2017年、ロンドンにある高層公営住宅の4階で火災が発生し、アッという間にタワー全体を焼き尽くす火災が起きた。あんな映像を見れば誰でもタワマンは恐ろしいと思うだろう。だが、日本のタワーマンション(タワマン)は非常に火災に強いことをご存じだろうか? 今回はタワマンの火災について解説しよう。
日本のタワマンは火災に強い造りになっている
(Image:?Natalie Oxford)
2017年6月14日未明、ロンドンにある24階建ての高層公営住宅「グレンフェル・タワー」で火災が発生した。4階から出火するとアッという間に上層階まで燃え広がり、タワー全体を焼き尽くした。その結果、少なくとも70人以上の犠牲者を出す大惨事となったのである。日本でも大々的に報道されたので覚えている人も多いだろう。あんな火災を見れば、誰でも「タワーマンション(タワマン)はやっぱり怖い」と感じるだろう。
しかし、あのような火災が日本のタワマンで起こるとは、なかなか考えにくいのである。理由はいくつかあるが、「グレンフェル・タワー」は外装が燃えやすい素材で覆われており、建物の外から火が燃え広がった。だが、日本の建物の外壁はもちろん、室内も燃えにくい防炎素材で作られている。また、火災報知器やスクプリンクラー、防火シャターなどの設置が義務づけられており、ほかの部屋に延焼する可能性は非常に低いのである。
●ロンドンの高層公営住宅は燃えやすい素材の外壁を伝って火が上に延焼したが、日本では燃えにくい部材で覆われている
●火災報知機やスプリンクラー、防火シャッターなどの設置が法律で義務付けられていて、火災に対する備えがきちんとされている
●建物全体でカーテンやじゅうたんなどは防炎素材を使うことが法律で義務付けられている
●戸境壁やドアすべてが防炎素材のため、スプリンクラーの作動で隣の部屋まで延焼する確率は非常に低い
日本タワマンでは火災が延焼することは考えにくいが、万一の場合、タワマンは屋上からヘリで脱出することも可能である
タワマンにはヘリポートが設置されているが、実はヘリポートには2種類ある。「H」(Heliport)はヘリが離着陸できるが、「R」(Rescue)は着陸できずホバリングして救助活動をする場所である
万一のときはヘリポートから脱出可能!
もし、ロンドンの「グレンフェル・タワー」が日本と同じ仕様で建てられていたら、あんな悲惨な火災にはならなかっただろう。実際、日本のタワマンで高層階が火事になった例はいくつもあるが、火災のあった部屋だけが燃え、ほかの部屋に延焼することはほとんどなかったのである。
ちなみに、日本の建築物では、31m(およそ15階建て)を超えるマンションでは非常用エレベーターの設置が義務づけられている。このエレベーターは耐火構造の壁で囲まれ、万一停電した場合でも非常電源で稼働できるようになっているが、これは火災が発生したとき、高層階でも確実に消防活動ができるようにするためのもの。基本的に住民が避難するためのものではないので注意しよう。
また、タワマンにはヘリポートが設置されているが、これは消防庁の「緊急離着場等設置指導基準」で設置基準が規定されている。それによると高さ31m~100mの場合は、緊急離着陸場か緊急救助用スペースを、高さ100m超の場合は緊急離着陸場を設置することになっており、万一の場合は屋上から脱出することも可能である。