いよいよ12月。2021年も新型コロナウイルス流行に振り回された年になってしまったが、その中でも良い兆しや変化を感じた年だったかもしれない。この時期、ことばに関するニュースで特に話題になるのが、清水寺で行われる日本漢字能力検定協会主催の「今年の漢字」の発表とユーキャンによる「新語・流行語大賞」だろう。
ところで皆さん、「チルい」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
「あれ?もう流行語大賞決まったの?」と思った皆さん、今からその違和感の理由を説明する
11月30日、「今年の新語2021」が発表され、落ち着いてのんびり、まったりしている様子を意味する「chill out」のカタカナ英語読みである、「チル」を形容詞化した「チルい」が大賞を受賞した。エモーショナルなものを「エモい」と変化させるような言葉の一種だが……ちょっと待てよ、何か違和感があるぞ、と思った皆さん。その違和感は大正解!
実は今回紹介するのは「今年の新語」という賞であって、「新語・流行語大賞」ではない。「今年の新語」とは、その年を代表する言葉(日本語)で、今後の辞書に掲載されてもおかしくないもの、という基準で選ばれる、辞書で有名な三省堂によるコンテストなのである。このコンテスト、正式名称は「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2021』」という。ご存じだった人はどれくらいいるだろう。三省堂さんには申し訳ないが、筆者は今回初めて知った。正直、最初は「ユーキャンの新語・流行語大賞をマネしたコンテストじゃないの?」というネガティブな第一印象を持ったのが、さすが辞書の三省堂!意外にも(?)真面目に、しっかりと行われているコンテストだった。
このコンテストは、一般から投稿してもらった言葉を、“辞書を編む人”、つまり辞書編纂に携わる、いわば日本語を知り尽くしたプロフェッショナルが「その年によく見た、よく聞いた」という視点を持って選び、後世に残す、というコンセプトのもと行われている。そのため今年誕生した言葉に限らず、以前から使われていても今年特に目立った使われ方をしたという言葉も含まれる。
チルいに続く2位には「〇〇ガチャ」、3位は「マリトッツォ」、4位「投げ銭(スパチャ)、5位には「人流」、9位には「おうち〇〇」などがランクインしている。むしろ2位以下の方が「ああ、聞いたことある!」となる言葉が多いのは、やはり辞書のプロと一般市民との意識の違いだろうか。
ちなみに今回の大賞となった「チルい」だが、新語には敏感であろうネット上からも「チルいなんて初耳」「どこで使われてるの?」と疑問の声がほとんどだ。中には明らかに「お恥ずかしながらどこの国の流行語大賞ですって?」と、ユーキャンの新語・流行語大賞だと勘違いしていると思われるコメントも。
ちなみに「チルい」、ユーキャンの新語・流行語大賞のノミネート30語からはバッチリ選外だ。
出典元:三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2021』は→こちら
※サムネイル画像は(Image:「三省堂」リリースより引用)