皆さんはパソコンで文書を作成する機会は多いだろうか。Wordなどのワープロソフトには、文章を書く上での便利な機能が最初から入っているので、使い方さえ覚えてしまえば、手書きの何十倍も楽に文書を作成できる。しかし、便利な機能にも思いがけない落とし穴があるので、使い方には気を付けなければいけない。
2022年5月19日に投稿された、筒井.xls@Excel関数擬人化マンガを描く経理@Tsutsui0524さんの、
A「この文書、甲と乙が全部逆になってる」
B「すぐ直します!甲を乙に置換!!」
A「まてェ!!!」
……というツイートには、瞬く間に3.9万件以上の「いいね」がつき、多くのツイッターユーザーたちからの反響を呼んでいる。
今回は、このツイートに関する詳細と、ツイッター上に寄せられたさまざまなコメントを皆さんにご紹介したい。
「置換」の機能でありがちなミス!
「甲」と「乙」をすべて逆に書いてしまったというのは、結構珍しいタイプのミスな気がするが、入社したての新入社員や、普段からあまり甲乙の表記を使わない人であれば、こういった間違いをすることもあるかもしれない。英語の契約書では、登場人物を単純な記号に置き換える「甲」「乙」のような表記方法は見たことがないので、これは日本独特の文化である。
では、すべて逆になっていたとして、どうして「置換」を使って修正してはいけないのだろうか。筆者も一瞬気が付かなかったが、勘のよい読者の皆さんならすぐにわかったかもしれない。
このツイートの言いたいことをわかりやすく説明すると、そのまま文書内の「甲」を「乙」に置換してしまうと、最初からあった「乙」の表記と混ざってしまい、すべての登場人物が「乙」になってしまうのだ。次のステップとして、「乙」を「甲」に置換しようとしても、文書内には「乙」しかないので、次はすべてが「甲」になってしまう。
つまり、このやり方で置換すると、最終的には契約書に登場するすべてが同一人物という、意味不明の書類ができ上がってしまうというわけだ。
このツイートを見たツイッターユーザーたちからは、「誤って置換してもCtrl+乙で直せますよ」と、元に戻すためのショートカットキーを教えてくれる優しい声や、「一文字変換するなら、念のため、まずは、全検索で0ヒットを確認してから。人名に早乙女や甲田があるかも」など、思いがけないところに「甲」や「乙」の漢字が使われていないかもチェックするようにとのコメントが相次いだ。
この場合はどうすればいいの?
では、Wordの置換機能を使用して、「甲」と「乙」を逆にしたい人は、どのような動作をすればいいのだろうか。筆者のオススメは、ひとまず「甲」を「A」に置き換え、次に「乙」を「B」に置き換える。そして、「A」を「乙」にし、「B」を「甲」にするやり方だ。
別に「A」や「B」にこだわりがあるわけではないので、「1」や「2」に置き換えても大丈夫である。なんでもいいのだが、自分が置換する際にわかりやすい記号がオススメだ。
ツイッター上では、「①甲→丙 ②乙→甲 ③丙→乙」とすれば、3回の置換で「甲」と「乙」を逆にできるという意見も紹介されている。なるべく置換の手数を少なくしたい人にはオススメだが、先ほどのやり方よりも少しややこしくなってしまうので、いきなり「甲」を「乙」にすべて置換するようなうっかりさんは、4行程使って丁寧に置き換える方が無難かもしれない。
甲乙には序列がある?
「甲」「乙」の表記は、中国で暦を表すために使われた「十干」というものに起源があり、「甲」「乙」「丙」「丁」「戊」と続いていく。先ほど出てきた「丙」というのは、登場人物が3人以上の契約書で、たびたび使用される表記である。
比較する2つに優劣をつけることが難しいことを「甲乙つけがたい」と表現するように、「甲」と「乙」は優先順位の高さや、ランクの高さなどを示すために用いられる場合もあるそうだ。契約書の表記では基本的に「甲」と「乙」に優劣はないと言われているが、順番でいくと「甲」は「第一」、「乙」は「第二」という意味があるので、「甲」のほうが「乙」よりも上位であると捉えることもできる。
登場人物の区別を付けるために割り振られる「甲」「乙」の記号だが、人によっては意味のある符号になることもあるので、使用する際にはそれなりに注意が必要かもしれない。
※サムネイル画像は(「photoAC」より引用)