現金支給や口座振込といった給与の支払い方法に加え、2023年4月1日から解禁された給与デジタル払い。これは労働者が同意した場合に限り、厚生労働大臣が指定した一部の資金移動業者(○○Payなど)の口座への賃金支払いが認められる制度だ。だが、人々はデジタル払いの利用を前向きに検討しているのだろうか。
給与のデジタル払い、年代が上がるほど利用に消極的
『年代別のデジタル給与払い利用意向(単一回答)』50代、60代の約半数が「まったく使いたくない」と回答し、給与のデジタル払いに抵抗感があるようだ（「株式会社NTTデータ経営研究所」調べ）
株式会社NTTデータ経営研究所が、全国の就業している20代～60代10,000人を対象に給与デジタル払いの利用意向に関する意識についてアンケートを実施。全体の6％が「ぜひ使いたい」、16％が「どちらかといえば使いたい」と回答し、利用を前向きに検討している人は、約22％にとどまった。また、年代別にみると「ぜひ使いたい」「どちらかといえば使いたい」と答えた人の合計は20代が35％、30代が26％、40代が21％、50代と60代が13％と、年代が上がるほどデジタル給与の利用意向が低い結果に。
給与デジタル払いに対応している資金移動業者は、PayPay(PayPay)、楽天グループ(楽天ペイ)、KDDI(au PAY)といったキャリア系に加え、決済サービス「COIN+」を手掛けるリクルートMUFGビジネスなどが、厚生労働省に申請中と発表されている。これらのキャッシュレス決済に慣れた若年層には一定のニーズがありそうだが、全体の約8割が利用に消極的だと判明した。
だが、2022年の時点でキャッシュレス決済比率が約36％(注1)に達したにもかかわらず、利用したい人が少ないのはなぜだろうか。
(注1)経済産業省「2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
給与デジタル払いを利用しない理由は？ また、利用したくなるには何が必要？
『デジタル給与を利用しない理由(単一回答)』デジタル給与のメリットが見いだせないほか、リスクを不安視する人も（「株式会社NTTデータ経営研究所」調べ）
先ほどのアンケートで「どちらかといえば使いたくない」「まったく使いたくない」と答えた人に理由をたずねてみると、以下の結果となった。「使うメリットがわからないため」が25％と最も多く、ついで「現状の銀行口座受取に不満がないため」が22％だった。現状の口座振込に満足しており、給与デジタル払いを利用するメリットが認知されていないことがわかる。
また、「セキュリティ面が不安なため」19％、「決済アプリの事業者が破綻した場合に給与が保証されるのかが不安なため」11％といった、リスク面から敬遠している人も、一定数いることが判明した。
『デジタル給与を利用したいと思うようになる理由(単一回答)』ポイント還元などのプラスαやメリット周知が普及の鍵となりそうだ（「株式会社NTTデータ経営研究所」調べ）
では、「何があればデジタル給与を利用したいと思うか」を「どちらかといえば使いたくない」「まったく使いたくない」と答えた人にたずねたところ、上から「ポイント還元などが受けられた場合」23.1％、「どのようなきっかけがあっても、デジタル給与払いは使わない」23.0％、「デジタル給与利用のメリットが明確になった場合」21.6％、「セキュリティが十分であることが理解できた場合」14.9％という結果に。
頑なに利用しないと答える人は２割いるものの、国や資金移動業者の取り組み方次第で、利用してもよいと考えをあらためる人が多いとわかった。今後、給与デジタル払いを普及していくには、キャンペーンや広告宣伝など、給与デジタル払いのメリットをわかりやすく、人々に示す必要があるといえるだろう。
出典元:【株式会社NTTデータ経営研究所】
※サムネイル画像は（Image:「厚生労働省」（PDF）より引用）
