初めて新幹線に乗った日のことを、皆さんは覚えているだろうか。東京~新大阪間を結ぶ東海道新幹線が開業したのは、今から半世紀以上前の1964年のことだ。筆者が初めて新幹線に乗ったのは、たしか小学生の頃だったように思う。基本は地元の在来線か、親の車に乗せられて目的地へと移動することが多かった筆者にとって、新幹線は夢のような乗り物だった。あのツルンとしたフォルムの車体がホームへと入ってきた時、まるで宇宙旅行にでも行くかのようなワクワク感を覚えたことを、今でも鮮明に思い出せる。
2022年3月23日にkobaton(@_kobakashi_)さんが投稿した「家にあるE6系新幹線の座席に座ってウキウキしながら夕飯食ってる夫婦は少ないと思う」というツイートには、自宅の和室に設置された本物の新幹線の座席の写真が添えられており、瞬く間に2万件を超える「いいね」がついた。
今回は、E6系新幹線の魅力とともに、kobatonさんのツイートに寄せられた様々な反応をご紹介していきたい。
E6系新幹線とは?
普段から写真や模型が好きで、ジオラマ作りが趣味のkobatonさんは、ある日、自宅の和室にE6系新幹線の車内を再現することに成功。
E6系新幹線とは、新幹線と在来線を乗り換えなしで結ぶ「新在直通運転」を行っている秋田新幹線用の車両である。E6系の普通車の内装デザインは、実り豊かな秋田の大地をイメージして作られているそうだ。新幹線の通路を田んぼの中の一筋のあぜ道に見立て、鮮やかな黄金色の腰掛シートは、豊かに実った稲穂を表現。車内の通路や、各車両を繋ぐドアの部分には、稲穂のイラストまでもが描かれており、かなり凝った作りの内装となっている。
また、ボディに鮮やかな赤色が入っているE6系は、2013年にお披露目されるや否や、鉄道ファンの心を鷲掴みにしたらしい。
そんなE6系新幹線の本物の座席を手に入れたkobatonさんは、さっそく自宅の和室の一角に、ホームセンターで購入した木材を組み合わせ、新幹線の床をDIY。もちろん、ベニヤ板むき出しの状態ではなく、キチンとE6系に近い床の色のクッションフロアも貼り付けるなど、丁寧な仕事ぶりを発揮したkobatonさん。仕上げに別途購入した新幹線の窓のパネルを真横に設置すると、自宅に居ながらにして、秋田新幹線「こまち」の車内にいるかのような光景が目の前に広がったのだった。
リプライ欄には、「自分も新幹線の座席を購入した」という声が多数寄せられ、次々と個性豊かなマイ座席の写真がアップされた。中には、「自分は新幹線ではなく、飛行機の座席を買った」という声もあり、乗り物の座席がわりと簡単に手に入るということを初めて知った筆者は衝撃を受けた。
マイ座席はどこで買える?
そもそもこの座席、一体どこで売っているのだろうか。kobatonさん曰く、こちらのE6系新幹線の座席は、JRE MALLというJR東日本グループが運営する、ネット通販とエキナカ受取機能を備えたショッピングモールで購入できるらしい。
筆者もさっそくJRE MALLで「座席」と入力して検索してみると、たしかに新幹線の中古座席が一般向けに販売されている商品として、続々と出てきたのである。しかし、商品ページはいくつかあるものの、実際に買おうとすると、筆者がチェックした座席はすべて1か月ほど前に販売期間が終了した旨が掲載されていた。もしかすると、この新幹線の座席は、タイミングの良い人のみが買えるお宝アイテムなのかも知れない。
この記事を読んで、「うちにもひとつ、新幹線の座席が欲しい!」と心の少年が暴れ出した方は、ぜひ毎日このJRE MALLをチェックしてみることをオススメする。運が良ければ、マイ座席をゲットできるかもしれない。
愛ゆえに新幹線!
kobatonさんの家のE6系の座席も、はじめは2つの座席が横に並んだ1セットのみだったらしい。たまたま再版されていたのに気づき、2セット目をお迎えすることが出来たそう。前後に並べることで、普通の新幹線よろしく前の座席に設置されている、折りたたみ式テーブルも使えるようになり、今回のツイートの写真に至ったわけである。
写真に写っているテーブルの上には、美味しそうな奥さんの手料理が並んでおり、「自分、今日なに食べたっけ……?あ、吉牛か……。」というような、常日頃から荒んだ食生活を誇る筆者の日常とは比べものにならないぐらい、幸せそうな光景が広がっている。
ちなみに、kobatonさんと奥さんの馴れ初めは、大学の友人の紹介がきっかけだそうだ。こんなにも息の合った二人を引き合わせた大学の友人は、もはやグッジョブとしか言いようがない。共通の趣味が楽しめる夫婦というのは素敵だなぁと思ったが、実はkobatonさんの奥さんは特に鉄道好きというわけではないらしく、2セット目の座席が届いた時には若干あきれ気味だったそう。それでも、こうして二人で仲良くお家新幹線ディナーがエンジョイ出来ているのは、奥さんのkobatonさんへの愛ゆえであるに違いない。
この記事の執筆中に感化された筆者は、さっそく恋人の趣味である「廃墟巡り」に目を付け、「同行したい!」、「キミと同じ景色が見たい!」と持ち掛けてみたが、廃村・廃墟には気ままにソロで行くのがオツらしく、秒で断られた。筆者にとっての恋愛は、タイミングよくJRE MALLで座席を買うのと同じぐらい難しいようである。
※サムネイル画像(Image:「kobaton(@_kobakashi_)さん」提供)