2017年に公開されて以来、社会現象を巻き起こすほど世界中で高い人気を誇っているオンラインゲーム「フォートナイト」。日本でも小学生から大人まで幅広い世代から支持されている。その爆発的な人気の裏で、同ゲームを開発・配信する米エピックゲームズ社と米アップル社との間に2020年に勃発した訴訟問題が、泥沼化の様相を呈している。
エピックゲームズ社のCEOは9月23日、ツイッターで「アップルは嘘をついた」とアップルを批判、iOS版フォートナイトは5年は復活できない可能性を示唆した。両社の間で何が起きているのだろうか。今回はこれまでの経緯から、今後の両社の動向を探りたい。
2020年の訴訟に判決が。両社痛み分けも、終わらない争い
この争いのそもそもの始まりは、2020年8月にエピックゲームズがフォートナイト内での課金に独自の決済システムを導入したこと。これまではApp Storeを介することで30%の手数料をアップルへ支払ってきたが、これを回避する狙いだった。このことがアップルの逆鱗にふれ、規約違反として同ゲームがアップストア内から削除され、iOSおよびMacOSユーザーはアップルデバイスでプレイすることができなくなった。
このアップルの対応を受け、エピックゲームズはすぐにアップルを反トラスト法(いわゆる独占禁止法)違反などとして、アップルを提訴したのだった。
そして、その一審判決が2021年9月にくだされたのだが、裁判所はアップルが反トラスト法の定める独占企業には当たらないとし、エピックゲームズに対し契約違反の賠償金600万ドル(約6億6,000万円)の支払いを命じた。また、アップルに対してもメーカーへの規制は反競争的であると指摘、90日以内に外部の決済手段への誘導を禁じるガイドラインを撤廃するよう求めた。
この判決は両社にとって一応の勝利ではあり、痛み分けでもあるのだがエピックゲームズ側はこの判決結果を不服として控訴、争いの姿勢を崩してはいない。
エピックゲームズのCEOティム・スウィーニーはなぜアップルを嘘つきと批判したのだろうか。それはこの判決後のアップルとのやり取りに原因がある。
判決を受けティム氏はすでにアップルに賠償金を支払った上で、開発者向けガイドラインを遵守することを約束し、開発者アカウントの回復を求めるメールをアップルに送ったという。これに対しアップルは開発者アカウントの回復を認めず、裁判の判決が確定するまでは今後も検討しない、と回答した。
ティム氏はフォートナイトがアップルの“ブラックリスト”に入れられ、判決が確定するのには5年はかかるとの見方から、少なくとも今後5年間は再配信が見込めないこと、さらにこれまでアップルが「皆と同じルールを守るなら、エピックゲームズのApp Storeへの復帰を歓迎する」と言ってきたことは嘘だったと指摘したのだ。
契約違反をしたエピックゲームズを信用せず簡単には許さないアップルと、争いの姿勢を崩さないエピックゲームズ。両社の争いはまだまだ続きそうだが、ひとまずは12月初旬までにアップルが開発者向けガイドラインの改訂で事態はまた動きそうだ。
アップルにとっても、今回の判決によりガイドラインが改訂されれば今後はほかのゲームデベロッパーも30%の手数料を回避することができるようになり、大きな風穴を開けられたようなもの。オンラインゲーム・モバイルゲーム業界全体に少なからず影響が出てきそうだ。アップルユーザーにとっては、iOSでフォートナイトをプレイできる日が5年も先になるのは残念だが、フォートナイトに限らずそのほかのゲームでも課金システムが変わるなど大きな変化があるかもしれない。引き続き両社の動向からは目が離せない。
参照元:iOS版「フォートナイト」、訴訟終了まで復活させないとAppleがEpicに通告【ITmedia NEWS】
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