「廃墟」という言葉を辞書で調べると、「建物・市街などの、荒れ果てた跡」と記されている。
だが、toshibo|変わる廃墟展2022 4/9-4/24さん(@JIYUKENKYU_jp)のツイートを見てほしい。
もはや荒れ果てた跡どころではなく、壮大な魔窟である。
現実離れしている異常な建物の様子にただただ驚き、遠い異国の写真のように思えるが、なんとこの写真の撮影地は鬼怒川温泉だというのだから、驚き度200%増しである。
新宿駅から特急電車で200分もかからない鬼怒川温泉に、この廃墟は存在しているのである。
狭いと思っていた日本だが、まだまだ知らない場所が多い…。
巨大な廃墟の正体
toshibo|変わる廃墟展2022 4/9-4/24さん(@JIYUKENKYU_jp)のツイートによると、この写真に写っている建造物すべてが一つの旅館だったということだ。
なんとも巨大な廃墟であるが、もともとはどんな建物だったのだろうか。
リプライ欄のコメントによると、この廃墟は「きぬ川館本館」というホテルであったことが確認できる。
きぬ川館本館は、1942年に開業した地下1階・地上9階建ての建物。
部屋数は70室あり、別館を増築するなどして団体客に特化した経営を行っていたが、1999年に倒産。
鬼怒川温泉では最初に廃業したホテルという、不名誉な称号を持つホテルなのである。
巨大な廃墟爆誕の理由
このきぬ川館本館は、倒産後に経営陣が逃亡し、現在は所有者行方不明扱いであることから、廃墟と化してしまったとのことである。
リプライ欄にも「取り壊さないんですかね?」「なぜこの場所を復元できないのですか?」などの意見が相次いでいるが、日本の法律上、所有者不明の土地の扱いは、非常に難しい。
なんと現在の日本では、九州地方以上の面積が、所有者不明の土地とされている。
やはり日本は広い。
この所有者不明土地の問題を解消しようと、2021年4月には新しい法律が公布され、2023年4月以降には段階的に施行されていく予定である。
だが法律上の問題をクリアしても、このきぬ川館本館の廃墟がそうそう簡単になくならないであろう最大の理由は「お金」だ。
増改築が繰り返されたうえに、川に面した崖の上に立つ立地が災いして、きぬ川館本館の解体費用は5億とも10億ともいわれている。
これだけの金額を一つの温泉町や一つの県が負担することは、相当難しいと思われる。
もはや建築した時よりも、壊す方がお金がかかるのではないかというレベルである。
リプライ欄で相次ぐ「見てはいけないもの」探し
またリプライ欄で指摘が相次いでいるのが、toshibo|変わる廃墟展2022 4/9-4/24さん(@JIYUKENKYU_jp)の写真を拡大してみると、なんだか見てはいけないものが見える…という点だ。
たしかに不明瞭ではあるが、サルらしき顔が見えたり、フクロウのような影が写っていたり、「ひょっとしてこの廃墟の中には動物王国が存在しているのだろうか」という状態である。
1999年に倒産し、2005年までは管理会社が存在していたきぬ川館本館。
完成から80年という年月の影響も大きいであろうが、人の手が15年ほど離れると、建物はこうなってしまうらしい。
自宅ももう少しちゃんと手入れしなくてはと思わせてくれる廃墟である。
なお、「以前近くに宿泊した際、中で動く人が見えた」や、「誰かが覗いてる!」などといったコメントも見受けられるが、廃墟への侵入は非常に危険であり、軽犯罪法や刑法に問われる違法行為であるので、絶対にやめていただきたい。
「ゾワッとする感じがたまらない」「廃墟にどうしても惹かれてしまう」との意見も相次いでいるが、くれぐれも廃墟内には侵入せず、近隣で営業中の「鬼怒川温泉 あさや」や「鬼怒川公園」からの鑑賞をお勧めする。
廃墟は、諸行無常の美しさを外から眺めるために存在しているのであって、中に立ち入るためには存在していない。
不法侵入、ダメ、ゼッタイ。
なお、toshibo|変わる廃墟展2022 4/9-4/24さん(@JIYUKENKYU_jp)のツイートでは、鬼怒川以外の廃墟の写真も堪能できる。
そのほかにもユーチューブチャンネルやインスタグラムで自宅にいながら廃墟を眺めることができるほか、写真集も刊行されているとのことである。
また9日より名古屋で写真展を開催するとのことなので、ぜひこちらのチェックもお忘れなく。
※サムネイル画像(Image:「toshibo|変わる廃墟展2022 4/9-4/24(@JIYUKENKYU_jp)さん」提供)