HDMIケーブルの見た目は同じでも性能にはかなり違いがあるの知ってた?

テレビでレコーダーやゲームなどの映像&音声を伝送するときは「HDMIケーブル」を使います。HDMIケーブルには仕様が異なるさまざまなバージョンがありますが、見た目は同じなのでなかなか判断できません。もし、間違ったHDMIケーブルで接続すると画質が悪くなったり、ゲームがカクカク表示されたりします。そこで今回は、HDMIの規格を確認して、自分の用途に合ったHDMIケーブルを正しく選べるように解説します。

そもそもHDMIケーブルって何なの?

HDMIは「High-Definition Multimedia Interface」の略。 映像、音声、制御信号などを1本のケーブルでまとめて送れるデジタル規格です。

アナログ時代には音声と映像で色分けされたアナログケーブルを数本使用して、機器を接続するのが面倒でしたが、HDMIなら映像も音声も1本のケーブルで簡単に接続できるのが便利ですよね。

現在ではテレビ、パソコン、デジタルカメラ、ゲーム機など、幅広いデジタル機器でHDMIが使用されています。

ところが、HDMIケーブルの見た目はすべて同じなのに、実はバージョンによって伝送できる解像度や転送速度、付加機能が異なるのが厄介です。

接続する機器に合ったバージョンのHDMIケーブルで接続しないと、画質が悪くなったりゲーム画面がカクカク表示されたりしますので、注意しましょう。

また、HDMI端子には複数のコネクタ形状がありますので、今回はHDMIの規格やコネクタ形状などについてじっくり解説します。

●Amazon「Amazonベーシック ハイスピードHDMIケーブル 1.8m」は→こちら(Amazon)

(Image:amazo.co.jp)

1本のケーブルで映像も音声も伝送できる便利なHDMIケーブル。写真はAmazonベーシックのハイスピードHDMIケーブルですが、見た目ではなかなかバージョンの違いが分かりません(画像はAmazon公式サイトより転載)

バージョンごとに異なる解像度と伝送速度を確認しよう!

2002年に策定されたHDMIケーブルの規格は、これまで何度もバージョンアップを繰り返しており、最新バージョンは2.1となっています。

そのため、製品によって解像度や伝送速度、機能などが大きく異なるのです。

まず、HDMIケーブルのバージョンで注意したいのは解像度です。最近のテレビは1920×1080ドットの「フルHD」だけでなく、3840×2160ドットの「4K」や7680×4320ドットの「8K」もあります。

たとえば、フルHDまでしか対応していないHDMIケーブルを4Kテレビで使うと、本来の画質では表示できませんので、どうしても画質が落ちてしまうのです。

現在販売されているテレビの解像度はフルHD、4K、8Kなどがあります。4KはフルHDの4倍、8Kはさらに4Kの4倍の超高画質になります(画像は筆者が独自に作成)

次に注意したいのが伝送速度です。伝送速度が速いと一度に多くのデータを伝送できるので、より高画質で映像もスムーズに再生できるのです。

また、解像度で「30Hz」や「60Hz」といったリフレッシュレートが表示されますが、これは1秒間に何回画面を描ができるかを指すもの。

たとえば、60Hzなら1秒間に60枚の画像が表示できるので、この数値が大きいほうがより滑らかな映像になるのです。

このように、HDMIケーブルはバージョンで性能にかなりの差があるのにも関わらず、見た目ではどのバージョンに対応しているのか、まったく判別できません。

そこで現在は、HDMIのライセンス供与を行う団体「HDMI LICENSING」が、新たな呼び名を策定しており、パッケージにライセンスロゴが表示されるようになりました。

性能の低いものから「スタンダード(STANDARD)」「ハイスピード(HIGH SPEED)」「プレミアムハイスピード(PREMIUM)」「ウルトラハイスピード(ULTRA)」の順で4つに分類されています。

HDMIケーブルを購入するときは、このライセンスロゴを目安に購入すれば、無用なトラブルを回避することができるでしょう。

●HDMI LICENSING(公式)は→こちら(英語)

(Image:hdmi.org)

