現在、官民が一体となって急ピッチで進められているキャッシュレス決済比率向上の促進。数年前にはほとんど知られていなかったQRコード決済の認知度が大幅に高まるなど、目に見えた成果も出てきている。しかしこの普及には、2019年10月の消費増税も好影響を与えていたのはご存知だろうか。
今回は、消費者にことごとく嫌われていた消費増税がキャッシュレス決済の普及に、どのような推進力をもたらしたのかをお伝えしていく。
増税がキャッシュレス化を後押ししていた?
経済産業省が「2025年までにキャッシュレス決済比率を40%程度に引き上げる」「将来的には世界最高水準の80%を目指す」と指針を示すなど、国をあげて推し進められている日本国内のキャッシュレス化。2016年の調査では19.9%だった比率を10年弱で倍増させる計画だ。荒唐無稽な話にも聞こえるが、同じ先進国の欧米各国では2016年の時点で40~60%台が当たり前となっており、国としては最低限のラインに立とうという、控えめな目標だと言えるかもしれない。
そんな指針が出た直後に待っていたのが、2019年10月1日の消費増税。軽減税率の適用される食料品などを除き、消費税が8%から10%に引き上げられたことはみなさんもよく覚えているだろう。
お金に関する情報メディア「まねーぶ」の調査によれば、2020年9月の時点で「増税を負担に感じる」と回答した人は82.0%だった。さらにその負担を感じたタイミングは、「2019年10月から」という回答が過半数を占めている。やはり実施直後から消費者にとって大きな負担になっていたことが、調査結果からも明らかになった。
そんな“嫌われ者”の増税に際して、増税前の駆け込み需要や増税後の需要落ち込みを回避するため国が取った対策が、消費増税とともにスタートした「キャッシュレス・消費者還元事業」。期間中、キャッシュレス決済を利用すると、支払額の一部が後日戻ってくるキャンペーンだ。これにより買い控えによる景気の冷え込みを防ぐことに成功。多くの人がキャッシュレス決済を利用するようになり、それ以前も馴染み深かったクレジットカード決済だけでなく、新興のQRコード決済サービスも一気に世の中に浸透することに成功した。
まねーぶの調査でも「増税後の消費行動はどう変化した?」という設問に対し、「キャッシュレス決済を利用する」が3位にランクイン。まさに国としては、増税しつつキャッシュレス決済の普及も進められる一石二鳥の取組みだったのではないだろうか。
キャッシュレス・消費者還元事業は2020年6月30日をもって終了したが、QRコード決済サービス各社は独自のキャンペーンを続けている。現金と比べて決済方法が簡単だと感じたユーザーであれば、おトクなキャンペーンがあるうちは使ってくれる公算が大きく、キャッシュレス決済比率も高いまま維持できるだろう。
もし2025年を前に目標の40%到達が危ぶまれた場合は、またしても増税+キャッシュレス還元のコンボが炸裂するかもしれない。そのときは、読者のみなさんも粛々とキャッシュレス決済を使ってあげてみてはいかがだろうか。
参照元:消費税増税から1年、8割以上が「負担を感じる」消費行動はどう変化した?【まねーぶ】