「稼いでいる」というイメージの強いYouTuber。YouTubeの広告収入単価は具体的には公開されていませんが、1再生あたり約0.05円~0.7円と言われています。単価はジャンルによって異なりますが、基本的に再生回数が伸びれば伸びるほど、その分動画に収益が支払われます。
派手なお金遣いも目立つYouTuberですが、一方で昨今、チャンネル投稿者数100万人超のYouTuberグループが解散したり、メンバーが脱退する事象も目立ちます。また最大手YouTuber事務所「UUUM」の赤字も記憶に新しいところです。
(画像引用元:UUUM公式サイト)
最近のYouTuber事情は単に「チャンネル登録者数が多ければ安定」というわけではないようです。今回はそのようなYouTubeの「広告収入」について解説します。
【通常動画】YouTubeの広告収入の目安 | 人気YouTuberも0.3円~0.5円前後
YouTuberがどの程度広告収入を受け取っているか口外することはタブー化されていますが、一般的に広告収入の単価は1再生あたり約0.05円〜0.7円と言われています。
そんな中、YouTuberで格闘家のシバターさんが2022年6月4日に自身のチャンネルに投稿した「オワコンな俺の収益を発表します」という動画の中で、前月のYouTubeの広告収益について明かしました。
なお、シバターさんはメインチャンネル「PROWRESTLING SHIBATAR ZZ」のほか、サブチャンネル「パチンコ・パチスロ日本代表ch」も運用しています。
ユーチュラによると、シバターさんの2022年5月の動画再生回数は、メインチャンネルが338万回、サブチャンネルが68万回。つまり、メインチャンネルの単価は0.31円、サブチャンネルの単価は0.5円となっています。
シバターさんのメインチャンネルは炎上した芸能人をネタにした「〇〇を救いたい」という炎上しがちな動画が多い一方、サブチャンネルはほとんどがパチンコ・パチスロの動画で、専門性が高く、広告主にとって「広告を出しやすい」仕上がり。再生回数の高いメインチャンネルの方が収益的には高くなっていますが、再生回数あたりの単価で考えると、専門的なサブチャンネルの方が収益率が高いようです。
ちなみに、シバターさんは2023年8月6日に公開した動画の中では自身の収益についてメインチャンネルとサブチャンネル合わせて収益が「70万円」と発言し、YouTubeの広告単価が過去最高レベルに悪くなっているとも述べています。
70万円という数字だけを見ると、確かに「広告単価が下がっている」ように見えるかもしれませんが、そうではありません。
ユーチュラ調べでは、シバターさんの2023年7月の動画再生回数はメイン・サブを合わせて合計215万回。2022年5月時点と比べ、再生回数が半減。つまり広告単価はそのままで、再生回数が下がっている形です。通常動画の1再生当たりの広告単価自体は2022年も、2023年も横ばいです。
ただし短い尺の動画やショート動画に、2022年時点よりも人が流れやすくなったという側面はあるでしょう。ショート動画の収益についてはより詳しくは後述します。
短い尺のチャンネルには逆風 | 人気チャンネルでも推定0.1円~
シバターさんの動画はメインチャンネル、サブチャンネルともに基本的には「8分以上」のものが多く、長尺であるという特徴があります。シバターさんのチャンネルと比較して、より短い動画が多いチャンネルには非常に強い逆風が吹いています。
動画の中でヘライザーさんは、「38万回再生」の動画の収益について、シバターさんでいうところの「バナナ」を「りんご」に例え、「5個分」と表現。「1りんご=1万円」単位なので、収益は1再生あたり0.13円となり、月間再生回数と掛け合わせると68万円ほどの広告収益となります。
広告収益だけを見ると、やはり「3分の1以上も減少する」のは非常に痛手。長い動画の方が基本的にはやはり有利です。
なお上の試算は、スパチャなど広告以外の収益は考慮していません。上の試算はあくまで試算であり、実際のチャンネルの総収益を示すものではないためご注意ください。
【ショート】YouTubeの広告収入の目安 | 1再生当たり0.005円~0.01円
YouTubeショート動画は、60秒以内の短い動画を作成したり視聴できる機能です。
YouTubeの通常動画の再生単価を0.3円とした場合、30分の1以下の単価であり、非常に単価が低いのが現状です。ショートの収益についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
UUUMは「YouTubeショートショック」に直面
先述した通り、UUUMは2023年5月期決算で過去最大の赤字を出し、大きな話題に。クリエイターの流出も相次いでいます。
その原因となったと言われているのが、「YouTubeショートショック」。これはZ世代には短い動画が好まれる一方、前述の通り「通常動画の30分の1」などと単価が低いために大幅に収益がダウンしてしまったというもの。ショート動画が伸びてクリエイターの知名度が上がっても、通常動画に繋げられず、「利益にならない」というジレンマに陥ってしまいました。
【通常動画】YouTubeの収益化の条件 | 登録者や再生時間の壁がある
なお、YouTuberが広告収入を得るには、そもそもある一定の条件を満たす必要があります。
もっとも有名な条件は「登録者1000人以上」というものですが、実は再生回数にも条件が課されています。
一部の国では収益化の要件が大幅緩和
2023年6月、YouTubeは収益化の条件を大幅に緩和すると発表しました。具体的には、
・チャンネル登録者数1000人→500人
・総再生回数4000時間→3000時間
・ショート動画視聴回数1000万回→300万回
しかし、2023年8月初旬時点で、この条件は日本では未適用。条件緩和はアメリカ、イギリス、カナダ、台湾、韓国から展開されるとのことです。
YouTubeショートの収益化の条件は?
