現金を持ち歩かずに、手軽に決済ができる電子マネー。その利便性により急速に普及しているが、一方で電子マネー型の特殊詐欺が急増しているという。2023年1月から11月までの被害総額は、なんと18億円超であると警察庁から発表された。公表されたデータをもとに、被害の実態と対策について考えていきたい。
被害の認知件数、被害額ともに前年の約2倍!特定の電子マネーに被害が集中
2023年1~11月の「電子マネー型の被害状況」は、認知件数が3,047件、被害総額は18億5,700万円にのぼった。昨年の認知件数1,416件、被害額9.9億円(注1)と比較すると、いずれも約2倍と被害が急増している。とくにA社の電子マネーに被害が集中しており、同年11月の認知件数は被害全体の92.8%、被害額では92.7%を占めた。
手口として、事業者や法務省・裁判所などを名乗る犯人から、未納料金が発生している、ウイルス駆除の見返りなどの名目で、被害者に電子マネー(プリペイドカード)を購入するように要求。カードに記載されたコードを伝えるように指示し、電子マネーをだまし取る被害が多いようだ。電子マネーの特殊詐欺は、請求額が少額であることが多く、不安に思った被害者が支払いやすいという。しかも、一度支払ってしまうと何度も要求してくる可能性があり、注意が必要だ。
特殊詐欺ではメールや葉書のほかに、電話をかけてくるケースがあるというが、どのような電話番号に気をつければよいのだろうか。
(注1)「令和4年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」
特殊詐欺に「国際番号」の利用が急増、被害に遭わないためには番号の確認が必須
「特殊詐欺に犯行利用された番号種別件数の推移」をみると、2023年6月頃から詐欺に利用される「国際番号」が急増しており、11月には2,900件にもおよんだ。以前は、通話料の安い「050」から始まるIP電話番号が詐欺に最も利用されていたが、9月時点で逆転した形だ。2023年6月に、政府が「050」ではじまる電話番号の契約時に、利用者本人の確認を事業者に義務化した政策が影響しているのかもしれない。(注2)
(注2)総務省ホームページ
次に「特殊詐欺に利用された国際番号の国別番号数の推移」を確認していくと、2023年10月は約9割が「+1」からはじまるアメリカ合衆国・カナダからの番号だったが、11月は約5割に減少。代わってヨーロッパや北欧、他国からの詐欺電話が相次いだ。
警察庁では「+1」や「+44」などからはじまる番号には出ないように呼び掛けているが、詐欺―グループもこうした対応を受けて、他の国際番号を悪用しているようだ。
では、被害を受けないためには、どのように行動すればいいのだろうか。
知らない番号からの電話に出ないことが対策のひとつだが、ときには必要な電話がかかってくることもある。基本的に「+(プラス)」からはじまる番号は国際電話のため、表示された番号をみて判断するのも、犯罪に巻き込まれるリスクを抑えることにつながるだろう。
ただ、詐欺グループは日々、方法を変えて私たちを狙っている。犯罪やトラブルに巻き込まれないために、こまめに情報をアップデートすることが大切だ。
※サムネイル画像(Image:Primestock Photography / Shutterstock.com)