最近ネット上で「タワマン=時限爆弾」といった記事を目にする。その内容は足場が組めないタワマンは修繕費用が莫大になるうえに、将来、管理費の滞納が発生して大規模修繕費が足りなくなる。その結果、タワマンの資産価値が落ちるというのである。果たしてこれは本当なのだろうか? 実際にタワマンに住む筆者が、タワマンの大規模修繕について検証する。
タワマンだけが該当する問題はほとんどない!
筆者はタワーマンション(以下タワマン)に6年以上住んでいるが、ネット上でタワマンが金持ちの象徴としてディスられている記事を目にするのは、正直あまり気分が良くない。とくに、最近気になったのは「タワマン=時限爆弾」という記事である。挑発的なタイトルを付ければ、ネットで人気記事になるのは十分理解できるのだが、その内容は首を傾げたくなるようなものであった。
この記事の内容を要約すると「足場が組めないタワマンの大規模修繕費用は莫大なものになる。しかも、将来は修繕積立金の滞納が発生し、大規模修繕費不足になるため、タワマンの資産価値が落ちる」というものであった。
筆者がまず気になったのは、修繕積立金の滞納や大規模修繕費不足の問題はすべてのマンションに当てはまることであり、何もタワマンだけの話ではないことである。実際、管理費や修繕積立金を長期間滞納する者がいたら、どのマンションでも管理組合が民事訴訟を起こして、滞納者の部屋を差し押さえて現金化できるので問題はない。もちろん、これは管理組合がしっかり機能していることが大前提になるが、マンションによっては大規模修繕計画を見直さないで、将来、費用が足りなくなるのはよくある事例だ。しかし、これもタワマンに限った話ではない。
(Image:Shutterstock.com)
大規修繕工事費用が12億円かかったとされる埼玉県川口市の「エルザタワー55」(写真右)。ただし、650戸もあるので1戸当たりの費用は意外と高くはない
「タワマンの大規模修繕費は高い」は本当か?
ネットの記事では、タワマンの大規模修繕例は非常に少なく、実際にいくらお金がかかるかわからないと、不安を煽るような書き方になっている。しかし、それは決して正しくはない。日本最初のタワマンは、1971年に完成した「三田綱町パークマンション」だと言われているが、この物件は高さ52m、19階建てなので、現在のタワマンの定義(60m以上、20階建て以上)から外れてしまう。確実なのは1976年に完成した高さ66m、21階建ての「与野ハウス」だ。いずれにせよ、日本のタワマンはすでに40年以上の歴史があり、大規模修繕の実施例もたくさんあるのだ。
タワマンの工事では足場を組めずゴンドラ方式になるため、工期が長く費用も数億円かかるのは事実だ。しかし、タワマンは500~1,000戸もある大規模マンションなので、1戸当たりの負担額は一般的なマンションとさほど変わらない場合も多い。
たとえば、1998年竣工した埼玉県川口市にある「エルザタワー55」は高さ185.8m、55階建てのタワマンだが、17年目となる2015年に大規模修繕工事を実施した。この費用は約12億円かかったと言われているが、650戸の大規模マンションなので、一戸当たりの平均負担額は約185万円となる。単純に17年で割れば1年当たり約11万円=月額では約9,000円に過ぎないのだ。もちろん、17年間にはそのほかの保守費用もかかっているはずだし、2回目の大規模修繕はもっとお金がかかるが、それもタワマンだけの話ではないのである。
「タワマン=時限爆弾」といった過激な記事を見れば誰でも不安になるだろうが、その内容は一般的なマンションに当てはまることばかり。ことさらタワマンばかりを問題視するのはいかがなものだろうか?