NHK受信料を払っていない人が途中から契約して今から支払うと過去分はどうなる?

NHKの受信料は、放送法に基づき、NHKの放送を受信できる設備を持っている人は、NHKと契約を結んで支払う義務があるとされています。しかし、実際には「NHKに対して未払いをしている人」や「そもそも契約をしていない人」も少なくありません。

NHK受信料を払っていない人が途中から契約して今から支払うと過去分はどうなる?1

NHKの発表によると、2022年度末時点のNHK放送受信料の推計世帯支払い率は78.3%。さらに1年以上支払っていない「未収数」は116万件と、前年から25万件増えています。つまり、5世帯に1世帯はNHK受信料を支払っていない計算になります

この中には本当に「テレビを持っていない」方もいれば、実はテレビ自体は家にあるものの放送受信契約書を提出していない方もいるでしょう。うっかり放送受信契約書の届け出を忘れている方もいるかもしれません。

理由はともあれ、現時点でNHK受信料を払っていない人が「やはりNHKを見たい!」と途中から契約する場合、過去分の受信料はどうなるのでしょう?

この記事では、NHK受信料の過去分の請求書などについて解説します。

【NHK契約済みの場合】そもそもNHK受信料を払わないとどうなるのか

NHKと契約しているにも関わらず、受信料を支払わない場合、どのような措置が取られてしまうのでしょうか。

【NHK契約済みの場合】そもそもNHK受信料を払わないとどうなるのか

まずNHK契約の場合、NHKの受信料を支払わないと、以下の手順で手続きが進みます。

・NHKから督促状が届く
・裁判所から督促状が届く
・最終的には財産の差し押さえになる

受信料を支払わないと、延滞金が発生し、NHKから督促状が届きます。それでも支払わないと、裁判になり、負けると財産の差押えになってしまいます。ただし、契約をしていなければ支払い義務は発生していないので、差し押さえが行われることはありませんが、裁判によって強制的に契約(※1)させられることもあります。

(※1)参考元:NHK放送文化研究所「NHK放送受信契約 未契約者に対する訴訟で初の司法判断

未払いに対する延滞利息も発生する

日本放送協会放送受信規約の「第12条の2 支払いの延滞」では「放送受信契約者が放送受信料の支払いを3期分以上延滞したときは、所定の放送受信料を支払うほか、1期あたり 2.0%の割合で計算した延滞利息を支払わなくてはならない。」と定められています。

つまり受信料の支払いを決められた期限までに支払わなかった場合には、延滞利息が発生することになります。

参考元:NHK

実際にNHKが延滞利息を請求したことはない

余談ですが、NHKはこれまで延滞利息を請求したことはありません。この点については、期日までに支払わなかった人が延滞利息を払わなくて済むため得をし、期日までに支払った人が期日までに支払わなかった人と同じ扱いを受けるため損をするという不公平な運用をしているという批判の声もあります。

参考元:参議院

【NHK未契約の場合】2023年4月からNHKは割増金制度も導入

ここまでは「NHKと契約しているにもかかわらず受信料を未払いにしている」ことを前提とした解説でした。

では「そもそもNHKと契約していない」場合はどうなるのでしょうか。結論から言えば、テレビ等の受信機があるのに契約をしていない場合は割増金制度の対象となります。

【NHK未契約の場合】2023年4月からNHKは割増金制度も導入1

2023年4月1日から、NHKは正当な理由なく受信契約に応じない人に割増金を請求できる制度を導入しました。この制度では、テレビを設置した月の翌々月の末日までに放送受信契約書をNHKに提出しなかった人が割増金の対象となります。割増金は、受信料の2倍に相当します

参考元:NHK

「テレビなどの受信機を本当に持っていない」場合はNHKと未契約でも問題はありません。たとえば自宅にあるテレビが「チューナーレステレビ」である場合などが該当します。

一方でテレビを所有しているにも関わらずNHKと未契約である場合は、まずは契約をしましょう。契約をしない限り、割増金がかさむこととなり、大きな負担にもなります。また後述する「消滅時効」の対象にもならないというデメリットがあります。

NHK受信料を払っていない人が途中から契約して今から支払うと過去分はどうなるのか、具体的に見てみましょう。ここでは、契約済みの場合と未契約の場合に分けて説明します。

【契約済みの場合】過去分を今から支払うことは可能?

