ここ数年で一気に身近なサービスとなったQRコード決済。2019年から2020年にかけて、「キャッシュレス・消費者還元事業」や各企業のポイント還元キャンペーンなど、消費者におトクなキャンペーンもあって利用者層も急拡大した。しかし2020年9月に発表されたデータによれば、ここ数ヶ月はキャッシュレス決済の利用幅は横ばい傾向にあるという。まだまだ“キャッシュレス後進国”と呼ばれるレベルの日本で、キャッシュレス決済はどこまで受け入れられるのだろうか。
今回はキャッシュレス決済の普及具合や、今後さらに一般化させるにあたって何が必要化を考えていきたい。
キャッシュレス決済普及もその浸透速度は鈍化している
マーケティング会社のイプソスが2020年1月から毎月行っている決済手段の利用状況調査によると、今年に入りキャッシュレス化・現金離れはしっかり進んでいる。1月の調査では42.7%だった現金決済での支払金額は、8月には38.5%まで減少。対してクレジットカード決済は41.2%から43.9%、QRコード決済も8.4%から10.8%に上昇しておりキャッシュレス決済の浸透が見て取れる。
順調そうに見えるキャッシュレス化だが、実は月ごとに見てみると5月まで毎月1ポイント程度減少していた現金決済が、6月以降は小幅な上げ下げが続き停滞している。QRコード決済も3月に10%の壁を超えて以降はそのまま10%台をさまよっている状況だ。
2020年6月といえば、国のキャッシュレス・消費者還元事業が終了した月だ。さらにQRコード決済の運営各社が競うように行った出血大サービスのポイント還元キャンペーンも、現在は落ち着いてきている。国の後押しも無くなり、どのサービスも新規利用者の獲得からサービスの満足度向上に舵を切っているこのタイミングでは爆発的な増加は見込めないだろう。
大盤振る舞いのおトクをエサに新規の利用者を呼び込む時期が終わりを迎えた今、次はサービスの利便性・充実度といった付加価値で利用者を常連化させることに注力するフェーズに入ってきたのだろう。例えば、決済に使える提携オンラインサービスの充実や、アプリ上でタクシーの配車ができるような、キャッシュレス決済に紐づいた便利な機能の搭載が現在進んでいる。一度入ってきた顧客を逃さないことも、商売において大切なことだ。
しかし囲い込み一辺倒になると、今度は「2025年までにキャッシュレス決済の比率を40%まで引き上げる」という目標を掲げている国から、「もっと利用者を増やすように」と尻を叩かれかねない。不要なツッコミを避けるため、今後は便利な多彩な付加価値を追加しながら、CMなどでその利便性・充実度を世間に周知して未利用者の新規流入を図っていく可能性も考えられる。
そんな未来が訪れたとき、サービスを使っていない“外側”の人間から見ても「使い勝手が良さそうだ」と感じられるサービスが新たなQRコード決済業界の覇者となるだろう。求められるのは、利用者のニーズを見抜く分析力とそれを広く知らせるPR力。今後の業界の動向に注目していきたい。
参照元:キャッシュレス停滞!キャッシュレス決済マンスリー調査9月調査結果を発表【Ipsos】