昭和の面影を残すノスタルジー溢れる雰囲気を、人は『昭和レトロ』と呼ぶ。昭和の時代に実際に使われていた家電や建物、ちょっとした看板なんかは、何とも言えない趣があり、令和の今もなお多くの人を魅了してやまない。2000年代生まれの若い世代でも、この「昭和レトロ」は根強い人気で、インスタントの使い捨てカメラなどが再ブームとなっている。
2022年3月27日に投稿された、えぬびい*変わる廃墟展3/11〜4/3*@enuenuenubiさんの「久々に行った中古タイヤ市場相模原店に超スゴイ自販機追加されていた…!なんとダイヤルを回して100円を入れると出てくる!こんな機種があること自体初めて知ったぞ。感動だ。多幸感に満ちている…俺はまだ生きていける…!」というツイートには、瞬く間に4万件を超える「いいね」が押され、Twitter上で大きな反響を呼んだのだった。今回は、えぬびいさんが思わず感動したダイヤル式自動販売機の詳細と、リプライ欄に寄せられたさまざまな声をご紹介したい。
久々に行った中古タイヤ市場相模原店に超スゴイ自販機追加されていた…!なんとダイヤルを回して100円を入れると出てくる!こんな機種があること自体初めて知ったぞ。感動だ。多幸感に満ちている…俺はまだ生きていける…! pic.twitter.com/Z5knscj8tV
— えぬびい✴︎変わる廃墟展3/11〜4/3✴︎ (@enuenuenubi) March 27, 2022
ダイヤル式自動販売機とは?
ダイヤル式自動販売機とは、飲みたいドリンクにダイヤルを合わせて硬貨を投入すると、取り出し口から指定した商品が出てくるという昭和の自動販売機である。取り扱っている商品は、お馴染みの『コカ・コーラ』や『ファンタグレープ』などだが、ペットボトル飲料が普及した今となっては少し珍しい、瓶入りタイプの清涼飲料水が出てくるのだ。そのため、自動販売機の中央には、瓶の蓋を開けるためのボトルオープナーが設置してある。
ちなみに、日本で清涼飲料水用の自動販売機の製造が本格的に始まったのは、昭和37年のことだ。昭和42年に、100円・50円新硬貨が発行されたことが、自動販売機の普及を加速させたと言われている。
今回、えぬびいさんが見つけたダイヤル式の自動販売機を見たTwitterユーザーたちからは、「まさか稼働していたとは!」との声や、「これは懐かしい!!昔、よく通っていた映画館やボウリング場に置いてあった」「瓶の王冠を開ける所がスタルジーですね」などのコメントが寄せられた。
ロゴから製造年代を探ってみた
さて、こちらのダイヤル式自動販売機だが、実際に使用されていた年代がいつ頃なのか気になったので、筆者も可能な限り調べてみたのだが、これといった詳しい情報は得られなかった。自動販売機には、一応日本語での説明書きが添えてあるが、『SELECT DRINK FIRST』や、『COIN RETURN』の文字がプリントされているので、恐らく海外で使われていた自動販売機である可能性が高い。
Twitter上では「懐かしい」との声も多数上がっていたので、海外で作られたこのダイヤル式自動販売機は、どこかのタイミングで日本に輸入されるようになり、オシャレ雑貨兼実用的な販売機として、当時の若者が集う場所を中心に設置されていたのかも知れない。
目立つところに大きく描かれた『7UP』のロゴが特徴的な自動販売機だが、実は『7UP』のロゴは、時代とともに何度か刷新されている。
「影の付いたフォント」かつ「輪郭が縁取られていない泡」というタイプのロゴを使用していた年代から察するに、恐らく1937年~1946年の間に製造された自動販売機なのではないだろうかと筆者は睨んでいる。もう少し詳しいことが分かればいいのだが、筆者の探偵能力の限界はここまでなので、後は皆さんが実物を見に行って直接確認して欲しい。
ちなみに7UPとは書いてあるが、7UPの日本での製造は2021年に終了してしまったようなので、ダイヤルを合わせるラインナップの中に7UPはないようである。
「エモい」とは、こういうことか!
こういったレトロな自動販売機が、現役で稼働しているのを見るのはとても楽しい。当時を知らない人でも、何となく胸に来るものがあるのではないだろうか。
初めて接するのに懐かしく、不思議と心が満たされるような、良質なセンチメンタルに襲われる感覚は、若い人の間で「エモーショナル:感情的」を語源として誕生したスラング「エモい」という言葉としてたびたび表現されるが、「若者が使っているスラングは、なんだか難しくて、よく分からないから苦手だ」という人も多いかも知れない。しかし、今回ばかりは、このダイヤル式自動販売機を見た皆さんの心の動きこそが、まさに「エモい」という感覚の代表例なのではないだろうかと思う。
※サムネイル画像(Image:「えぬびい✴︎変わる廃墟展3/11〜4/3✴︎(@enuenuenubi)さん」提供)