スマホ充電やパソコンの配線機器による火災事故が5年前の約2倍に! – 注意すべきことは?

空気が乾燥する秋から春にかけては「火災」の多い季節です。コンロやたばこ、ストーブなどが住宅火災の原因としてよく聞かれますが、それらについで多い原因が、“コードや配線”です。東京消防庁によると、令和4年に起きた住宅火災の出火原因で「コード」によるものは全体の4番目に多かったそう。家電やスマホ、パソコンなどで欠かせないコードや配線ですが、どのような状態で火災が起きているのでしょうか。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)では、実際に通知のあった製品事故情報をもとに、具体的に危険な使用例について注意喚起を行っています。詳しく見ていきましょう。

配線機器による火災の原因で、最も多いのは「トラッキング現象による異常発熱・発火」

配線基部による火災事故の年別発生件数は、2019年の15件に対し2023年は28件と、約2倍になっています(「独立行政法人製品評価技術基盤機構」調べ)

NITEによると、配線器具の火災事故は2019年から2023年までの5年間で126件起きており、2023年の件数は28件で、2019年の15件から約2倍に増えていると言います。2022年から徐々に増加し、高止まりの傾向が見られることから、テレワークが普及したことによって、家庭での配線器具の使用が増えたことも関係しているのではないかと考えられます。

配線機器による火災での原因で最も多かったのは、「トラッキング現象が発生して異常発熱、発火」でした(「独立行政法人製品評価技術基盤機構」調べ)

NITEに通知のあった126件の製品事故情報のうち、使い方や設置状況が要因で起きたと思われる火災は50件にものぼっています。その内容を見てみると、最も多かった事故事象は「トラッキング現象による異常発熱、発火」の18件、ついで「電源プラグ栓刃と刃受け金具との接触不良による異常発熱」の14件、「電源プラグ栓刃可動部の接触不良による異常発熱」の7件、「最大消費電力を超える電気製品を接続して異常発熱」の5件、「電気コードやコードプロテクター部が断線してショート」の3件、「その他」が3件という結果でした。

“ずっとつなぎっぱなしになっている家電のプラグや、ほこりをかぶりやすい場所に放置されたテーブルタップなどが発火の原因になる”という話は聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。いくつか具体例を見ながら事故原因の詳細を確認していきましょう。

外からプラグやコードに力が加わることで接触不良が発生し、異常発熱に

トラッキング現象は、コンセントや電源プラグの周囲や内部にほこりや水が付着するのが原因。それを避けるため、差込口にシャッターが付いた製品もあるようです(画像は「独立行政法人製品評価技術基盤機構」プレスリリースより引用)

2022年2月に発生したトラッキング現象による事故は、テーブルタップに電気製品を接続したまま長期間(製造後約23年)放置したことで接続部分にほこりが蓄積し、周辺を焼損したというもの。

トラッキング現象とは、コンセントや電源プラグの周囲、隙間や内部にほこりや水分が付着することで起こります。付着したまま使用することで火花放電が繰り返され、絶縁の役割を果たすはずの樹脂が炭化して、電気の通り道“トラック”が形成され、異常発熱し、発火してしまいます。

そうならないように、まずは、コンセント周りにほこりや水分が付着しないよう、こまめに掃除をして清潔に保つとともに、プラグの差込口にシャッターが付いた製品を使ってみるのもアリかもしれません。

外から力が加わり、電源プラグ栓刃可動部が破損、変形することでも接触不良が生じて火災の原因に(画像は「独立行政法人製品評価技術基盤機構」プレスリリースより引用)

2023年には、使用者がテーブルタップに足を引っ掛けて力が加わり、電源プラグ栓刃可動部のカシメ部が緩んで接触不良が生じたことで異常発熱し、テーブルタップおよび周辺を焼損する火災が発生しました。

不具合のあるプラグを使用することで、異常発熱して発火することも(画像は「独立行政法人製品評価技術基盤機構」プレスリリースより引用)

このような発火が原因の火災を防ぐには、延長コードやテーブルタップに無理な力を加えないように、机や椅子の脚などで踏んだり、足を引っ掛けたりしないよう、設置状況にも注意しましょう。また、電源プラグを抜き差しする場合は、コードではなくプラグ本体を持つように心掛けましょう。

また、日常的にコードからの抜き差しを行うことが多いスマホの充電ケーブルでは、コードの劣化による死亡事故も起きています。損傷した充電ケーブルにつないでスマートフォンを使用していた女性が、使用中の漏電で亡くなってしまったケースも報告されています。水濡れや絶縁部分の劣化、破損などに気づかず使用してしまうと、漏電して、最悪は死亡事故につながる可能性があるため、そのことを念頭に、異常を感じたら使用をやめて新しいものに交換するようにしましょう。

