将来の夢を叶えるために行きたい学校があるものの、家庭の経済状況によっては進学が難しいことも…。そんな時に救いの手を差し伸べてくれるのが“奨学金制度”です。ところが、奨学金返済のために、夢を叶えることを諦めてしまう人もいるようです。公益財団法人公益推進協会 アディーレ未来創造基金は、全国の20代~30代の男女を対象に、「奨学金に関するWEBアンケート」を実施。「奨学金の支払いがあることで夢を諦めたことがありますか?」「奨学金の返済が重荷になっていると感じますか?」などの質問をしていたので、その結果を見ていきましょう。
3人に1人が奨学金返済のために夢を諦めている
最初に、「奨学金の支払いがあることで夢をあきらめたことがありますか?」と質問。すると、「あてはまる」の15.1%と、「ややあてはまる」の18.2%を合わせた33.3%が「夢を諦めたことがある」と回答していることがわかりました。
その内訳を見ていくと、「起業」や「資格取得」「転職」といったさらなるチャレンジや、「結婚」「出産や教育」といった人生の新たなステップに躊躇している人が多いことがわかります。自身の将来のために奨学金で進学したにもかかわらず、チャレンジやステップアップを諦めなければならないというのはなんとも複雑です。
そのうち、全体の77.8%が「金銭的余裕があれば(もっと)夢が持てると思う」と回答。経済状況が人生の選択肢を狭めている様子がうかがえます。
「当初の想定以上に奨学金の返済が重荷になっていると感じますか?」との質問には、「あてはまる」の43.8%と「ややあてはまる」の36.2%を合わせた80.0%が「重荷になっている」と回答しました。国内の経済状況にも左右され、思い通りの仕事に就いて想定通りの収入が得られるという確証があるわけではないため、奨学金制度を申し込んだ時に考えていた程度の負担では済まされないという人も多いようです。
回答者の約3人に1人が奨学金を利用した経験あり
では実際に、奨学金制度を利用した人はどのくらいいるのでしょうか。調査によると、全体の31.9%が「奨学金を利用していた」と回答しています。約3人に1人に相当するため、意外と多くの人が利用している印象です。
「利用していた奨学金制度」は、「貸与(返済義務あり)」が86.0%、「給付(返済義務なし)」が23.3%、「授業料免除」が9.8%となっており、奨学金制度の大部分は返済の義務が生じる「貸与型奨学金」であることがわかりました。
「奨学金制度を利用した理由」を尋ねると、1位は「授業料」で60.3%でした。続く2位が「生活費」で32.0%、3位が「教材費」で26.5%、4位が「入学金」で24.3%、5位が「ゼミ、研究費」で22.3%となっています。
授業料が最も多くなっていますが、学校生活を送る中で必要となる様々な用途でも奨学金が利用されていることがわかります。
約半数が現在も返済中、約3割が残金100万円~200万円未満
続いて、現在の返済状況について尋ねています。すると、51.5%が「返済中」と回答。「返済が完了した」という人は30.1%、「返済義務なし」と回答した人は14.2%でした。半数以上の人が返済を続けて家計が圧迫されており、そのことが今回の調査の結果につながっているようです。
実際に奨学金を利用したという人はいくらぐらい借り入れたのでしょうか。最も多かったのは、「200万円~300万円未満」の28.6%、2位が「100万円~200万円未満」の19.2%、3位が「300万円~400万円未満」の17.8%でした。
大学の授業料は、学部や学科、選んだ学校によりそれぞれ異なりますが、国公立で年間およそ50万円前後、私立で年間およそ90万円前後が平均のようです。4年間の授業料を奨学金でまかなうとすると、上位の200万円~400万円程度の借り入れになってくるという計算です。
まだ返済中だという人の残高はどのくらいか調査すると、最も多かった回答は「100万円~200万円未満」の28.0%でした。次いで2位が「50万円~100万円未満」の26.4%、3位が「10万円~50万円未満」の15.9%、4位が「200万円~300万円未満」の12.1%となっています。返済が始まったばかりの人も、やっと終わりそうだという人も含まれていて、悲喜こもごもといったところでしょうか。
8割以上が返済計画は「予定通りに進んでいる」と回答
今も返済を続けているという人の返済計画についても尋ねています。すると、65.4%の人が「予定通り」と回答しています。また、「予定より進んでいる」と回答した人は19.7%と、苦しい生活の中でも返済計画は予定通りに進めている人が多いようです。
毎月の返済額については、最も多かったのが「1万円~2万円未満」で50.5%、次いで2位が「2万円~3万円未満」で16.3%、3位が「1万円未満」で15.6%、4位が「3万円~4万円未満」で7.2%となっています。
就職したばかりの若者にとって、月に2万円というのは大きな金額のような気がします。中には10万円以上の返済をしているという人も…。学業のために必要だったお金とはいえ、返済が生活を圧迫している人も少なくないのではないでしょうか。
約3割が奨学金を借りたことに後ろめたさを感じていた
奨学金を借りたことをパートナーや周りの友人に話しているか尋ねると、20.9%が「話していない」と回答。「一部に話している」という回答は22.0%、「話している」という回答は57.1%でした。きちんと話せている人は5割強、それ以外は友人やパートナーに話しづらいと感じていることがわかります。
さらに、「奨学金を借りたことに対し、後ろめたさを感じているかを教えてください」という質問には、「感じている」の15.9%と「やや感じている」の20.6%を合わせた36.5%が「後ろめたさを感じている」と回答しています。
将来の夢を叶えるために進学したいという思いを実現するための手段として利用する奨学金制度。しかし、いざ返済を続けていくと、結構な重荷であると感じている人も多いようです。未来のための投資が未来の自分の首を締めてしまわないように、奨学金制度を利用する際には返済計画も含めた念入りな検討が必要なのかもしれませんね。