QRコード決済業界の絶対王者である「PayPay」の懐の深さが際立つ判断と言えるかもしれない。PayPayは現在開催中の還元キャンペーンで、還元付与上限をなんと最大で2.5倍にまで引き上げることを発表したのだ。いったいなぜなのだろうか…?
今回は、PayPayが上限を引き上げた背景や、その判断から生じる影響などについて考えていきたい。
PayPay、新サービス「PayPayあと払い」キャンペーンの強化を発表
PayPayは2月25日、「『PayPayあと払い』利用キャンペーンの付与上限変更について」と題するお知らせを公開。その中で、現在開催中の「指定支払い方法での決済で1%戻ってくる!キャンペーン」と「指定支払い方法での決済でさらに1.5%戻ってくる!キャンペーン」にて、決済1回あたりの付与上限および1か月あたりの付与上限を、これまでの合算で2,500円相当から6,250円相当へと変更することを発表した。
これまでは両キャンペーンを利用して最大10万円の利用まで2.5%の付与をえられていたものが、最大25万円の利用まで2.5%付与の恩恵を得られることになった。つまり同サービスを毎月10万円以上利用するヘビーユーザーが、よりお得に利用できるようになった、ということだ。
QRコード決済は、永遠のライバル・クレジットカード決済に勝てるのか?
PayPayが3月分から「付与率は維持したまま、付与上限をアップさせた」理由はいったいなぜだろうか。こうした還元キャンペーンでより多くの付与を行う理由のひとつとして考えられるのは、思ったほどキャンペーン利用者の数が伸びずキャンペーン利用者の増加を目指す場合だろう。しかしそれならば付与率を上げ、ライト層をより多く取り入れるのが近道のはずだ。今回の「最大10万円のご利用まで2.5%付与」を「最大25万円のご利用まで2.5%付与」へと変更した狙いは、ライト層よりもむしろPayPayヘビーユーザーの確保・固定化ではないだろうか。
PayPayあと払いは名前の通りPayPayで支払いをしたうえで後払いを行う、クレジットカード決済のような利用が可能なサービスだ。つまり競合相手は、キャッシュレス決済サービスの中でも圧倒的な歴史を持ったクレカと言える。消費者庁が2021年1月に発表した「キャッシュレス決済に関する意識調査結果」によれば、2020年12月の時点での「利用頻度の高いキャッシュレス決済」は「クレジットカード」が80%以上と圧倒的な数字を記録していた。一方で「バーコード、QRコード決済」はようやく40%を超えてきたばかりと、QRコード決済も急成長を遂げてはいるものクレカは高い壁として目の前に立ちはだかっているのだ。
そんなクレカの牙城を崩す切り札となり得るのが、クレカと同じ使い方が可能なPayPayあと払いだ。今回の変更も2月時点の上限だった10万円に到達する(そしておそらく上限到達後は使わなくなる)ユーザーが多かったからこそ、上限を引き上げてさらなる利用を促しているとも考えられる。
はたしてPayPayあと払いはクレカの代替サービスとしてその存在を確立することができるのだろうか。期待しながら見守りたい。
●「PayPayあと払い」利用キャンペーンの付与上限変更について【PayPay】
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