立川【首都圏格差シリーズ】憧れの街の意外な現実

立川は東京・多摩地区における「覇権」都市。八王子と長らくライバル関係にあったが、ここ数年の開発によって八王子との泥沼(?)勝負は完全に決した感がある。他県の人にとっては印象が薄いだろうが、じつは「西の新宿」と呼ばれるほど駅前の充実度が高い。平成6(1994)年には高島屋、平成13(2001)年に伊勢丹が立川駅北口に移転。高級百貨店のそばには、映画館や商業ビルなどが立ち並び、駅ビルにはルミネ、エキュート、グランデュオもある。大手百貨店の撤退は、地方都市でありがちなケースだが、立川にはまったく関係ない。立川がその辺の地方都市と一線を画す証拠だといえるだろう。さらに、家具量販店IKEA、ららぽーと立川立飛と大型ショッピング施設も開店。駅周辺に商業施設が軒を連ね、いまや立川は多摩だけではなく、都心にも負けないスペックを保持しているのだ。

余った土地こそが立川の強み

立川【首都圏格差シリーズ】憧れの街の意外な現実

(Image:picture cells / Shutterstock.com)

 立川がこれほど企業誘致に成功しているのは、いまだ駅周辺に残されている広大な土地にある。この土地には、かつて米軍基地が置かれていたが、昭和30(1955)年から起きた砂川闘争によって米軍から返還を勝ち取った土地でもある。基地跡地には市民の憩いの場・昭和記念公園や国の防災施設などが建てられたが、まだ未利用の土地が留保地として44ヘクタールも残っている。立川はこの留保地を使って、企業誘致を図っているのだ。企業側が土地を取得しやすいように立川側から所有者である国に強く要望している。米軍に逆らったり、国に口を出したりと、立川住民はけっこう行動的。団結力が強い反面、移住者に対しては口うるさい面も。いずれにしても住みやすい街にしようとする力強さには舌を巻くことだろう。

残念なのは主要道路の狭さ

 立川駅前までのアクセス事情には課題が多い。特に砂川エリアからはバスが基本のアクセスとなる。西武バスと市バスがあり、市内の各所へと運ぶ市民の足として路線も本数も多い。しかし、駅北口に発着するバスのほとんどが「立川通り」に集中する。立川通りはほとんどの路線が合流する高松町付近から急激に道が狭くなる。コンビニに納品するトラックなどが2、3台停車していると、時間通りに駅に到着することはほぼ不可能。休日にルミネのセールなどが開催されると、通常20分のところが2時間になることも。時間に厳しいサラリーマンにとっては大きな難点である。

文=

引用元:首都圏格差 首都圏生活研究会 (著)(三交社刊)

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