昨今、東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みから、コロナの波も受けてキャッシュレス化の動きはかなり大きくなった。その動きはショッピングやサービスに対してだけでなく、ついに給与支払いにまで進出してくることになりそうだ。メリットだけでなく解決すべき課題も抱えるデジタル給与払いに対して、IT化に消極的とも言われる日本企業の意識はどうだろうか?
今後、給与が現金ではなくなるかも?
先進国では遅れを取っており“キャッシュレス後進国”と揶揄される日本のキャッシュレス化も、少しずつ歩みを見せている。そんな中で政府は現在、「給与のデジタル払い」解禁を検討しているという。これまでの給与支払い形式は「現金受け取り」もしくは、「銀行口座振り込み」のみでの対応となっていた。しかしここに、「PayPay」「メルペイ」「楽天ペイ」などといったスマートフォンでの決済サービスや電子マネーなどでの支払いが加わる可能性が高まってきた。
決済サービスの充実化や使用ケースも増加したことにより、従業員に対する利便性の向上や、企業側の銀行振込手数料の削減などが期待できる。この先、法的に給与デジタル払いが可能になった場合、導入を検討している企業はどれほどいるのだろうか。
Works Human Intellingenceが大手企業247社に対して「給与デジタル払い」のアンケート調査を行った。「給与のデジタル払いが解禁になった場合、利用を検討しますか」という問いに対し、「検討しているが利用未定」が5.7%、「検討していないが、これから検討予定」が20.6%という結果になった。全体で26.3%の大手企業が検討していることとなり、“大手ならでは”かもしれないがITに消極的とも思えた日本の企業側の前向きな姿勢が見える。
導入のメリットとしては、やはり「銀行振込手数料の削減」を目的とするという回答が55.2%の支持を得ており、会社のコスト削減につながると考えられているようだ。逆に障害となるポイントとして「システムインフラの投資」や「担当者の対応工数」、最近各所で騒がれているような決済サービスでの個人情報漏洩の心配などを懸念する声も少なくないようだ。さらには実際に給与を受け取っているサラリーマンの意見はというと、40.9%がデジタル払いに反対だという(日本トレンドリサーチ調べ)。
それでも26.3%の大手企業が検討しているのには、社会の多様性に積極的であるという企業メッセージ的役割や企業PRにつながる可能性があるからだろうという意見も見られた。実際、すでに経費精算などでは電子マネーでの支払いを取り入れ、話題となっていた企業もある。多くの課題もあるだろうが、いち早く導入すれば話題性もさながら長い目で見ても企業メリットとなり得るのではないだろうか。従業員との意見の一致ももちろん大切にしながら、という前提はつくのだが…。
もし給与デジタル払いが解禁となり浸透とともにメリットが大きくなっていけば、サラリーマンたちの意識も変わるかもしれない。日本のキャッシュレス化をさらに進めるカギとなるか、期待したい。
【ワークスHI調査レポート】大手247法人意識調査 「給与デジタル払い」を検討(予定含む)している大手法人は約26%【Works Human Intellingence】