東京23区と千葉北西部で深刻化する待機児童問題
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子育て世代にとって、もっとも喫緊の問題となってくるのが待機児童の多さ。とくに共働き世代の多い首都圏では切実だ。まずは1都3県の状況を見ていこう。
厚生労働省が公表した「保育所等関連状況取りまとめ」(平成28年)では、待機児童数は東京都が圧倒的に8466人と圧倒的に多く、全国でワースト1位になっている。もっとも深刻なのは世田谷区で1198人。次いで江戸川区が397人、板橋区が376人と続く。ここに渋谷区(315人)を足してワースト10に4つの区がランクイン。東京都では都有地を活用して保育所の建設を急いでいるが、豊洲問題やオリンピックに隠れる格好となり、対策は遅れをとっている。都は、民有地や空き家の利用も視野に入れていると説明してはいるが、具体策はまだ掲示されておらず、解消のメドはまだ立っていない。しばらくはこの状態が続きそうだ。
首都圏で東京都の次に多いのは、全国ワースト3位の千葉県で、全体では1460人。千葉県の場合は、そのほとんどが、いわゆる千葉都民の居住地域である北西部に偏っており、1065人にものぼる。その数値は県内における待機児童のおよそ70%以上。さらに市川市は514人で、実に3分の1以上を占めている。早急な打開策が求められているものの、地元住民が保育園の設置に激しく反対しており、なかなか事が進まない。先延ばしにせざるを得ない状況なのだ。
埼玉県も1026人で、都道府県別ではワースト6位だが、市区町村別で見ると100人を超えているのは戸田市(106人)のみ。東京都や千葉県のように際立って深刻な街は少なく、各自治体の努力次第では早めの解決も可能かもしれない。神奈川県は913万人という人口に比べて、県全体でも497人と首都圏では極端に少ない。しかし、だからといって楽観視してはいけない。
埼玉や神奈川の思惑!?隠れ待機児童のカラクリ
埼玉県さいたま市や神奈川県川崎市は、大都市にもかかわらず待機児童ゼロだと発表している。それほど保育園や行政による支援が充実しているのだろうか? 実態はカウントされていない「隠れ待機児童」がいるとされている。
隠れ待機児童とは、希望した認可保育所などに入れないにもかかわらず、国や自治体での待機児童のカウントに入っていない児童を指す。各自治体のカウント方法によって数値が変動してしまうため、実態とはほど遠い報告がされているのではないかという指摘も多かった。たとえば、従来だと親がしかたなく育休を取っている場合は待機児童にカウントされない。隠れ待機児童の数は、発表されている数値の3倍にものぼるのではないかとも推計されている。
そこで、厚生労働省は新たに次のようなケースも待機児童とカウントするよう定義づけた。
①保育所を希望しているが、預けられずに親が育休をとって対処している児童
②兄弟と同じ園に入りたいなどの理由から、特定の保育所を希望している児童
③親が子どもを預けられずに求職活動を停止している児童
④自治体が補助する保育サービスを受けている児童
この①-④のケースは6万件以上にものぼるともいわれている。こうした隠れ待機児童が多いのが神奈川県だ。
これまで横浜市は2人、川崎市は0人としていたが、新たな定義で待機児童をカウントすると、それぞれ3257人、2891人と増加すると見られている。来年からは都道府県・市区町村別のランキングが大きく変動するかもしれない。これほど大きな差が生じているのだから、自治体による実態隠しだといわれるのも当然だ。乳幼児を抱える子育て世代は、隠れ待機児童の数にも注視しておくべきだろう。
引用元:首都圏格差 首都圏生活研究会 (著)(三交社刊)