ここ数年、様々な企業グループが独自の「共通ポイント」の運用を積極化させているのは読者の方々も日々の生活の中で感じていることだろう。中でもとくに存在感を高めているのが、「PayPayボーナス」などを軸としたソフトバンク経済圏と、「楽天ポイント」を軸とする楽天経済圏だ。両社とも携帯電話のキャリア事業からQRコード決済、ECサイト、ネット銀行など多岐にわたる事業でバチバチと火花を散らしている。
しかしそんな日本国内の経済圏を代表する2社のうち、「楽天ポイント・楽天経済圏に危機が迫っている」と報じられている。それはいったいどんな理由からなのだろうか…?
楽天グループの主力のひとつ・楽天モバイル
近年、テレビをつければ容易に「楽天」のワードを聞くことができるほど、私たちにとって身近な存在になっている楽天グループ。楽天カードのCMなどに登場する川平慈英さん扮する「楽天カードマン」は、多くの人から愛される人気キャラクターとなっている。
そして現在の楽天グループの看板のひとつであり、楽天カードマンとのコラボCMでも話題となっているのが楽天モバイルだ。2020年4月から携帯電話のキャリア事業に参入して以降、「300万人プラン料金1年無料」をはじめ多くの施策でユーザーを集めている。2021年4月にはiPhoneの取扱いも開始。その人気にさらなる拍車がかかっていることは想像に難くない。グループ全体でも楽天モバイルの成長に注力しており、楽天モバイルの自前の基地局増設に投資している状況だ。
グループ一丸となっての楽天モバイルへの先行投資が続いている現状だが、楽天モバイルの黒字化を気長に待っていられる余裕があるかはまた別問題だ。8月11日に発表された2021年12月期第2四半期の決算では、累計(1~6月)の最終損益では650億円を超える赤字であることが伝えられている。これは前年同期よりも悪化しているといい、グループの本音としてはすぐにでも黒字化を果たしてほしいと考えていてもおかしくないだろう。
しかし楽天モバイルも、世界的な半導体不足によりこれまで「2021年夏頃」と発表していた自社回線の人口カバー率96%への到達が、「2021年内」へと繰り下げられた。(キャリア事業への参戦時には「2026年3月」としていたが、それを大幅に前倒ししているため「年内」でも十分に早いと言えるのだが…)
自社回線の普及が進まなければ不便さを嫌ったユーザーの流入は見込めず、回線を借りているKDDI(au)へのローミング費用もかさむ。収入が減り支出が増えてしまうという、負のスパイラルへと陥ってしまいかねない。最悪の場合、楽天モバイルの赤字が顧客向けの優遇サービスのための資金を食いつぶしてしまえば、楽天ポイントのシステムすら崩壊してしまう可能性もはらんでいるだろう。
「進むも地獄、退くも地獄」といった様相を呈しているが、進まなければ成功もあり得ないのが楽天グループのツライところだ。この苦難を乗り越えて、楽天モバイルの黒字化が果たされる日はいつになるだろうか。今後の楽天モバイルに注目していきたい。
参照元:楽天の足を引っ張る「意外な事業」…「楽天ポイント経済圏」崩壊の可能性も【マネー現代】