契約の申し込みをしなかった場合となっています。
また、この制度は2023年4月を目標に運用することも示されました。つまり、今後はNHKを受信できるテレビを持っているのに、不正に受信料を払っていない人は、NHKに2倍の割増金を請求されても文句が言えないことになります。
●NHK「日本放送協会放送受信規約」の一部変更について(案)→こちら(PDF)
NHKはなぜ通常の2倍の割増金を徴収するのか?
それでは、今回どうしてNHKがこのような強硬とも思える手段を発表したのでしょうか? その目的はもちろん“NHKの受信料の適正かつ公平な負担を図るため”です。
実は、2021年2月26日に総務省は「放送法の一部を改正する法律案」を国会に提出しており、即時閣議決定されています。
この法案のなかには「受信契約の締結義務の履行遅滞に係る割増金に関する制度の整備」が含まれており、NHKの素案は、この割増金の具体的な数字や対象となる条件を示したものになります。
●総務省「放送法の一部を改正する法律案・概要」→こちら(PDF)
なお、総務省は「放送法の一部を改正する法律案」のなかには、2023年度にNHKの受信料値下げを実現するため、NHKの収支で利益が出た場合に一定額を還元目的積立金として、これを受信料引下げの原資に充当することを第一に挙げています。
つまり、今回の2倍の割増金の徴収は「NHKの受信料値下げ」を前提として、付随的に設定されたと見ることもできるでしょう。
もちろん、NHK側も「NHK経営計画(2021-2023年度)」のなかで550億円規模の支出削減を行い、経費を700億円規模で削減する一方、150億程度をネットコンテンツなどに投資することを表明しています。
将来、本当にNHKが大幅なコストダウンを図り、受信料の値下げを実現するのであれば、今回の措置はむしろ歓迎されるべきことかもしれませんね。
●NHK「NHK経営計画(2021-2023年度)」→こちら(PDF)
今回のNHKの素案では、2倍の割増金について以下のように方針が示されていることにも注目です。
「割増金が導入されても、NHKの価値や受信料制度の意義をご理解いただき、納得してお手続きやお支払いをいただくという、これまでのNHKの方針に変わりはありません」
「割増金は、事由に該当する場合に一律に請求するのではなく、個別事情を総合勘案しながら運用していくものと考えています」
また、法改正の付帯決議(抜粋)においても、「協会は、受信契約の締結に応じない者を対象とする割増金制度について、まず受信契約についての理解を得るため最大限努力し、真にやむを得ない場合にのみ割増金の徴収を行なうこと」と明記しています。
したがって、2023年4月以降、NHKの料金を支払っていないからといって、すぐに2倍の割増金を請求されるわけではないでしょう。
まとめ
いかがでしょうか? NHKの料金についてはいろいろ議論があるところですが、今回、NHKが2倍の割増金の徴収の素案を公表したのは、このような裏事情があったことがお分かりいただけたでしょう。
もし、将来NHK受信料の値下げが本当に実行されるなら、今回の措置もやむを得ないのかもしれませんね。
※サムネイル画像(Image:Dutchmen Photography / Shutterstock.com)