台風19号による水害で武蔵小杉の一部タワマンが停電。駅周辺も水没して土砂が堆積したことで、タワマンの脆弱性が大きく報道された。しかし、本当にタワマンだけが水害に弱いのか? 今回は実際にタワマン高層階に住み、台風19号を体験した筆者が、台風19号報道を検証する。
被災者なのにタワマン住民だけが揶揄される事態に……
(Image:Shutterstock.com)
2019年10月12日の台風19号は、日本各地に大きな被害をもたらした。まず、亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、未だ避難生活をおくられている被災者の皆さまには、心よりお悔やみを申し上げたい。
さて、今回の台風19号では武蔵小杉の一部タワマンが停電。駅周辺も水没して土砂が堆積したことで、「タワマンは危険!」「タワマンは水害に弱い!」などとテレビや新聞で、連日大きく報道された。ネットでも武蔵小杉のタワマン住民を揶揄するデマが拡散され、笑いものにされる事態になったのは皆さんご存じだろう。
実は筆者が住むタワマンの近くにも大型河川があり、決壊すれば武蔵小杉と同じような被害を受けたはずで、夜明けまで不安な気持ちで過ごしたので、武蔵小杉の状況を他人事とは思えなかった。武蔵小杉のタワマン住民も台風19号の被災者なのに、「それ見たことか、タワマンなんかに住むからそんなことになる」と言わんばかりの報道には、うんざりしたというのが本音である。
タワマンに限らず大規模マンションでは、給水装置や自家発電機などは地下に置かれていることが多い。ここが水没すると、インフラがすべてストップすることになる
タワマンなら台風で命を失う危険はほとんどない
まず、タワマンは60m以上の高さがあるということ以外は、低層の大規模マンションと大差ないということを申し上げたい。大規模マンションの場合は地下に電源や給水装置などのインフラが置かれていることが多く、浸水すれば電気、ガス、水道などがすべてストップすることになる。だが、そもそもこれはタワマンだけの問題ではないのだ。
確かにタワマンは停電すればエレベーターが止まって一時的に不便になるが、電源が回復すればすぐに元の生活に戻れる。筆者も7年間で1日だけ停電でエレベーターがストップし、上層階まで往復したことがあるが、タワマン特有の被害といえばそれだけのことだ。命に関わる危険はほとんどないし、被災したあとも自分の部屋に住み続けることができる。それに比べて一軒家の被害はどうだったのか? 災害時、本当に命を守ってくれる住宅はどちらなのか? 両者の被害を比較してみれば答えは自ずと出るだろう。
※サムネイル画像(Image:picture cells / Shutterstock.com)