筆者は先日とある駅ナカのショップで、クレジットカードを用いて買い物をした際、「すみません、当店はタッチ決済に対応しておりません」と店員さんから申し訳なさそうに伝えられました。そのためカードを「差し込み」で利用したのですが、クレカを決済端末に差し込む行為自体を久しぶりに行ったことに気付きました。
筆者はクレジットカードが好きなため、カードのタッチ決済で買い物をすることが多いのですが「QRコード決済」をメインで使う方の場合、クレカの差し込みを年単位で行っていない方も少なくないのでは? 決済時に「クレジットカードを差し込む」のは、すでに時代遅れなのでしょうか?
「クレジットカードを差し込む」のは時代遅れ?
クレジットカードの支払い時、従来の差し込みに変わって台頭してきたタッチ決済。カードを端末にかざすだけで瞬時に支払いが完了し、早くて便利であるため、多くの支持を集めています。
株式会社インフキュリオンが2024年6月に発表した「決済動向2024年上期調査」によると、「『タッチ決済』を利用したことがありますか」という質問に「日常的に利用している」「たまに利用することがある」と答えた人は合わせて50%。つまり、2人に1人はタッチ決済がクレジットカードでの日常の支払い手段になっているということです。なお、デビットカードについても35%が「日常的に利用している」「たまに利用することがある」と答えたとのこと。
国内のクレジットカードの保有率を考えると、端末の普及によってこの数字はもっと増えていくと思われます。
関西の私鉄ではクレカのタッチ決済による乗車も可能に
2025年の大阪・関西万博を控え、関西の主な私鉄では、2024年10月29日から、クレジットカードをかざして改札を通過できるシステムが導入されました。つまり、PiTaPaやSuicaなどではなく、クレジットカードでそのまま電車に乗ることが可能に。外国人観光客の利便性も増すサービスとなっています。
2020年以降に大きく普及した、クレジットカードの「IC対応義務化」
余談ですが、店頭での「クレジットカード決済」は2020年以降に大きくあり方が変わりました。2020年以前は、お店で商品を買う際に「店員にカードを渡して、POSのリーダーでスワイプ」というのがまだまだ珍しくない光景でした。
しかし、2020年3月、改正割賦販売法によって加盟店が決済端末をIC化することが義務化。これにより、ICチップがついているクレジットカードについては客が自ら手元で操作することになりました。そのため、「店員にカードを渡す」という行為がまず前時代的なものに。
そして決済端末の刷新に呼応するように、非接触ICチップが搭載されているカードの発行も相次いでいます。その結果、急激に「カードの差し込み」の利用頻度が減少しているのが、2024年時点の現状ではないでしょうか。
交通系ICの代替手段としても期待される「タッチ決済」
先にも述べた通り、クレジットカード利用者は50%、デビットカード利用者は35%が、タッチ決済を日常的に利用していると見られます。クレカ利用者がタッチ決済を利用する割合は、公共交通でのタッチ決済での乗車が定着することでより増えるでしょう。
「交通系IC」の代替としての、クレカのタッチ決済の普及は一層見込まれます。普及範囲は大都市圏だけに留まるものではないと見られます。たとえば熊本県では「対応機器の更新コストが高額」という理由で路線バスや鉄道を運行する事業者が交通系ICカードを2024年中に廃止することを発表。今後はクレジットカードなどによるタッチ決済を導入されるとのこと。
大阪では「増加する観光客を見越して」の対応である一方、熊本のケースは、人口減少に苦しむ地方の公共交通事業者の苦肉の策となっているようです。クレカのタッチ決済を利用した「公共交通への乗車」が広がると、Suica感覚でクレカのタッチ決済を使う方も増えるでしょう。そしてタッチ決済が普及すればするほど、クレカを「差し込む」機会は減るでしょう。
クレカを店員に手渡す行為が時代遅れになったように、クレカを差し込む行為も今後数年で急激に目にする機会が減るかもしれません。