いつの時代も他人をだまそうとする悪い人間はいるものである。悪質な個人のうそから、凶悪な組織犯罪まで、一般的に「詐欺」と呼ばれるものの範囲はかなり幅広い。あるコンビニ店舗では、買い物に来たお客さんが詐欺の被害に遭わないようにと、とある秀逸な詐欺対策を行っているという。
2023年11月8日に投稿された、shao as a service@shao1555さんの「コンビニのPOSAカード売場に、未納料金やウイルス除去費用を支払えるカードが登場した。頭いいw」という書き込みには、ある1枚の写真が添えられていた。この投稿には、なんと1.8万件を超える「いいね」がついており、インターネット上で大きな話題となっている。
今回は、こちらの投稿に関する詳細を皆さんにご紹介します。
架空請求詐欺を未然に防ぐための「フェイクアイテム」
投稿された写真には「電子マネーを購入の方で、未納料金の支払い ウイルス除去費用の支払いの方はこのカードをレジまでお持ちください」と書かれた案内ポスターとともに、「ウイルス除去費用の支払い」「未納料金の支払い」と記載された黄色いカードが、コンビニのPOSAカード売場の一角に陳列されている様子が写し出されている。
カードは2種類とも、目が痛くなるほどに鮮やかな黄色の背景で、文字は赤色かつ太字に強調するという、まるで、なんらかの注意喚起や警告を発しているような、かなり特徴的なデザインだ。
黄色いカードの裏面をめくると、そこには「お客様は架空請求詐欺の被害に遭っている可能性が高いため110番してください 赤羽警察署」との文字が書かれている。
もう読者の皆さんもお気づきかもしれないが、実はこの黄色いカード、架空請求詐欺を未然に防ぐためのフェイクアイテムなのだ。
パニックになっていると人は、正常な判断ができない
本来、未納料金やウイルス除去費用の支払いに、この手の電子マネーは必要ないのだが、パニックになっていると人は正常な判断ができないものである。詐欺に遭い、自分の置かれている状況がきちんと理解できないまま、電子マネーを購入させられそうになっている方も中にはいらっしゃるので、事態の解決を提案できる店員まで、同じくカードを使って誘導するというフローはかなり優秀なのではないだろうか。
この投稿を読んだネットユーザーたちからは、「うちの近場にも似たようなものが入荷していました!」と、POSAカード売場に同種のカードが陳列されていた様子を画像付きで報告する声や、「これはよいアイデア! 動揺している場合や、自分はだまされていないと思っている場合は文字で警告するより、このように誘導してあげた方がよいかも!」と、人の心理をうまくついた誘導方法に秀逸さを感じたとの声など、さまざまなコメントが返信欄には寄せられている。
中には「けっこうな数の人が今まで支払っていたんやろうな」といった声もあり、詐欺に引っかかる人が増えたことで、こうした対策が取られるようになったのだろうと推測する声もあがっていた。
地域の警察署が主体となって、こうした取り組みを行っている
悪いことを考えて実行に移す人は、いつの時代も後を絶たないが、起きなくていい犯罪を少しでも食い止められるように、警察も知恵をしぼって日夜活動を続けている。カードの裏面に管轄地域の警察署名が記載されていることから、コンビニではなく警察が主体となって、こうした詐欺被害防止の活動に取り組んでいる地域もあるのだろう。
以前、筆者もボランティアで警察の手伝いをしたことがあるのだが、地域のお祭りやイベントなどで配布する啓蒙チラシなどは、どれも警察署の職員が手作りしたものが多かった。今回のカードも、きっと手作業で作成したものだろうと思うと、仕事とはいえ警察署の方々には頭の下がる思いである。
コンビニのPOSAカード売場に、架空請求詐欺の被害を未然に防ぐことを目的としたフェイクのカードが置かれていることを紹介した今回の投稿。こうしたカードは、まだ一部地域のコンビニにしか置かれていないが、ぜひ全店舗に設置を検討してほしいものである。
※サムネイル画像(Image:「shao as a service(@shao1555)」さん提供)