映画界の巨匠として世界中に知られるスティーブン・スピルバーグ氏が、Netflixと映画製作契約を結んだ。“アンチ動画配信サービス”として有名だっただけに、ハリウッド関係者は驚きを隠せないようだ。一体、スピルバーグ氏に何があったのだろうか。東洋経済オンラインの調査取材による記事をもとに考察を進めていこう。
新型コロナの影響であいまいになった“配信と劇場の境目”
スピルバーグ氏が会長を務める製作会社アンブリン・パートナーズは、今後Netflixに映画を提供していくと発表した。スピルバーグ氏は「配信作品がアカデミー賞をぶち壊す」と信じてやまなかったし、“アンチ動画配信サービス”の立場としてメディアで発言もしていたのは有名な話。それだけに、このニュースは業界関係者の度肝を抜いたとみられている。
ではなぜ、スピルバーグ氏はNetflixと契約するに至ったのだろうか。その理由の一つに、やはり新型コロナによる影響があったことは否定できない、と東洋経済オンラインは分析する。ロサンゼルスやニューヨークでは、2020年3月から2021年3月まで映画館は完全閉館されていた。この影響により2021年のアカデミー賞では、劇場公開されなかった作品も資格を得られるようにと、一時的措置ではあるがルール変更することになった。
つまり、新型コロナをきっかけに“配信と劇場の境目”は以前よりもっと曖昧になったのだ。「配信と劇場ははっきり差別化されるべき」との主張を繰り広げてきたスピルバーグ氏をはじめとするクリエイターも、事情が事情だけに、ルール変更を受け入れる以外の選択肢は無かったとみられる。
しかしスピルバーグ氏にとっても、動画配信サービスであるNetflixとの契約は、“苦渋の決断”というわけでもなかったようだ。
近年、メジャースタジオは稼げるメドのついた作品ばかりを作りたがるようになっている。なので、最初から知名度のあるスーパーヒーロー映画やその続編、ゲームやアトラクションを原作とする映画は良しとされる。しかし、大人向けのドラマや恋愛映画はヒットしてもたかが知れており、続編製作も難しいので旨味はないとされている。巨匠マーティン・スコセッシであっても、スタジオでは「アイリッシュマン」を作らせてもらえなかったため、Netflixで作ることになったぐらいだ。
つまり現状、自分が作りたい作品を作りたい、かつ多くの人に作品を届けたいと思った時に頼れるのは動画配信サービス、とりわけ、2億人という会員数を誇り、手厚いキャンペーンを行ってくれるNetflixなのだ。アンブリンは「スコット(Netflixのオリジナル映画制作のトップ)や彼のチームと協力できる機会を得て光栄です。私たちはアンブリンのアイコニックなブランドをNetflixの観客に提供していきます」と述べ、ポジティブな門出となったことを強調している。
今後、スピルバーグ氏が関わる新作が最も頻繁に見られるのはNetflixとなる可能性が高い、と東洋経済オンライン。最初の配信はどういった作品になるのだろうか。楽しみに待ちたい。
参考元:スピルバーグが「反Netflix」をやめた納得理由【東洋経済オンライン】
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