東京から電車で静岡に行くときSuicaだと面倒なことになるって知ってた?

大人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の聖地となっている静岡県の「沼津駅」で、ちょっとした問題が起こっている。それは「沼津駅」の自動精算機や有人窓口の前に、なぜか長蛇の列ができる怪現象だ。もちろん、自動改札機があるのに、なぜ沼津駅に限ってこのような現象が起きるのだろうか? そこで今回は、あまり知られていない「Suica」の謎について解説しよう。

静岡県「沼津駅」で起きる怪現象とは?

ここ数年、アニメやゲームなどに登場する地域をファンが訪れる聖地巡礼がブームとなっている。地方の町興しにも一役買っており、自治体が積極的に動いている場合もある。そんななか、大人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の聖地となっている静岡県「沼津駅」では、自動精算機や有人窓口の前に長い列ができて困ったことになっているという。これはいったいどういうことなのか? 

実は、問題の原因はJR東日本が発行している「Suica(スイカ)」にある。Suicaといえば、関東圏での通勤や通学などで利用できるほか、コンビニやレストランの支払いにも利用できる便利な交通系ICカード。でも、仮に東京駅でSuicaをタッチして乗車したら、いったいどこまで行けるのかご存じだろうか? もちろん、Suicaは2万円までしかチャージできないので、それ以上運賃がかかる場所までは行けないが、実はこれ以外にも利用制限があるのだ。

「Suica」で乗車できる範囲はJR東日本管轄内のみ!

現在、交通系ICカードは日本全国でさまざまな種類が発行されているが、「全国相互利用サービス」が実施されているので、たとえば、Suicaを北海道や大阪、九州などの電車で利用することが可能となっているのはご存じだろう。だが、JR東日本の自動改札をSuicaでタッチして乗車した場合は、同じJR東日本管轄内の自動改札でしか出ることができないことは、あまり知られていない。もし、Suicaで乗車してJR東日本管轄外の駅で下車しようとすると、チャージ金額が足りていても自動改札で引っかかってしまうのである。

つまり、沼津駅で起きた怪現象は、〝JR東日本管轄の関東の駅からSuicaでタッチして乗車した「ラブライバー(ブラライブファンの俗称)」が、JR東海管轄の「沼津駅」で降りようとして起きた”ことなのである。もちろん、管轄をまたぐ路線では「〇〇駅から先はSuicaを利用できません」と車内アナウンスされるが、一旦、Suicaで乗ってしまった人はどうすることもできず、そのまま沼津駅まで行ってしまうのである。

こちらはJR東日本が公開している管轄範囲。常磐線の「浪江」、東北本線の「黒磯」、東海道線の「熱海」、中央本線の「松本」、上越線の「水上」などが、電車好きの間では境界の駅として有名である

結局、境界をまたぐときはどうすればいいの?

交通系ICカードは日本全国で相互利用サービスができるため、まさか管轄を跨いで使用することができないとは思わない人が多いだろう。JR東日本の管轄範囲は→こちらで確認できるが、JR東日本管轄の東京から沼津に行くと、熱海駅でJR東海管轄に変わってしまうのだ。したがって、沼津駅では自動精算機で精算するか駅員がいる窓口で精算してもらうしかないのである。ただし、沼津駅の自動精算機で精算できる入場駅は、山の手線内と一部の東海道線の駅に限定されているため、それ以外の関東の駅で乗った人は窓口で精算するしかない。なお、「ラブライブ! サンシャイン!!」放送当時は自動精算機が未対応だったため、毎週末に窓口で精算するラブライバーの行列ができてしまったとか……。

それでは、実際に関東から沼津駅まで行くときはどうすればいいのだろうか? 方法は以下の4つだ。

■東京から沼津駅に行く方法

【1】沼津駅までのきっぷを買う

まずは正攻法。面倒でも沼津駅まできっぷを買って乗車する。2,000円を超えるような高額きっぷは券売機で買えないこともあるので、その場合はみどりの窓口できっぷを買えばいい。ちなみに、東京駅-沼津駅間の運賃は2,310円である

【2】指定席券売機できっぷを買う

新幹線や特急などのきっぷが買える「指定席券売機」なら高額乗車券も確実に買える。まず「乗換案内から購入」をタップして、目的の駅名「沼津」を入力すれば経路の候補を挙げてくれる。そこから利用する経路を選択すればOKだ

「指定席券売機」では、まず到着駅に駅名を入れて日時の指定、新幹線利用の有無を選択し、最後に検索ボタンをタップする

すると、経路の候補を挙げてくれるので、選択すればきっぷを購入できる

【3】熱海で降りて沼津までのきっぷを買う

これは1本列車を遅らせてしまうので面倒な方法だが、とっさに行えるワザだ。JR東日本の管轄境界となる「熱海駅」でいったん下車して、熱海-沼津間のきっぷを購入しよう。東海道線は本数も多いので、20分程度待てば次の列車が来るはずだ。ちなみに、熱海-沼津間の運賃は420円である

【4】小田急線で新松田駅まで行き、御殿場線の松田駅から沼津に向かう

どうしてもきっぷを買いたくない人は、最初に小田急線で新松田駅まで行き、近くのJR御殿場線の松田駅まで移動してSuicaで乗車しよう。松田駅はJR東海管轄なのでSuicaで入場すれば沼津駅でもSuicaで自動改札を出ることができるのだ

将来は管轄を跨いだ乗車も可能になる?

いかがだろうか? Suicaによる管轄を跨ぐ乗車は膨大な乗車パターンを検証・確認する必要があるため現状は難しいのだ。だが、すでに関東では、SuicaとPASMOの相互乗り入れが可能となっている。これも技術的には管轄を跨ぐ乗車の処理と同じなので決して不可能ではない。ちなみに、JR東日本、JR東海、JR西日本では共同で「在来線および新幹線におけるIC定期券のサービス向上について」→PDFという発表を行っており、その中で、2021年の春から、定期券については管轄を跨いで利用できるようになるそうなので、もしかすると、将来は関東から沼津駅までSuicaで乗車することが可能になるかもしれない。

●JR東日本「Suica」(公式)は→こちら
●JR東日本・JR東海・JR西日本「在来線および新幹線におけるIC定期券のサービス向上について」(PDF)は→こちら

※サムネイル画像(Image:BT Image / Shutterstock.com)

文=西谷大和/編集・ライター

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