このところの情勢により、海外派遣は前例のない混乱を見せており、海外赴任者の心身の健康を踏まえ、企業は運用方法について見直しを迫られている。そんななか、ニューヨークに本拠地を置く、組織と人事のマネジメントやコンサルティングを手がけるマーサーが、世界209都市を対象に海外駐在員の生計費を比較した「2021年世界生計費調査–都市ランキング」を発表した。
この調査結果が海外赴任者の報酬を決定する!?
このランキングは、マーサーが実施している「世界生計費調査(海外に社員を派遣しているアメリカ企業を対象)」のデータをもとに算出。そのため、現地通貨の価値がアメリカドルに対して大幅に上昇している国の都市が、順位を急上昇させるという傾向にあるとのこと。ここを念頭に置き参考にしてほしい。
また同調査は、世界の209都市における、住宅、交通、食料など、200品目以上のコストを対象にしており、主に多国籍企業や政府機関が海外赴任者の報酬などを設定する際に利用されているという。では早速、見ていこう。
10位は、スイスの首都・ベルン。湾曲して流れるアーレ川に囲まれた、中世の面影を残す美しい街並みが魅力の都市だ。読者の中には「スイスの首都」と聞いて経済都市・チューリッヒや国際都市・ジュネーブ思い浮かべた人もいるかもしれないが、残念ながらその認識は間違いで首都はベルンなのだ。ちなみにそのジュネーブもランキングの8位、同じくチューリッヒも5位にランクインしている。
次の9位は中国の首都・北京、7位・シンガポール、6位は上海とアジアの都市が並ぶ。シンガポールは国全体がきれいなことで知られ、東京23区より少し小さい面積だが、多民族国家でもあるためエリアごとにいろいろな国の文化が楽しめる。犯罪が非常に少ないため海外赴任者からの人気が高い。また「中国=物価格安」という過去のイメージを持っていた人は中国の都市が立て続けに登場したことも衝撃を受けるかもしれない。
5位は先述のチューリッヒで、4位が東京。東京は前回調査の3位から後退したとはいえ、世界でもトップクラスの生活費が高い都市というわけだ。
3位にランクインしたのはレバノン共和国の首都・ベイルート。2020年に起きたベイルート港での爆発事故などを受け、経済状況は悪化。前回から42順位を上げ、3位となった。
このレバノンを抑えて2位となったのが、前回まで2年連続1位をキープしていた香港だ。アジアでも屈指の高級なイメージどおりといったところか。
そして1位に輝いた(?)のは、中央アジア南西部に位置するトルクメニスタンの首都・アシガバートだった。近年、経済危機や食糧難にあることから、生活費の高騰が続いているという。
こうして見るとトップ10のうち半数がアジアの都市という結果となったのだが、アメリカの都市が一つも入っていないことに疑問を抱く方もいるだろう。これについて調査報告には、物価上昇が見られたものの、アメリカの各都市のランクが下がったのは、為替変動の影響を受けているのが理由だとあった。
アメリカで最も物価の高い都市に選ばれたのは、昨年より順位を8つ下げたニューヨーク(14位)を筆頭に、ロサンゼルス(20位)、サンフランシスコ(25位)、ホノルル(43位)、シカゴ(45位)と続く。
ちなみに、最も物価の低い都市は、グルジアの首都・トビリシ(207位)、ザンビア共和国最大に都市である首都・ルサカ(208位)、そして最下位の209位はキルギス共和国の首都・ビシュケクだった。もし海外旅行が再開するようになったらば、物価の高さで行き先を選んでみるのも面白いかもしれない。
出典元:『2021年世界生計費調査‐都市ランキング』を発表【マーサージャパン】
※サムネイル画像(Image: Tomacrosse / Shutterstock.com)