HDMI LICENSINGの認定を受けた製品には、このようなロゴが表示されています。ちなみに「with ETHERNET」とある製品はインターネット接続機能に対応する製品です(画像はHDMI LICENSING公式サイトより転載)

こちらは筆者が購入したAnkerのHDMIケーブルのパッケージです。「ウルトラハイスピード」のライセンスロゴがあるので、最上位の性能があることが分かります(筆者撮影)

名称 スタンダード
STANDARD
ハイスピード
HIGH SPEED
プレミアムハイスピード
PREMIUM HIGH SPEED
ウルトラハイスピード
ULTRA HIGH SPEED
バージョン Ver.1.2以前 Ver.1.3~1.4 Ver.2.0 Ver.2.1
主な用途 1080i 1080P 4K 8K
解像度 フルHD 4K/30Hz 4K/60Hz 8K/60Hz・4K/120Hz
・1920×1080 ・2560×1440(60Hz)
・3840×2160[4K](30Hz)
・3840×2160[4K](60Hz)
・5120×2880(30Hz)
・7680×4320[8K](30Hz)
・3840×2160[4K](120Hz)
機能 HECに対応 3D対応(Ver.1.4)
HECに対応
ARC対応
HDR対応(Ver2.0a)
32chオーディオ転送対応
最大10Kに対応(DSC)
DynamicHDRに対応
eARCに対応
伝送速度 4.95Gbps 10.2Gbps 18Gbps 48Gbps

こちらがHDMIのバージョンの違いです。よく分からない人は「主な用途」で判断しましょう。8Kテレビならウルトラハイスピード、4Kテレビはプレミアムハイスピード、フルHDテレビならハイスピードを選べばOKです(表は筆者が独自に作成)

スタンダード(Ver.1.2以前)

解像度1920×1080のフルHD対応で、伝送速度は4.95Gbpsです。4Kテレビではスペックが足りていないので、あえて今このスタンダード製品を購入する必要はないでしょう。

ハイスピード(Ver.1.3〜1.4)

最大解像度は4096×2160で、30Hzの4Kに対応。伝送速度は10.2Gbpsとなります。また、3D映像にも対応しますので、4Kテレビを利用するなら最低限このハイスピードが必要になります。

プレミアムハイスピード(Ver.2.0)

最大解像度は4096×2160ですが、60Hzの4Kに対応。伝送速度は18Gbpsとなっています。HDRにも対応しますので、4KテレビにUltra HD Blu-rayやPS5を接続するなら、プレミアムハイスピード以上がオススメになります。

ウルトラハイスピード(Ver.2.1)

8Kテレビを使うならウルトラハイスピードが必須です。4Kは120Hz、8Kは60Hzで再生できるので、もし、8Kテレビを買ったらこのウルトラハイスピードをチョイスしましょう。

HDMI関連機能や用語も確認しておこう!

HDMIケーブルの規格の概要が分かったところで、HDMI関連によく出てくる用語についてもしっかり覚えておきましょう。

HDR

「HDR(High Dynamic Range)」は明暗差を表現できる技術のこと。クッキリとした立体感のある映像を楽しむことができます。これはプレミアムハイスピード(Ver.2.0a)以上が対応しています。

さらに鮮明な映像を表示できるDynamicHDRも登場しており、これはウルトラハイスピードが対応します。

HEC

HEC(HDMI Ethernet Channel)は、HDMIケーブルにインターネットのLAN機能を持たせた規格。

スタンダードやハイスピードではオプションの機能となりますので、ライセンスロゴに「with ETHERNET」とあればLANケーブルのようにネットに接続できます。

ARC

ARC(Audio Return Channel)は、音声入力だけでなく出力にも対応する規格。これまでデジタル音声出力では必須だった光デジタルケーブルが不要になります。ただし、対応するのはハイスピード(Ver.1.4)以降です。

また、最近ではより高品位なDolby TrueHDやDTS-HD Master Audioなどのロスレスオーディオフォーマットが登場しています。

すでに、これらに対応するための拡張ARC「eARC(Enhanced Audio Return Channel」)」も登場していますが、これはウルトラハイスピードのみが対応します。

CEC

CEC(Consumer Electronics Control)は、テレビとレコーダーの連携機能のこと。たとえば、レコーダーをオンにするとテレビも自動的にオンになり、どちらのリモコンでも操作できるようになります。

(Image:Picturesque Japan / Shutterstock.com)

CEC機能は幅広く利用されています。たとえば、HDMI端子に挿して使うFire TV Stickのリモコンで電源をオンにすると、テレビの電源も自動的に入りますが、これはCEC機能のおかげです

HDMIケーブルはコネクタ形状の違いにも注意!

