2月~3月にかけて訪れる引越しシーズン。引越しをする人たちの間では毎年「退去費用にまつわるトラブル」が話題にあがりますが、世間では一体、どのくらいの人が退去費用に納得がいっているのでしょうか?
株式会社LIFULLが運営する不動産・住宅情報サービスの「LIFULL HOME’S」では、5年以内に賃貸物件から引っ越しをした1075人(不動産業を除く)を対象に、「退去費用に関する調査」を実施。「入居者(借主)が負担しなくて良い費用」なども紹介していたので、さっそく見ていきましょう。
納得がいかない退去費用は、交渉をすることで減額になる場合も
まず「賃貸物件の退去費用について納得はいきましたか?」と質問したところ、「納得がいった」と回答した人は38.1%という結果に。「納得がいかなかった」と回答した人は51.6%で、その内訳としては「納得がいかない部分があったが、提示されたとおり支払った」との回答が34.7%、「納得がいかず交渉をして減額となった」との回答が10.9%、「納得がいかず交渉したが減額にはならなかった」との回答が6.0%となっています。
結果、提示どおりに支払ったという人が78.8%と大半を占めていますが、16.9%の人は納得がいかずに交渉しており、そのうち10.9%の人が減額となっていることから、必ずしも退去費用は“提示額をそのまま飲み込んで払わなければいけない”というわけでもなさそうです。納得がいかない場合は、支払う前に内容について問い合わせてみるのもアリかもしれません。
賃貸契約における「原状回復義務」を正しく理解できている人は約4割
次に、賃貸契約で義務付けられている「原状回復」という言葉について、どのくらいの人が正しく理解できているかたしかめるため、適切な選択肢を選んでもらいました。すると、正解の「故意や不注意によってできた汚れ・傷について元の状態に戻すこと」を選んだ人は42.7%で、最も多かった回答は「借りた当初の状態に戻ること」の48.2%でした。
国交省のガイドラインでは「原状回復」義務について、「貸借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、貸借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による消耗・毀損を復旧すること」と記載されており、入居者の使い方に問題があったことで、できた汚れや傷の修繕費用を“入居者が負担する”と定義されています。
つまり、経年劣化など“入居者の使い方によらず、傷んでしまったもの”に関しては負担する義務はなく、半数近くの人が勘違いしていたように、完全に「借りた当初の状態に戻す」必要はないということです。
入居者負担かと思いきや、実は違った「画びょうやピンの穴」は約6割が不正解
続いて、貸主の負担となっていて、“入居者が負担しなくてよい費用”について、どのくらい正しく知られているか調査しています。それによると、最も正答率が低かったのは「ポスター等を張ったことによる画びょうやピンの穴」で33.4%、続く2位が「家具を設置してできた床やカーペットのへこみや跡」で39.6%、3位が「冷蔵庫設置による壁焼け」で43.9%、4位が「エアコンを設置したことでできた穴や跡」で46.1%、5位が「水漏れが発生したエアコンの修理・交換代」で46.9%などとなっています。
画びょうやピンの穴というと、壁に故意に穴を開けるため、入居者が負担すると思いがちですが、通常の生活の中で行われることの範疇とされているようです。しかし、壁の下地にまで達するような釘やビスによる穴の補修は入居者負担になるようなので、注意が必要かもしれません。
また、同じビス穴であっても、エアコン設置の際に開けた穴に関しては、“生活必需品の使用にともなってできた消耗”として、貸主負担になるそうです。通常の使用なのか、そうでないのかによってどちらの負担になるかが変わるため、部屋を借りている間は注意しておきたいところです。
「専用庭の雑草処理」が入居者負担だと知っていた人は3割以下
続いて、“入居者が負担しなければならない費用”についても同様に、正解率を調べています。調査の結果、正答率が最も低かったのは「専用庭の除草処理」の27.8%でした。7割以上の人が貸主負担だと思っていたようです。続く2位が「雨の吹き込みによる床の色落ち」で38.0%、3位が「(物件構造に起因しない)結露によるカビ・シミ」で41.0%、4位が「エアコンの水漏れによる床の傷み」で41.4%、5位が「水回りの水垢やカビ」で48.2%という結果でした。
なんとなく、庭は建物の管理者がやってくれそうなイメージがある人も多いかもしれませんが、専用庭に関しては、民法で定められている「善管注意義務」を賃貸物件に当てはめると、「入居者は一般常識に則り、注意しながら借りている物件を保存しなければならない」ということになり、入居者が管理します。
また、「水漏れが発生したエアコンの修理・交換代」は貸主の負担ですが、「エアコンの水漏れによる床の傷み」は入居者の責任に。「雨の吹き込みによる床の色落ち」「結露によるカビ・シミ」も同様で、いずれも拭き取るなどの手入れを怠り放置したことで傷んでしまったものに関しては、入居者の責任になるという考え方のようです。ただし、物件の構造上の問題で発生する傷みもあるため、まず被害を見つけた際は、早急に貸主に報告しておいた方がよさそうです。
LIFULL HOME’S PRESS編集部の渋谷雄大氏は、「トラブルの多くは、退去時の費用に納得できないことで起こることから、つい退去時の問題と思いがちですが、実は入居時からはじまっている問題でもあります」と述べています。入居時の状態を写真に残し、原状回復についても双方が納得したうえで入居することで、防げるトラブルは多くあるそう。退去時に揉めることがないよう、入居の際にできる確認はしっかりしておくことが大切ですね。
国土交通省では、賃貸物件の退去時における原状回復をめぐるトラブルを未然に防ぐことを目的に、原状回復の費用負担のあり方などをまとめた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公開しています。これから引越しの予定がある人は、今回の調査結果とあわせて、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
引用元:【LIFULL HOME’S PRESS】
●国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)は→こちら