発熱や火災ではありませんが、充電ケーブルをつなぎっぱなしにしたせいで火傷を負うケースもあったようです。NITEに寄せられた情報によると、スマホの充電ケーブルを電源に接続したままの状態で就寝したユーザーが、端子部とほとんど同じ大きさの火傷を追った事例があるそう。この事例では、端子部分の温度が上昇したわけではなく、就寝時にユーザーがかいた「汗」がコネクタに付着し、電気分解によって酸などの物質が生成されたことにより「科学やけど」を負ったのではないかと考えられています。

いずれにしても、充電ケーブルや電化製品を長時間接続する際には、発熱やケーブルの状態に注意をしておいたほうがよさそうです。

コードリールは引き出した状態と、巻いた状態で使用可能な電力が異なる

コードリールがほとんど巻き取られた状態で定格電流値を超える電化製品を使用したため、コードが異常発熱し発火した事例が報告されています(画像は「独立行政法人製品評価技術基盤機構」プレスリリースより引用)

2018年に発生したのは、コードリールが原因の火災で、建物を半焼しています。原因となったコードリールはほとんど巻き取られた状態で、巻取り時の定格電流値を超える、布団乾燥機2台と電気除湿器2台を接続して使用したため異常発熱し、焼損したと考えられています。

コードリールには、電源コードをすべて引き出した状態と、巻き取られた状態で接続可能な最大消費電力が異なるものがあります(画像は「独立行政法人製品評価技術基盤機構」プレスリリースより引用)

コードリールは、電源コードをすべて引き出した状態と、巻き取られた状態で接続可能な最大消費電力が異なるものがあるため、使用する際はとくに注意が必要です。使用の際は、取扱説明書や本体の表示をよく確認しておきましょう。また、以上を検知すると電流を遮断してくれるタイプも販売されているようなので、チェックしてみてもいかもしれません。

接続可能な最大消費電力量を超えないように事前の確認を

テーブルタップ本体やパッケージに、接続可能な最大消費電力が記載されています(画像は「独立行政法人製品評価技術基盤機構」プレスリリースより引用)

火災の事例としてあげられたのはコードリールでしたが、テーブルタップにも接続可能な定格電流(何アンペアまで接続できるか)が定められています。それを超えてしまうと、コンセント部の刃受け金具と電源プラグの栓刃の接触が緩い箇所で異常発熱したり、電源コードの絶縁被覆が破損してショートしたりして発火や火災につながってしまいます。

使用している電化製品の消費電力を把握し、合計値がテーブルタップやコードリールに記載されている最大消費電力を超えないように注意して使用するようにしましょう。

電化製品の消費電力は本体のどこかに記載されているので、それぞれを確認し、合計値が接続可能な最大消費電力を超えないように注意しましょう(画像は「独立行政法人製品評価技術基盤機構」プレスリリースより引用)

コンセントにも定格があるため、複数の機器を使用する際は注意が必要

コンセントにも定格があり、家庭で一般的な二口のコンセントは合計で1500Wまでが接続可能な最大消費電力となっているそうです(画像は「独立行政法人製品評価技術基盤機構」プレスリリースより引用)

テーブルタップやコードリールだけでなく、コンセントにも最大消費電力の定格があります。一般住宅の壁に設置してあるコンセントは二口のものが一般的。二口の場合は合計で1500Wまでが接続可能な最大消費電力です。配線に一定以上の電気が流れると、ブレーカーが落ちるようになってはいますが、作動するまでに時間がかかる場合もあり、それまでに発火してしまえば火災につながることもあります。タコ足配線や、電力量の大きな電化製品を同時に使用する際は定格を超えないように気を付けましょう。

今回あげられた実際の事例も参考にしながら、危険な使用方法を避け、電化製品を安全に使える環境を整えていきたいですね。

出典元:【独立行政法人製品評価技術基盤機構/PR TIMES
引用元:【東京消防庁公式サイト

若林勇希
編集・ライター。編集プロダクションやライティングスクールの講師として5年以上WEBライター業に携わっており、現在は独立してフリーライターとして活動中。これまで様々なジャンルを手掛けてきたが、最近はガジェットやスマホ関連の記事を執筆することが多い。「老後2000万円問題」のために、iDeCoやつみたてNISA、貯蓄型保険なども実践している。

Twitter:@webwriter888

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