もはや世界的トレンド? 中国の若者に広がる「寝そべり主義」ってなんだ?

現在、中国の若年層の間でとあるトレンドが生まれてきているという。それは「タンピン主義」と呼ばれるもので、日本語に置き換えれば「寝そべり主義」という意味だそうだ。“だらりと寝そべる若年層”の姿を想像すると「なんか無気力でやる気のない若者」をイメージするかと思うが、この言葉はまさにそんな思想を指すのだ。中国人といえば「アクティブでエネルギッシュ、声が大きくて自己主張が強い」というイメージもあるが、最近の若者はそうでもないようだ…。

中国で拡大の気配を見せる寝そべり主義とは

ある種のミニマリストなのか? 仕事も必要最低限?

 寝そべり主義とは、中国国民の所得格差が広がったことで「勝ち組になれない層」が出てきたことにより生まれた言葉だという。競争社会に疲れた若者が「努力しても勝ち組になれないなら、頑張らずに必要最低限で生きていこう」という考えにたどり着き、SNSに「食事は1日2回でいいし、働くのは年に1~2カ月でいい。寝そべりは賢者の行動だ」と匿名で書き込んだことで誕生した。寝そべり主義では仕事は必要な分だけに留めて、車を持たず恋人も作らない。派手な暮らしを求めず必要最小限のエネルギーで暮らしていく生活スタイルのようだ。

 近年急成長を遂げている中国国内は、日本とは比べものにならないほどの競争社会が続いているとされており、親の期待を背負わされて競争を続けてきたことに嫌悪感を覚えたり競争社会に疲れてしまった若年層が寝そべり主義に賛同していると見られている。

寝そべり主義は経済成長を妨げる要因?

(Image:Gil Corzo / Shutterstock.com)

「腕まくりして頑張ろう」というスローガンを掲げる中国、「寝そべり主義」のSNSの投稿は即座に削除されている

 どこか日本の「ミニマリスト」や「草食系」にも近い考え方のようにも感じられる寝そべり主義だが、考えてみれば日本も「24時間戦えますか」のキャッチフレーズで栄養ドリンクが売られていたりした時代があった。しかしそれは高度経済成長やバブルの名残であり、もはや過去のトレンド。現代では競争は良くないものとされ「ナンバーワンよりオンリーワン」と、“自分らしく”働ける世の中へと転換しようとしている。
 また、アジア圏よりも仕事に情熱を注ぐ傾向の強い欧米のアメリカでも、近年は労働意欲が薄れてきているという報道も見られている。

 そんな世界的な潮流とも言える寝そべり主義。しかし、習近平国家主席が「腕まくりして頑張ろう」というスローガンを掲げるなど現在成長著しい中国国内では、将来的に経済成長の鈍化につながりかねない寝そべり主義は容認できる話ではないようだ。最初に寝そべり主義を唱えたSNSの投稿は即座に削除され、政府寄りのメディアは寝そべり主義の考え方を全否定し火消しに奔走しているという。

 現在、経済成長を続けアメリカと対峙するほどにまで成長した中国だが、発展の原動力となった競争社会に若者がNOを突き付けはじめたいま、今後の成長に暗雲が立ち込めているとも言えそうだ。短期的に大きな影響が出るとは考えづらいが、今後の中国の動向にも注目していきたい。

参照元:「寝そべり主義」 中国の若者に広がる諦め感【時事ドットコムニュース

オトナライフ編集部
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