老後2,000万円問題がお金の不安に拍車をかける現代社会。貯蓄や資産形成など、現役世代はありとあらゆる方法で、来る老後の暮らしに備えている。生活の根幹をつくる費用といえば、食費と光熱費だろう。資源に乏しい日本である。現在の物価高や資源価格の高騰は一過性にならず、今後もずるずると増え続け老後の生活をひっ迫するおそれはある。
ただ、日々の費用に目を向けるあまり、暮らしの重要な要素を忘れてはいないだろうか。衣食住を支える「住まい」である。賃貸と持ち家、新築とリフォームなど、条件は人それぞれであり、選択によって老後生活に与える影響はどのように変化するのだろうか。
65歳以上の持ち家派の約90%が「オススメしたい」と回答
住宅の建築からリフォーム、マンション大規模修繕まで幅広く手掛けるカシワバラ・コーポレーションは4月24日、「老後の住まいに関する実態調査」の結果と講評を発表した。同調査は老後の住まいについて考えるきっかけを提供することを目的に、65歳以上の年金受給者600名を対象に、持ち家/マンション、持ち家/戸建て、賃貸/マンション、賃貸/戸建てというカテゴリー別に各150名に分類。それぞれの実際の暮らしをふまえた内容を収集した。
持ち家派と賃貸派で2分された今回の調査。「老後に持ち家で生活することをオススメしたいと思いますか」という問いに対し、持ち家派の89.7%が「そう思う(とてもそう思う、ややそう思う)」と回答しており、持ち家はかなり満足度が高いようだ。その理由として、「老後生活がはじまってから感じた持ち家のメリット」の設問で、第1位は「安定した居住環境が手に入る」、次点は「ローン支払い完了後の出費を抑えられる」と、生活の快適さと経済性を両立できることがうかがえる。
賃貸派は不満多め? 家賃や資産にならない点がネックに
一方の賃貸派に「オススメしたいか」の問いをしたところ、「そう思う(とてもそう思う、ややそう思う)」と答えたのは58.3%にとどまった。つまり40%近くが「オススメしない」ということであり、持ち家派との満足度の差が浮き彫りとなった。その原因は、やはり家賃。老後も家賃支払いが続き、家賃上昇の可能性が常につきまとう。そして、持ち家との大きな違いとして、住宅が資産として残らないため、人によっては「お金を垂れ流している」感覚に陥ってしまうのだろう。
ただ、賃貸には「持ち家ではかかる各種税金の支払いがない」や「修繕費用や手間がかからない」といったメリットがある。要は、住む人の経済状況やライフスタイル、住まいにおける優先順位をふまえて決める必要がる。住まいに不満があれば、暮らし全体の満足度まで低減するだけに、現役世代はいまのうちから老後の住まいも念頭において、ライフキャリアを構築する必要があることは間違いない。