2023年8月現在、YouTubeショート動画を収益化するためには以下の条件を満たす必要があります。
・チャンネル登録者数 1000人以上
・過去90日間のショート動画の総再生数が1000万回以上、あるいは、直近12カ月間の公開動画の総再生時間が4000時間以上
・投稿した動画がクリエイターのオリジナルなものであること
チャンネルが YouTube のチャンネル収益化ポリシーとコミュニティ ガイドラインに違反していなければ収益化が可能です。
詳細は以下の記事でも解説しています。
h 広告収入の収益性が高いYouTubeチャンネルの特徴/ポイント
広告収入の収益性が高いYouTubeチャンネルの特徴は以下の通り。
・ターゲットが明確
・「8分以上の動画」が中心
・チャンネル登録者数の数と質が高い
ターゲットが明確である
前述したシバターさんの場合、自身のトークや他のYouTuberとのコラボ動画を出しているメインチャンネルよりも、パチンコ・パチスロに絞ったサブチャンネルの方が単価が高いです。
現在、人気YouTuberの多くがサブチャンネルを持っています。メインチャンネルよりも登録者は少なくとも、ジャンルを絞ったサブチャンネルは、むしろメインチャンネルよりも効率的に稼ぐことができるようです。
「8分以上の動画」を中心にする
2023年8月現在、YouTubeのミッドロール広告(動画の途中に流れる広告)を入れる動画の条件は「8分以上」となっています。
つまり、8分未満の動画よりも8分以上の動画の方がより広告収入を得ることが可能。そのため、2023年現在のYouTubeでは8分以上の動画がトレンドとなっています。
チャンネル登録者数の数と質も重要
急激にチャンネル登録者数が伸びたYouTuberは往々にして「登録者数の購入」を疑われます。しかし、実態のないゴースト登録者数は実際の人気にも広告収入に寄与しません。
チャンネル登録者は数だけでなく、質も重要。きちんとしたファンがいることでメンバーシップやスパチャで収益を生むことも可能です。また、自社ブランドを立ち上げて販売したりイベントを開くといった、YouTubeの広告収入以外にも活動の展開も広げることができます。
まとめ | 広告収入以外の収益モデル/販路も広げていくのがトレンド
シバターさんの例からも分かる通り、単純な広告収入よりも企業案件の収益の方が効率的に稼ぐことができる様子。
加えて広告収入一つをとっても、単にチャンネル登録者数が多いよりは「特定の分野に特化しており、なおかつそこそこの登録者がいる」方が広告単価が高いと見られます。
また近年はショート動画がトレンドとは言われるものの、実際には長尺の動画の方が稼げるようです。ショート動画の影響力は良くも悪くも大きく、UUUMはYouTubeショートショックなどの影響で赤字に転落しています。
こうした背景もあり、多くのチャンネル登録者数を抱えていてもその活動をYouTubeだけにとどまらせず、グッズ制作や商品プロデュースなどさまざまなビジネスを展開しているYouTuberが続出しています。つまり、YouTuberがYouTubeの広告収入だけに依存するのはトレンドとして古くなっているようです。
「商品プロデュース」のもっとも記憶に新しい成功例は、HIKAKINさんが手掛けたカップラーメン「みそきん」でしょう。
HIKAKINさんの場合は「カップラーメン」でしたが、アパレル分野に乗り出すYouTuberも多いです。もっとも有名な例には、ヒカルさんが手掛けるReZARDが挙げられます。
今後のYouTuberは、YouTubeで集客を行ったあと、改めて立ち上げたサービスや製品に誘導していく形が主流になっていくのではないでしょうか。
※サムネイル画像(Image:Antika_zaa / Shutterstock.com)