カナル型「イヤホン」が原因で外耳炎になりやすい!? その理由と対処法とは

スマホで音楽や動画などを視聴する際、イヤホンを使う人は多いはず。中でも「AirPods Pro」などの“カナル型イヤホン”は耳の中に差し込むタイプなので、耳から外れにくく遮音性も高いですよね。しかし、フィット感のあるイヤホンを頻繁に利用することで、「外耳炎」になってしまう可能性もあるそうです…。そこで今回は、「イヤホン使用による外耳炎の危険性と対処法」について、専門医に話を伺ってみました。

そもそも、外耳炎って何?

耳の中がかゆくなったら要注意?

取材に応じてくれたのは、日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医である「にしおぎ耳鼻咽喉科クリニック」の院長・金丸朝子先生。金丸先生によると、外耳炎は「外耳の皮膚に何かしらの物理的な刺激が加わり、炎症を起こした状態」のことで、「外耳」とは“耳の入り口から鼓膜までの部分(耳かきする時に触れる部分)”を指すようです。

耳の構造と各部位の名称(画像は「イラストAC」より)

外耳炎になると、耳の痛み、かゆみ、耳漏(耳から液体がでる状態)などが生じてしまい、ひどい場合は「耳のつまり感や聞こえづらさ」だけでなく、「顎を動かしたりするだけで激痛」が走ることも。そしてこの「外耳炎」にかかってしまう人は、“イヤホン”が原因となるケースも多いとのことでした。

外耳炎と、イヤホンの関係性&対処法を専門医に聞いてみた

短時間の利用で外耳炎になってしまう人も…

――カナル型イヤホンなどを使用することによって、外耳炎が発症する原因はなんなのでしょうか?

金丸朝子先生:外耳炎は「細菌性」の感染(細菌感染)や、耳の中にカビが生える「真菌性」といった菌が主な原因です。そして、カナル型イヤホンなどの使用で長時間密閉状態が続くと、耳の中が蒸れてしまい、菌が発生しやすい状況になります。加えて、イヤホンの脱着時やひっかいたりすることで傷がついてしまい、そこから感染することもあります。また、イヤホンが汚れている場合も感染の原因になってしまいます。

人によっては30分くらいで外耳炎になってしまう人もいるため、「通勤時の電車移動でしか利用しないから安心」というわけではありません。また、炎症が起こるのは耳の中(外耳道)なので、見た目では“外耳炎かどうか”がわかりにくい点も、注意するべきポイントです。

運動時の利用は要注意!

外耳炎になるリスクを下げる「骨伝導イヤホン」

――イヤホンを使用する際、外耳炎にならないために心掛けることはありますか? 予防法があればお教えください。

金丸朝子先生:まず耳を傷つけないようにしてください。たとえば、皮膚の状態が悪い(肌荒れしている皮膚)と、かゆくなってかいてしまい、その後炎症がひどくなって外耳炎になる恐れがあります。爪でひっかくのはもちろんダメですが、“耳かき”のし過ぎもよくありません。耳かきで耳をこすりすぎると、皮膚のバリアが弱まって感染しやすくなってしまうのです。

なお、「耳垢は自然と外に出ていく」と言われているため、耳かきをやる場合は月1回程度で十分だと思います。ただ、耳の中がカサカサの状態だと傷がつきやすくなってしまうので、耳かき自体を控えた方がいいでしょう。

あとは、耳の中の“蒸れ”を防ぐために、運動など「汗をかいた状態」での装着もオススメできません。代用品としては、「骨伝導イヤホン」がよいと思います。骨伝導イヤホンであれば耳に差し込む必要がないため、外耳道に傷がつく心配や蒸れる心配がありません。

また、リモートワークなどでイヤホンを利用するケースも増えてきますが、その場合はスピーカーやヘッドホンが代用品として挙げられます。ただ、ヘッドホンは長時間の利用で耳の中が蒸れる可能性があり、スピーカーも周囲の環境次第では使いにくいため、個人的には骨伝導イヤホンが一番いいのかなと思います。

どうしてもイヤホンを使う場合は、日頃からイヤホンを掃除して清潔な状態に保っておくことが大切です。

冷やすだけでは治らない!?

――もし、外耳炎が発症してしまった場合、自身でできる対処法があれば教えてください。

金丸朝子先生:たとえば、外耳炎で耳だれが垂れてきた場合は、ガーゼで覆うよりも、水で洗い流してください。シャワーの水で感染を起こすことはありません。たまに市販の外耳炎用の軟膏を塗る人もいますが、塗ってもひどくなる人もいるため、その場合は早めに病院に行った方がいいと思います。

また、耳がかゆくなったり痛くなったりした時は“耳を冷やす”のがオススメですが、あくまで、かゆみや痛みを軽減させる行為なので外耳炎が治るわけではありません。病院に行くまでの間にどうしても痛みに耐えられない場合は、一時的に市販の「ロキソニン」や「カロナール」などは飲んでも問題ありません。

外耳炎に関しては、軽いかゆみ程度であれば数日間イヤホンや耳栓などの使用を控えると、自然と治る場合もあります。ただ、かゆくてつい耳かきを続けてしまうと、悪化していきます。慢性化すると薬を使っても治らなくなったり、イヤホンなど“きっかけ”がなくても繰り返し起きたりするため、そうなる前に病院へ行くことをオススメします。

――外耳炎の発症ではなくても、イヤホン使用により“耳の中がかゆくなる”ことも多いのですが、こちらのかゆくなってしまう原因や対処法なども教えてください。

金丸朝子先生:かゆくなるのは「皮膚に炎症を起こしている」という状況です。耳だれが起きている場合はすぐに病院へ行くべきですが、軽いかゆみ程度なら「冷やす」「一定期間イヤホンしない」「かゆくても耳かきや爪で強くこすらない」などをおこない、数日間様子をみてもよいと思います。それでもかゆみが継続する場合は、我慢するよりお近くの耳鼻咽喉科を受診してください。

取材協力:にしおぎ耳鼻咽喉科クリニック

「AirPods Pro」を始めとするカナル型イヤホンは「ノイズキャンセリング機能」などもついていて使い心地抜群ですが、利用頻度が多かったり掃除などをこまめにおこなっていいなかったりすると“外耳炎”にかかる可能性があることがわかりました。金丸先生によると、「とくに夏は蒸れやすいので、外耳炎になりやすい」とのこと。

日頃のケアはもちろん、シチュエーションに応じて“骨伝導イヤホン”や“スピーカー”などに切り替えることも大切なのかもしれません。

●取材に協力して頂いたのは、外耳炎などの診療をおこなう「にしおぎ耳鼻咽喉科クリニック」は→こちら

佐藤司
編集・ライター。編集プロダクションで5年務めた後に独立。これまでアプリのレビュー記事をはじめ、ガジェット系の紹介記事なども数多く手掛けてきた。最近はスマホ関連の取材記事も執筆する機会が多く、他にもSNSで話題のツールやアイテム、iPhoneの裏技記事やキャッシュレス決済に関する記事にも取り組んでいる。

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