共同通信の調査によると、QRコードやバーコードを使ったスマートフォン決済(コード決済)をすれば、特別にポイントなどが還元・付与される消費喚起策を取り入れている自治体が、全国で200を超えることが分かった。
キャッシュレス決済の普及を推進したい国としては、これだけ地方自治体が協力していることは歓迎すべき話だろう。しかし世の中には、高齢者をはじめ様々な事情で現金決済にこだわる“現金派”も少なくないのが現状だ。そんな“現金派”からは不満の声も挙がってきているようだ。
国が始めた施策に自治体も便乗した結果、不満を感じる人も
「PayPay」などのQRコード決済事業者は2020年から、地方自治体と連携した地域限定のキャンペーンを多数実施している。施策はいろいろだが、提携自治体内の中小店舗でその決済サービスを利用すると、最大で20~30%の還元を受けられるというキャンペーンも数多く行われている。
この背景には、政府が2019年10月に消費税率を10%に引き上げた際、キャッシュレス決済をポイント還元の対象にしたことが関係するようだ。政府がやるなら、自治体がやっても問題ないだろうと、この施策に関心が高まったとみられる。
東京都三鷹市や沖縄県など一部自治体は、紙のクーポン券と併用したが、多くの自治体はスマホのコード決済に限定してしまっている。これではスマホを持っていなかったり、扱いに慣れていなかったりする人たちは恩恵を受けられず、不公平感を覚えてしまうのもわからない話ではない。実際、秋田県湯沢市の市議会では6月に、市の2021年度一般会計補正予算案に盛り込まれたキャッシュレス・消費喚起事業について、「スマートフォン利用者限定で不公平感がある」などとして、予算2億5,130万円を削除する修正案を議員提案し、全会一致で可決している。
2020年に消費者庁が公表した「キャッシュレス決済に関する意識調査結果詳細」によれば、40代までは50%前後の利用率のあるQRコード決済だが、50代で「42.0%」、60代では「36.9%」と40%を下回り、70代となると「18.3%」とかなり下がっている状況が見受けられる。もはや使っている人を見つけるほうが苦労するレベルだ。70代の人たちからしてみれば、自分の年代で5人に1人も使っていないサービスで「優遇します!」と言われても、嬉しくないどころか「私たちのことは無視するつもりか?」と思ってしまっても仕方のないことかもしれない。
また、PayPayなど地方の店舗にも決済を導入してもらえるよう頑張っているサービスもあるが、それでも都市部と比べると普段の生活でQRコード決済を利用できる店舗の数は限定的になってしまうことは否めない。「使う店をどれだけ選べるか」という地域格差も考えておくべき部分だろう。
“現金派”、スマホを使えない高齢者、導入店舗の少ない地方。これだけ乗り越えるべき壁が山積しているようでは、日本のキャッシュレス社会はまだまだ遠いということだろうか。
参照元:スマホ決済特典の自治体200超【共同通信】