日本では長年の間、都会に憧れて東京圏の大学へ進学したり、Iターン就職をする人が多かった。しかし昨今は、「丁寧な暮らし」という言葉が流行にしたように、生活の“質”という面が見直される傾向にある。騒がしい都会を離れて、地方でライフワークバランスを保って過ごしたいと考える人が増加しているのだ。
“脱都会“の思考は、新型コロナウイルスの流行により、都心での感染リスクを恐れた生活を送るうちに、健やかに過ごしたいというニーズが高まり今後より増えていくかもしれない。
今回は、そんな地方移住希望者の抱く思いや移住へのハードル、移住許容拡大の可能性について迫っていく。
老後まで待てない!働きながら移住がしたい人が増加中
内閣官房・まち・ひと・しごと創生本部事務局が行った東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)在住者への地方暮らしへの意識を調査したアンケートの結果によると、およそ49.8%もの人が「地方暮らし」に興味を持っていることがわかった。首都圏に住む2人に1人が、今住んでいる都心を離れて地方に行きたいと感じているのだ。
また、驚くことにこの関心は、年齢が若くなるほど高くなっていることが判明。「退職後や老後を郊外でゆったりと過ごしたい」という意向ではなく、バリバリと働いている層が地方に出て行きたいと感じている。つまり、ドロップアウトではなく何らかの仕事で生計を立てながら地方に住みたいと考えているのだ。その証拠に「地方暮らしに向けて発信して欲しい情報は何か」という質問に対して、およそ半数以上の人が「仕事、就職に関する情報」と回答をしている。
“地方に出て行きたい”と多くの人が考えている一方で、「地方暮らし」に対しておよそ半数の人が「収入が下がる」ことへの懸念を抱いていることもわかった。「移住はしたいが、今の生活水準は落としたくない」とジレンマに陥っている人が多いのかもしれない。
会社としては、「働き盛りの若手社員を『地方移住』という理由で失いたくはない」。地方移住を検討している若者としても、「地方移住をすることで『収入は下げたくない』」という課題を、それぞれが抱いている。
この双方の要望を叶えるのが「地方でのテレワーク」ではないだろうか。会社としては、人材を失うことなくオフィスの光熱費や通勤手当、住宅補助費などの経費を削減することが可能。地方移住希望者としては、現在の仕事を続けた上で、のびのびとした地方暮らしを手に入れられる。双方の課題を一度に解決ができる方法ではないだろうか。
政府主導で行われる働き方改革の推進により、今後ライフワークバランスや働き方の多様性を求める世論はますます強くなっていくだろう。さらには、情報社会の発展により地方と都心での暮らしの“便利さ”の格差はこれから先、今まで以上に無くなっていくはずだ。これらの社会の動きが続く限り、この「都内」から「地方」へという人々の意向を抑えることは、さらに難しくなると考えられる。同時にテレワークという働き方も爆発的に市民権を得てきた。容認することで社員の確保につながるのならば「地方でテレワークOK」と認める企業が増えるかもしれない。サラリーマンをしている読者にとっては、自身の今後の働き方を左右するかもしれない話だけに、今後の動きを注意深く見守っていきたいところだ。
参照元:移住等の増加に向けた広報戦略の立案・実施のための調査事業 報告書(PDF)【内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局】