可能です。たとえば振込用紙の期限が切れてしまっても、支払うことは可能です。手元の振込用紙の期限が切れてしまった場合でもコンビニや金融機関に持っていけば支払うことができます。
ただし、振込用紙そのものをなくしてしまった場合、NHKに問い合わせる必要があります。

参考元:NHK「払込期限までに支払いができない

【未契約の場合】過去分の請求書は来る?来ない?

本来は2019年10月以降、NHK受信料はNHKを受信できる機器を設置・所持した時点で支払い義務が発生し、翌月から支払いが生じます。なお2019年10月以前に受信機を設置した場合は、設置当月から支払いも発生します。

そして未払い期間がある場合は、前述の通り、過去分も含めて督促状が来る可能性があります。督促状が届いたら支払う必要があり、応じなければ差し押さえの対象になり得ます。なお「NHKと未契約かつ過去分を払う」際に問題となるのは、その人は「いつから受信機を設置しているのか」です。

たとえばAさんはNHK受信料を10年にわたって未払いにしている疑いがあるとしましょう。しかしそのAさんの自宅に、本当に「10年前から受信機があるのか」を証明するのは簡単ではありません。
逆に言えば、そのAさん当人が「その10年の間、間違いなく受信機を自宅に置いていない」と断言できるのであれば督促に応じる必要があるのかも含め、法律の専門家に相談すべきでしょう。

【NHK契約済みの場合のみ】NHK受信料の過去分の料金を免除するには

NHK受信料の過去の料金を免除する方法は、時効の成立を待つという方法があります。

【NHK契約済みの場合のみ】NHK受信料の過去分の料金を免除するには1

NHK受信料の時効は5年です。そのため、支払期限から5年が経過している受信料に関しては免除できる可能性が高いといえるでしょう。ただし「時効の援用」という、返済義務がないことを主張する意思表示を行わなければ、時効は成立しません。放置していると、強制執行の対象となる可能性があるので注意が必要です

消滅時効援用通知書

なお、「時効の援用」は消滅時効援用通知書を内容証明でNHKに送付する方法が確実です。この通知書は例ですが、同じような内容が書いてあれば通知書として効果を発揮するでしょう。

参考元:NHK「受信料に時効はあるのか

過去分をまとめて請求される場合、料金目安はいくらになる?

NHKと契約していない場合、消滅時効の援用を受けられないため、過去分すべての請求が届く可能性があり、請求される料金は様々です。

一方でNHKと契約しているものの未払い期間がある場合、NHKの受信料の時効は5年です。つまり支払い期日から5年経過している受信料に関しては「時効」となる可能性があります。つまり最終支払い日の翌日から5年経過している受信料に関しては「時効」となる可能性があります。

つまりまとめて請求されたとしても、時効援用を受けられれば実際に支払う必要があるのは「5年分」と言えるでしょう。あくまで簡単な試算ですが、NHKの1年分の料金目安は15300円(2023年9月時点)。その5年分に加え、延滞金が発生すると考えられます。

まとめ

NHK受信料は、放送法に基づいて、NHKの放送を受信できる設備を持っている人は、NHKと契約を結んで支払う義務があるとされています。しかし、実際には、契約をしていない人や、契約していても支払いを滞納している人が多くいます。その場合、過去分の受信料については、NHKが請求する権利と視聴者が支払う義務の間にギャップがあります。

そのため、NHK受信料を払っていない人が途中から契約して今から支払うと過去分はどうなるかは、断言できません。しかし、NHKが過去分の受信料や割増金を請求する可能性もありますし、延滞利息も発生する可能性もあります。そのため、NHK受信料は早めに支払うことがおすすめです。

監修日:2023年10月19日

宮下陽一/クリコ行政書士事務所
行政書士事務所と共に、Web制作会社を経営。
農地転用や農振除外、墓地経営等などオーソドックスな許可申請から、出入国の申請取次やコロナ関連の支援金申請など時の需要に応じた対応もしている。著書にアプリケーション解説書籍等。

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