懐かしい国鉄時代の特急列車といえば、381系の長方形の顔を思い出す人は多いだろう。その381系も現在運用されているのは岡山-出雲市間の特急「やくも」のみとなった。しかも、2022年から順次新型車両へ置き換えられるそうだ。「乗るなら今しかない!」ということで、今回は実際に筆者が特急「やくも」に乗ってみたぞ!
あと3年! 国鉄時代最後の特急列車381系に乗る
381系は、JRがまだ国鉄だった1973年から導入され、中央本線特急「しなの」、紀勢本線特急「くろしお」、伯備線特急「やくも」に採用された。381系には、カーブでも安定した高速走行ができるように“振り子”機構が採用されており、とくにカーブが多い路線で運用されてきたのだ。だが、381系は次々と新型車両に置き換えられ、現在では特急「やくも」しか残っていない。その特急「やくも」も1982年から38年以上も使われてきており、2022~2023年かけて新型車両へ置き換えられることになった。つまり、「381系に乗れる機会はあと3年しかない!」ということで、筆者は年末年始を利用して岡山駅に向かい、実際に特急「やくも」に乗ってみた。
特急「やくも」は、基本的に1時間1本というわかりやすいダイヤになっている。岡山-出雲市間は山陽本線-伯備線-山陰本線を通り、終点出雲市駅までは約3時間の旅となる。381系といえば長方形で縦長の顔が特徴的だが、列車によってはパノラマ型グリーン車を連結している場合もあり、それも見どころのひとつとなっている。
■やくものパノラマ型グリーン車
岡山発 7号/9号/23号/25号
出雲発 6号/8号/22号/24号
※1号車がパノラマ型グリーン車になる。ただし、7号/23号/6号/22号はパノラマ型でない場合もある
車内では謎の1座席やレトロな小テーブルを楽しむ!
古い造りの381系に乗ったら車両の謎空間を楽しもう。まずは、車両の中ほどに突然現れる謎空間から。通常は左右に2席ずつ座席が整然と並んでいるが、途中で1席だけになっている部分がある。これは、フレームにダクトの出っ張りがあるため、あえて1席外されているために生まれたもの。実はこのダクトは、構造上、空調が車両上部に設置できなかったため下部に空調設備を設置。そのエアーを上に送り込むために設置されたダクトなのである。もちろん座席にも国鉄時代の古さを感じる。テーブルは前座席から下ろすタイプもあるが、ひじ掛けにぶら下がっている小さいテーブルもあり、これが何ともいえないレトロ感を醸し出しているのだ。
なお、今回のパノラマ型車両編成では5両目と6両目の連結部分で、車内から行き来ができなくなっている。ギリギリで慌てて駆け込むと、次の駅まで自分の指定席に座れない場合もあるので注意したい。
特急「やくも」で大きく傾く“振り子”機構を堪能しよう!
特急「やくも」が岡山駅を出ると、やがて山陽線から山岳地帯の伯備線に入る。ここのカーブでは車体が左右に大きく傾く“振り子”機構を体感することができる。最大5度も傾斜するので、381系に乗っていることを実感できるはずだ。もちろん、山岳地帯を走行する車窓も存分に楽しめる。とくに高梁川との併走区間は、山々の隙間を通っているので迫力満点。例年、年末年始は雪で一面真っ白になるそうだが、今回は暖冬のせいで雪はほとんど見られなかった。
日本海側の米子駅が近づくと右手側に伯耆富士と呼ばれる「大山」が見えてくる。天気が良ければかなりの絶景だが、この日は雲に隠れてあまり見えなかった。また、山陰線に入り松江駅を過ぎると今度は美しい宍道湖沿いを走る。夕方の列車に乗ると幻想的な夕日を堪能できるが、これらは、いずれも岡山から右手側の席になることを覚えておこう。こうしてアッという間に約3時間の旅は終了。終点出雲市駅からは、レトロな一畑電車に乗り替え、縁結びで有名な出雲大社に初詣することもできる。
2022年から順次車両の入れ替えが行われる特急「やくも」。車内や車窓など、鉄道マニアでなくても楽しめる要素は多いので、今のうちに国鉄時代最後の特急列車381系で旅をしてみてはいかがだろうか?