HDMI端子は現在5種類のコネクタがありますが、テレビやレコーダーなどで一般的に使われているHDMI端子は「HDMIコネクタ(タイプA)」です。

これ以外に、ビデオカメラやノートパソコンなどでは「ミニHDMIコネクタ(タイプC)」、スマホやデジタルカメラでは「マイクロHDMIコネクタ(タイプD)」などが使われています。

HDMIコネクタ(タイプA)

テレビやデスクトップパソコンなどでよく使われているのが、スタンダードな「HDMI タイプ(タイプA)」です。一般的にHDMIといえば、このタイプAを思い浮かべる人が多いでしょう。

(Image:amazo.co.jp)

タイプAは、テレビやデスクトップパソコンでも幅広く使われているスタンダードなHDMI端子。写真はAmazonベーシックのHDMIケーブルです(画像はAmazon公式サイトより転載)

ミニHDMIコネクタ(タイプC)

ビデオカメラやノートパソコンでは、タイプA端子を装備するのが難しいため、より小型のミニHDMIコネクタ(タイプC)が使われています。

(Image:amazo.co.jp)

タイプCはタイプAに比べて、かなりコンパクトな端子になっています。写真はAmazonベーシックのHDMIケーブルです(画像はAmazon公式サイトより転載)

マイクロHDMIコネクタ(タイプD)

マイクロHDMIコネクタ(タイプD)は、ミニHDMIコネクタ(タイプC)よりもさらに小型の端子。一部のスマホやタブレット、デジタルカメラなどで使用されています。

(Image:amazo.co.jp)

スマホやタブレット、デジカメなどで使われているのが、もっとも小さいタイプD。写真はサンワサプライのKM-HD23-10Kのものです(画像はAmazon公式サイトより転載)

長すぎるHDMIケーブルは要注意!

HDMIケーブルは、ケーブルが長くなるほど信号が減衰してエラーが起きやすくなります。

1〜2mならまったく問題ありませんが、5mを超えてくるとノイズが出ることもあるので、あまり長すぎるものは避けたほうがいいでしょう。

どうしても長いケーブルが必要な場合は、光ファイバー製のHDMIケーブルがオススメです。

これは、HDMIの信号を光信号に変換して送信できるため、ケーブルが長くても信号の減衰が少なく、安定した信号の伝送が可能になります。

ただし、接続する機器の接続方向の指定がある場合がありますので、どちらの端子をテレビ側に接続するかは注意が必要です。

●Amazon「Amazonベーシック 光ファイバーケーブル HDMI ハイスピード 18 Gpbs 4K/60Hz 約15.2m」は→こちら(Amazon)

(Image:amazo.co.jp)

こちらはAmazonベーシックの光ファイバー製HDMIケーブルで、15m以上の長さがあります。ただし、接続方向の指定があるので注意してください(画像はAmazon公式サイトより転載)

まとめ

いかがでしょうか? 映像や音声を伝送できるHDMIケーブルの見た目はどれも同じなのに、実はさまざま規格があることがお分かりいただけたでしょう。

HDMIの規格は20年以上前からあるので、もしかするとかなり古い規格のケーブルを使っているかもしれません。

もちろん、フルHDのテレビを見るだけなら、古いHDMIケーブルでも問題はありませんが、4KテレビにPS5やULTRA HD Blu-rayなどを接続するには力不足ですので、HDMIケーブルの規格には十分注意したほうがいいでしょう。

すずきあきら
編集・ライター。パソコン通信時代からネットワークに接しWi-Fiやインターネット、SNSなどに精通。30年に渡って、パソコンやスマホ関連のムック本や雑誌記事を手がけてきた大ベテラン。最近は格安SIMなどのケータイ料金やアプリ、通信費全般の記事を執筆することが多い。

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