アジアナンバーワンの大学である中国・清華大学にバーチャル(仮想)女子学生が入学したことが、ネットを中心に大きな話題を集めている。AIで生成されたというその外見は「スレンダーな今風の女子大生」といった雰囲気で、もはや“人間そっくり”ではなく「人間ではない」と言われても信じられないレベルだ。さらにAIによる学習能力も持っており、継続学修によって“成長”していくという。
今回は、どんどんとフィクションの世界に近づいていく現実世界についてお伝えしていきたい。
バーチャル女子学生がアジアトップの大学に入学!?
いま話題となっている中国初のバーチャル女子学生は、華智氷(か・ちひょう)と名付けられたプログラムだ。入学した清華大学は、イギリスのタイムズ・ハイアー・エデュケーションが2020年6月に発表した「アジア大学ランキング2020」で2年連続の1位を獲得し、同じく9月発表の世界ランキングでもアジア最上位となる20位に位置する中国のトップ校だ。そんな名門校の複数の学科から集まった技術チームが一丸となってこのプログラムを開発し、顔と声は人工知能モデル「悟道2・0」で生成されたものだという。
さらに一般的な受け答えのためのAIアバターと異なり、様々な分野のデータを大量に集積したコーパスを常にインプットすることで学習し、人間のように“成長”していく能力も持っているという。ここまで来ると、バーチャル女子学生が人間の学生と何が違うのかわからなくなってきそうだ。
AIが自分の意思を持って人とコミュニケーションを取ったり学んだりしていくのは、アニメやゲームの中では昔からある話だ。古くはあの青いネコ型ロボットもその中のひとつだろう。このチャレンジはフィクションの世界に限定されていたことを、現実にしたものと言えるのかもしれない。
「さすがテクノロジーの発展が目覚ましい中国」という印象を受けるかもしれないが、実は日本でも同様のバーチャルヒューマンが話題となったばかりだ。3月にKDDIのクリエイティブチーム「au VISION STUDIO」が、限りなく人間に近いビジュアルを持つバーチャルヒューマンとして「coh(コウ)」を発表。日本科学未来館で、専用のスマートグラスを装着するとcohが現れ館内をガイドしてくれるという。
将来的には“まるで人と会話するようにcohに話しかけ、機器を操作したりさまざまなサービスを受けたりすることができる”ようになることが目標だとしている。スムーズなコミュニケーションが取れるようになったとしたら、まさにアニメに登場する“バーチャルだけど生きている”キャラクターそのものになりそうだ。
今後テクノロジーがさらに進化していけば、“目には見えないけどグラスを通して見ればたしかにそこにいる”デジタルな存在が世界中に登場することになる可能性もあるだろう。
これからの世界は、ますますリアルとフィクションの境目がわからなくなっていくのかもしれない。いつバーチャル同僚が入社してきてもいいように、心の準備だけは怠らないようにしていきたい。
参照元:中国清華大に「バーチャル女子学生」が入学【AFPBB News】
※サムネイル画像(Image:Xinhua Japanese)