みなさんは、世界の先進国の中で日本が「キャッシュレス後進国」であることをご存知だろうか。2019年頃からQRコード決済が普及しはじめるなどキャッシュレス化が加速してきているが、それでもまだまだ世界的な水準には達していないのが現状だ。
今回は、海外諸国のキャッシュレス決済事情をご紹介しながら、日本にキャッシュレス決済が普及しきらない原因と比較していきたい。
キャッシュレス決済大国はお隣・韓国
2018年に大手シンクタンク・野村総合研究所が発表した「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」によれば、2016年の日本のキャッシュレス比率は19.8%。この結果を他の先進国と比較してみると、フランスが40.0%、アメリカ46.0%、イギリスが68.7%と日本の2倍・3倍の数値だった。1位の韓国に至っては96.4%という驚異的な結果となっており、いかに日本がキャッシュレス決済の普及に苦戦しているかがわかるだろう。
【国別キャッシュレス決済事情】
1.韓国
経済産業省が2018年に公表した調査結果では、韓国で主流のキャッシュレス決済は「クレジットカード決済」。その割合はキャッシュレス決済全体の70%以上だ。韓国でここまでクレジットカード決済が浸透した理由は、「クレジットカードの利用総額のうち20%が所得控除になる」減税措置や、「1,000円以上のクレジット決済で宝くじに参加する権利を得られる」など、政府が消費者向けに優遇措置を制定したためだ。さらに年商240万円以上の店舗にクレジットカード決済の導入を義務化し、日本であれば現金しか使えないような個人商店でもクレジットカードが使える街づくりを推し進めたことも大きい。
また、韓国では最高額紙幣が5万ウォン(およそ5,000円)で、「高額支払いの際に枚数がかさみ非常に不便だった」ため、カード1枚で済むクレジットカードが便利だった。という物理的な事情も存在する。
2.アメリカ
キャッシュレス普及率が46.0%となったアメリカはクレジットカード発祥の地ともされており、クレジットカード決済とデビットカード決済が同程度で利用されている。また、日本にも進出してきたオンライン決済サービス「PayPal」など、新たなかたちのキャッシュレス決済も対等してきはじめた。
一方でアメリカは格差の激しい社会であり、クレジットカードどころか銀行口座も開設できない低所得者層は依然として現金決済以外の手段を持たないのが実情だ。そのため国内全体では半数近い普及率となっているキャッシュレス決済も、クローズアップしてみると“二極化”という表現が正しいと考えられる。
3.中国
野村総合研究所の調査では計算方法が他国と異なるため参考扱いとされたが、中国のキャッシュレス決済普及率も約60%と高い水準にある。「Alipay(アリペイ・支付宝)」や「WeChatPay(ウィーチャットペイ・微信支付)」など、日本でも中国人観光客向けに導入している店舗が増えているサービスも存在する。国全体が一丸となって先進技術の発展に取り組んでいるだけに、今後もさらなる普及・進化が進んでいくことだろう。
経産省の分析によると、日本のキャッシュレス化が進まない理由として
・盗難リスクの低い「治安の良さ」
・偽札や価値の低い汚れた紙幣の流通が少ない「現金への信頼性」
・店頭での現金支払いがスムーズな「POSレジ処理の精度」
・ATMの普及による「現金の入手の容易さ」
の4点を挙げている。不便さを感じていないため、現金から離れる理由が無いのだろう。だからこそ日本も2020年6月までキャッシュレス決済の還元事業を行い、付加価値をつけて普及に励んだのだが、その施策が成功したと言えるかは現時点では判断が難しいところだ。「2025年までにキャッシュレス決済率を40%以上にする」と目標を打ち出しているだけに、今後政府が打ち出す新たな普及策に注目していきたい。
参照元:世界のキャッシュレス普及率ランキング | 海外と日本の「電子マネー普及率・決済事情」を比較【Digima】