現在、日本国内において急ピッチで進められている様々な「デジタル化」。中でも「キャッシュレス決済」の促進は、日常生活の中でその変化を強く感じられる人もいるだろう。そしてキャッシュレス決済がさらに発展していくと、将来的には毎月の給与もデジタルマネー・電子マネーで受け取ることができるようになるのだという。
そんな近い将来に訪れる「デジタルマネー給与振込」について、そのメリットなどをご紹介していきたい。
デジタル化でキャッシュレス利用の手間を省こう
デジタルマネー給与振込とは、ビジネスパーソンの給料をこれまでの銀行振込だけでなく「電子マネーのかたちでも支払えるようにしよう」という動きだ。海外では既に制度として取り入れている国もあり、日本政府も実現に向けて法整備などを急いでいる。
デジタルマネー給与振込のメリットは、電子マネー・キャッシュレス決済の利用が進むことだ。これまでキャッシュレス決済を利用するには給与が振り込まれた銀行口座から、電子マネーにチャージする必要があった。しかし最初から電子マネーとして振り込まれることで、チャージが不要となり利用促進につながることを狙う。さらに近年増加している外国人労働者も、開設に様々な条件のある銀行口座でなく簡単に扱い始められる電子マネーへ振り込めるようになれば、国として積極的な外国人労働者の受け入れにもつながるとも考えられている。
一方で課題点として議論されているのは、利用者が思い立ったタイミングで「即現金化できるか」や、電子マネーが恒久的に価値を保証されるのかどうか「安全性の担保」だ。中でも、電子マネーの取扱業者が倒産するなどして価値が無くなってしまった場合の対応などが、導入への大きな壁となっているという。
また、制度面以外に目を向けたときに障壁となるのが、“キャッシュレス後進国”とまで言われる日本の現金至上主義だ。経済産業省が2020年6月に公開したデータによれば、2019年の日本のキャッシュレス決済比率は20%に届いていない。96.4%と、100%に近い割合を誇る韓国をはじめ、68.6%イギリスや46.0%のアメリカなどと比べると20%未満の日本は「非常に低い」と言わざるを得ない。この比率を高めることが、デジタルマネー給与振込導入にとって不可欠となるのかもしれない。
また意外な話かもしれないが、実はデジタルマネー給与振込の先進国はアフリカにあるという。携帯電話の所持率が爆発的に上昇したアフリカでは、ケニアで誕生したモバイル送金サービス「M-PESA」の利用が各国に浸透。都市部に出稼ぎに来ている人々が地元で暮らす家族に手軽に送金できる点や、防犯上現金を所持するよりも安全という観点から広く受け入れられたという。
日本ではあまりメリットとなりづらいポイントでもあるが、こうしたメリットを日本式に置き換えたサービスを打ち出すことができれば、課題の普及率を克服することにつながるかもしれない。
これから時間はかかるかもしれないが、いずれデジタルマネー給与振込が実現することは間違いない。そのサービスが実装されるとき、どういったシステムでどのようなメリットがあるものなのか。今のうちからアンテナを高くして議論の進展などの情報収集に努めるのも、周囲に先んじて様々な競争を勝ち抜いていく秘訣となるだろう。
参照元:近未来に日本でも実現するかもしれない「給料電子マネー振込」【テックとワークライフ】