メディアといえばテレビか新聞。一昔前なら「うんうん」と頷く人も多かった概念が、ずいぶん変化している。博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所が2006年から毎年行っている「メディア定点調査」によると、メディアの構成比率ではテレビが顕著に下がり、スマホやタブレットの接触時間がぐんと伸びている。一方、「メディア総接触時間の時系列推移」で見ると、メディアに触れる時間自体が増加していることが見て取れる。人々はどうやら、生活の中でなんらかの時間を削ってメディアと接触しているようだ。
睡眠時間より長いメディア接触時間。とくにスマホの増加が著しい
調査によれば、メディア総接触時間は1日当たり/週平均で450.9分と過去最高を記録した。つまり1日7.5時間もの間、テレビやスマホなどを見ているということだ。日本人の平均睡眠時間が6.5時間ほどなので、「睡眠時間よりも多い」という人も少なくないはずだ。これはおそらく、おうち時間の増加によって外出機会が減り、家にいる間はなんらかのメディアを見て過ごす…という生活スタイルが定番になった人が多いのだろう。
総接触時間が増えているにもかかわらず、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌はおおむね減少し、逆にパソコン・タブレット・スマホといったデジタルデバイスは増加。構成比をみてもテレビが減少するのに対してスマホが増加しているため、旧来のメディアで行っていた情報の取得が、スマホなどに置き換わっていることが見て取れる。
一方、定額制動画配信サービスの利用率は46.6%と伸長。半数近くがNetflix、Amazonプライム・ビデオなどのサービスを利用しているという結果となった。テレビ受像機のインターネット接続率も45.8%で、テレビが単に「地上放送を視聴するもの」ではなくなりつつある。
テレビでできることが増えたことによって、「テレビを見る」という概念自体も変化しているようだ。「テレビの利用時間」に何を入れたのかを調べた調査項目では、「テレビ番組をリアルタイムで見る」といった従来の行為以外に、Netflix、Hulu、Amazonプライム・ビデオ、dTV、DAZNなどの「有料動画を見る」、YouTube、ニコニコ動画、Dailymotion、FC2動画、GYAOなどの「無料動画を見る」という利用を含めている人が、それぞれ20%を超えており、「動画視聴=テレビを見る」と捉えている人が増えつつある。
また、メディアに対する意識は「好きな情報やコンテンツは、好きな時に見たい」と考える人が63.7%と過半数を超えている。これはメディアの視聴環境が向上したことにより、場所や時間を選ばずメディア視聴ができるようになったことや、コンテンツが充実してきたことによる意識変化だろう。メディア総接触時間が増加したことも、おうち時間での視聴とともに、移動時間やすきま時間での視聴がチリツモ方式で増加しているのではなかろうか。
さらに、2010年には9.8%だったスマホの所有率は、2021年は94.7%まで上昇した。年代別で見ると男性50代、男女60代はスマホが行き渡っているとはいいがたい。「テレビはオワコン」といわれて久しいが、上記年齢層にもスマホが行き渡ったとき、真の意味で“オワコン”となるかもしれない。
出典元:博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2021」時系列分析【メディア環境研究所】