皆さんは、「ボットン便所」という落下式便所をご存じだろうか。正式名称は「汲み取り式便所」といい、排泄物を便器下の便槽に貯留し、定期的に人力あるいは機械によって汲み取るスタイルの便所のことである。水洗トイレが広く普及した令和の今、このボットン便所と呼ばれるトイレは、意図的に探す方が難しいかも知れない。
2022年3月24日に投稿された、M@m_t_u_mさんの「ボットン便所がわかる若い世代の人って今の時代に居る…?幼少期にいつも自分が落ちてしまうかもしれない恐怖と闘いながら生き抜いた戦士はおられるか?」というツイートには、瞬く間に1万件を超える「いいね」がつき、多くの人の反響を呼んだ。
今回は、トイレの歴史を振り返りながら、実際にボットン便所の恐怖と戦った歴戦の勇者たちからのコメントをご紹介したいと思う。
意外と知らないトイレの歴史!
冒頭でも軽く触れさせてもらったが、「ボットン便所」とは、昔ながらの汲み取り式便所のことである。日本最古のトイレは縄文時代にまで遡り、当時は排泄物を直接川に流す「川屋」と呼ばれるものが存在したそうだ。ちなみにこの「川屋」という名称は、「厠」の語源にもなっている。その後、鎌倉幕府が麦の二毛作を奨励して以降、糞尿はすべて貴重な肥料扱いとなり、件の汲取り式のボットン便所が誕生したらしい。
便器の形や素材こそは時代とともに変わっていくものの、浄化槽や下水道が本格的に整備され始める大正時代の初めごろまでは、トイレと言えばボットン便所が主流だった。昭和30年代から、徐々に一般家庭でも水洗式便所が普及し始め、今や都内では水洗式のトイレがほとんどになったが、今もなお田舎ではボットン便所を見かけることもある。
あつまれ!ボットン戦士たち!
ちなみに筆者は平成初期の生まれなのだが、小学生の頃に林間学校で宿に泊まった際、初めてボットン便所というものを目にし、その構造と強烈な臭いにカルチャーショックを受けた。どう頑張っても、使用時には必ず真っ暗な穴と対面する羽目になる構造なので、投稿者のMさんが、自分と同じくボットン便所の恐怖と戦っていた仲間を「戦士」と呼びたくなる気持ちは痛いほどよく分かる。
ご紹介したMさんのツイートが投稿されるや否や、リプライ欄には「高校生の頃まで実家がボットン便所だった」との声や、「近所の公園がボットンだった」、「家も学校もボットン便所だった」などの意見が多数寄せられ、意外にもボットン戦士は身近に大勢いたことを知る結果となった。中には「今の家がボットン便所です」とのコメントや「うちは洋式のボットンです」などの投稿もあり、ツイッターユーザーの中にも現役のボットン戦士が複数存在することが判明したのである。
また、リプライ欄に寄せられたコメントのひとつに、「ボットン便所は大きく分けて2種類ある」という内容のことが書かれており、Mさんは「ボットン便所にも2パターンあると知って驚いています…」と続けた。
筆者も気になって調べてみたところ、どうやらボットン便所には、便器の種類が2パターンあるようなのだ。どちらも和式スタイルなのだが、穴の大きさが便器の半分ぐらいのものと、ほぼ便器と同じ大きさのものがあるらしい。後者の穴の場合、小さな子どもであれば落ちてしまうほどのサイズ感である。
また、穴のサイズが半分ぐらいの場合は、便器から筒状の管を通り、排泄物が下に落ちていくといった構造だが、便器と同じサイズの穴があるトイレの場合は、肥料として貯めておく貯蔵庫としての機能も兼ね備えているため、穴の真下に広い空間が広がっているらしい。筆者が子どもの頃に見た便器は、そこまで大きな穴ではなかったが、用を足すたびにトラウマになりそうな便器が存在していたことに、ただただ衝撃を受けた。
上級編!?ボットン便所のマメ知識!
さて、この記事を書くにあたって色々と調べた結果、ボットン便所について異様に詳しくなってしまったので、最後に読者の皆さんへ、使い道皆無な「ボットン便所のマメ知識」をお届けしたい。
筆者はずっと、「ボットン便所」と名の付く便所は、全て汲み取りなのかと思っていた。しかし、中には「トンネル式便所」と呼ばれている、水洗式のボットン便所も存在するそうである。便器の見た目は、通常の汲み取り式ボットン便所と変わらず、同じように恐怖の穴があいており、便器の種類も半穴タイプと全開タイプの2種類だ。ひとつだけ違うのは、真下にある水管に常時水が流れるようになっているということである。
別名で「水洗ボットン」と呼ばれているこちらの便所は、汲み取り式のボットン便所よりも、さらにレアな存在となってしまったようなので、ぜひ田舎のトイレに行く機会がある人は探してみて欲しい。仮に「水洗ボットン」を見つけたところで何だという話だが、ステータスが「ただのボットン戦士」から、若干文明が進んだ「水洗ボットン戦士」へとレベルアップ出来るかも知れない。編集部では、新たな戦士の誕生を期待している。
※サムネイル画像は(「写真AC」より引用)