マイナンバーカード取得者にポイント還元する「マイナポイント事業」の申込数が、8月末時点で対象の5割弱にとどまっていることが分かった。そもそも、マイナポイントを交付した目的は、マイナンバーカードの普及率を上げるためだった。しかし、その本来の目的に対してマイナポイントは大した貢献をしておらず、財務省からは11日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会で「マイナポイント」事業について、カードの普及効果に「限界がある」と指摘が入る始末だ。果たして今後目的は果たすことができるのだろうか…。
そもそもマイナポイント事業とは
マイナポイント事業は、2020年9月に始まった事業だ。マイナポイントを受け取れる対象となるのは、2021年4月末までにマイナンバーカードを申請した4,931万人。マイナンバーカード取得者が同事業に登録し、キャッシュレス決済を使うなどすると、電子マネーで最大5,000円分が還元されるというものだ。
総務省はマイナポイントの事業費として総額約3,000億円を計上している。最大5,000万人をポイント還元の対象としており、筆者が市役所を訪れた際に「早めに申込みしないと、予算がなくなり次第終了なので申請はお早めに」などと、申し込みを促されたことがある。
しかし蓋を開けてみたら、申込数は8月末時点で対象の半数以下という結果だったという。当初はマイナポイント申込みをCM等でも流したり大々的にキャンペーンを打っていたものの、その結果は惨敗に終わっていたようだ。そして当然、マイナポイントの失敗はマイナンバーカード普及の失敗とイコールの関係だ。というのも、マイナポイントを交付することになった目的は、マイナンバーカードの普及率を上げるためだからだ。9月1日時点で、人口比でのカードの交付率はたった4割弱にすぎない。約3,000億円という多額の予算を計上したのにもかかわらず、完全に大コケしているのだ。
そもそも、マイナポイントをばら撒いてマイナンバーカードの普及率をアップするという作戦が失敗に終わっているのは、マイナポイントの受取り方法が煩雑だったのも影響しているのではないだろうか。マイナポイントを受け取るにはマイナンバーカード申請し受け取ったら、キャッシュレス決済を1つ選びスマホかコンビニのマルチコピー機からマイナポイントを申し込む。後は還元されるのを待つだけだが、デジタル弱者には厳しく面倒だと思われても仕方ないだろう。
最大5,000円分の電子マネーを獲得できることは魅力だが、こんな煩雑な申込みを、しかも最も大切な個人情報とも言えるマイナンバーカードを使って行うのも、国民にとっては不安だったのではないだろうか。実際周りでも「マイナンバーカードは作ったけどマイナポイントは申請していない、よくわからない」という年配者の方が多いと聞く。
総務省は2020年6月30日に終焉した「キャッシュレス還元事業」の熱が冷めやらぬうちにとマイナポイントのばら撒きを考えていたのだろうが、ばら撒くこともできず、結果マイナンバーカードの普及率も伸びず、何がやりたかったの?という状態になっただけ。多額の国民の税金を使うならば、誰にでも分かりやすく、不安のない仕組みを考えて実行するべきだ。
参考元:マイナポイント登録申請 半数以下に低迷 財務省、ポイント付与の効果限定的【東京新聞】
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