日本で「置き配」というサービスが広まったのは2019年頃からのこと。増え続ける物流件数に対して慢性化するドライバー不足、再配達問題など宅配業界が抱える問題に、2020年からの新型コロナウイルス流行による物流量の急増が拍車をかけ、置き配の普及が大きく進んだ。だが、実際に荷物の盗難や紛失などの問題に不安を覚える人も多いのが現状だ。
そこで現在の置き配の利用状況や満足度などのアンケート結果から、今後の置き配がどう変化するか、防犯対策を含め考えていく。
置き配経験者は30.8%、高い満足度だが、デメリットも
MMD研究所が2021年1月に全国の18歳〜69歳の男女4,373人を対象に「ECサイトの配送に関する調査」を行った。その結果によると、置き配の認知度は85.6%、利用経験者は30.8%、置き配利用者の指定場所は7割以上が「玄関前」と答えたことが分かった。さらに置き配に感じるメリットは「再配達を防げる」「時間に縛られずにすむ」、デメリットは「盗難・破損・汚れの心配がある」「不在にしていることを知られる」などが上がっている。そして利用者の71.8%が満足、85.4%がさらなる普及を望む意向を示していることも分かった。
利用者は増えているものの、やはり気になるのは盗難や紛失、プライバシーといった問題のようだ。たとえば、すでに不在時には玄関先への置き配が基本となっているアメリカでは、“ポーチ・パイレーツ(Porch Pirates玄関盗賊)”という言葉が生まれるほど、盗難被害が急増し問題となっている。日本でも徐々に盗難被害、紛失や別人宅への誤配達などの問題が増えてきているようだ。
では消費者、宅配業者ともにメリットがあり、今後も広く利用されることになるだろうこの置き配サービスを、どうすればより安全に安心して利用することができるだろうか?
まずこれらの問題に対して、Amazonや楽天などECサイト事業者側は、現在どのような取り組みを行っているのか。たとえば、Amazonでは指定場所への配送完了の写真を送付や、紛失した場合の商品の再送、返金などの対応策を講じている。楽天は置き配可能商品を制限、1万円以上の高額商品や医薬品はサービス対象外としたうえで、商品到着まで細かに到着時間を通知するなどの対応を行っている。
だがこれだけでは今後さらに日本でも置き配が普及した場合、アメリカのようにさらに盗難被害が拡大する恐れは大いにあり、安心して利用できるとは言えない。個人としての対策も必要となってくるだろう。設置型の宅配ボックスは高額でハードルが高いが、折り畳み式の簡易宅配ボックスや、マンションでも利用しやすい簡易宅配バッグなどを利用する人も増えてきている。米国Amazonでは配達員が専用のスマートキーで玄関ドアを解錠し室内に荷物を届けられ、利用者は室内のクラウドカメラからその動きを見ることができる、という「Key by Amazon」なるものも普及している。IoT技術も広がりを見せている今、日本でも今後はECサイト事業者とスマート住宅やセキュリティ会社との連携もあり得るかもしれない。
置き配が広く普及することは、ECサイト事業者にとっても、宅配業者にとっても、消費者にとっても望ましいこと。普及を進めるためにも今後は、各事業者がよりセキュリティを考慮した新たな置き配サービスを展開することが急務といえるだろう。
参照元:ECサイトでの置き配の認知は85.6%、利用経験者は30.8% 置き配の指定場所は「玄関前」が7割以上で最多【MMD研究所】