南海トラフ大地震や関東大震災の発生確率が高まっていると言われる現在、高さ60mを超えるタワーマンション(タワマン)は本当に大丈夫なのか、心配になる人は多いだろう。だが、過去の実績を見れば、むしろタワマンの方が安全だということができる。今回はタワマンの安全性について解説しよう。
タワマンは揺れることで倒壊を防いでいる
2011年の東日本大震災では、西新宿の超高層ビルが長周期地震動の影響で船のように大きくゆっくりと揺れた。この揺れで建物の中にある家具などが大きく動く映像を見れば、誰だって「本当にタワーマンションは大丈夫なの?」と不安になるだろう。しかし、超高層ビルは大きく揺れることで地震の振動を吸収し、倒壊しないように設計されている。したがって、大きく揺れるのは当たり前のことなのである。
事実、1970年代に建築されたものも含む西新宿の超高層ビル群は、多少の損傷はあったものの倒壊することはなく、今でも普通に利用されているのだ。もっとも、S造(鉄骨)のオフィスビルとRC造(鉄筋コンクリート)のタワマンでは建物の構造が大きく違うが、いずれにしても震度6強~7の大地震でも倒壊しない基準で設計されているので、不必要に心配することはない。むしろ東日本大震災では、液状化現象で傾いた一軒家の被害の方が大きく、逆に超高層ビルやタワマンの安全性が実証された形になったと言えるだろう。
【耐震基準の歴史】
1923年 関東大震災 → 1924年 市街地建築物法改正
1948年 福井地震 → 1950年 建築基準法制定(旧耐震基準)
【目安】
震度5強で倒壊しないこと
1878年 宮城県沖地震 → 1981年 建築基準法改正(新耐震基準)
【基準】
震度6強~7の大地震でも倒壊しないこと
震度5強程度の中規模地震ではほとんど損傷しないこと
東日本大震災で大きく揺れた西新宿の超高層ビル群。1970年代に建てられたものも多いが、倒壊することはなく東日本大震災後も普通に使用されている
最近のタワマンには「制振」や「免震」といった、地震の揺れを軽減する最新の工法が採用されている。これによって、東日本大震災レベルの大地震でも倒壊することはないと言われている
「制振」や「免震」なら倒壊する心配はまずない
現在の建築物の耐震基準は1978年にマグニチュード7.4を記録した宮城県沖地震を受け、1981年6月に施行された「新耐震基準」に沿って設計されている。新耐震基準では震度6強~7レベルの大地震でも建物が倒壊しないことが基準になっているのだ。もちろん、タワマンもこの基準で設計されており、現在では、耐震よりも地震の揺れに強い「制振」や「免震」といった工法も採用されるようになり、より安全性は高くなっている。もちろん、何にでも“絶対”はないが、たとえば東日本大震災のとき、仙台の免震タワマンでは、室内の被害がほとんどなかったと言われている。どうしても大地震が心配だという人は、「制振」や「免震」を採用したタワマンを選んでおけば安心だろう。
ちなみに、ネットでは「想定外の大震災が来たらタワマンも危ない!」などと主張する人もいるが、想定外を言い出したらキリがない。もし、巨大隕石が落ちてくればどんな建物を作っても無駄である。仮に震度7以上の大地震が起きれば、一軒家や低層マンションだってひとたまりもないはずだ。ことさらタワマンだけが危ないわけではないと思うが、いかがだろうか?