「洋楽離れ」は本当に起きている? YouTubeの再生回数チャートから読み解く

2024年8月~9月にかけてはOasisの再結成や、新メンバーを加えたLINKIN PARKの活動再開など「洋楽」に明るい話題が目立ちます。一方で、国内の若者の間では「洋楽離れ」が進んでいるとも言われています。確かにK-POPの楽曲が国内のチャートを席巻する様子は目立ちます。しかし昨今、アメリカやイギリスのアーティストの楽曲がチャート上位に進出するケースは極めて稀ではないでしょうか。

そこで今回はYouTubeの再生回数チャートから「本当に国内で洋楽離れが起こっているのかどうか」「洋楽離れの現象は国内だけで起きているものか」を考察してみました。

日本のYouTubeチャートのTOP30に洋楽は何曲登場する?

国内の人気楽曲を集計したチャートには「Billboard」「Spotify Charts」など様々なものがありますが、今回はYouTubeの再生回数チャートを読み解いていきます。例として、2024年8月30日から9月5日の間にYouTube(国内)で人気の高かった楽曲を見てみましょう。

TOP10までの詳細は後ほどご紹介しますが、まずTOP3は以下の通り。

【1】こっちのけんと「はいよろこんで」
【2】Mrs. GREEN APPLE「ライラック」
【3】Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」

8月末~9月頭の時期は、イギリスのロックバンド・Oasisの再結成などが話題になっていました。しかし、TOP30どころかTOP100にもOasisを含む洋楽アーティストはランクインしていません。ちなみに冒頭で名前を挙げたLINKIN PARKも同様です。

なお日本以外のアーティストでは、やはりK-POPアーティストの躍進が目立ちます。

たとえば4位に韓国のアイドルグループ・LE SSERAFIM「CRAZY」がランクイン。また23位に同じく韓国のアイドルグループ・aespaの「Supernova」、30位にこちらも韓国のアイドルグループ・ILLITの「Magnetic」がランクインしています。

つまり「洋楽離れ」は起きているが、「K-POP離れが起きているわけではないし、外国語の曲自体が聴かれなくなったわけでもない」と言えそうです。

8月30日~9月5日のYouTubeチャートは国内・海外でどう違う?

参考までに同じく8月30日~9月5日のYouTubeのチャートを、国別で見ていきましょう。

・英国
・韓国
・日本
のチャートを比較すると「アジア圏の国ではアジアのアーティストがランクインし、英語圏では英語圏のアーティストがランクインしている」傾向が見えてきます。

8月30日~9月5日のYouTubeチャート(英国)

英国の8月30日~9月5日のYouTubeのチャートTOP10は以下の通りです。

【1】サブリナ・カーペンター「Taste」
【2】Benson Boone「Beautiful Things」
【3】イン・シンク「Bye Bye Bye」
【4】テディ・スウィムズ「Lose Control (Live)」
【5】シャブージー「A Bar Song (Tipsy)」
【6】サブリナ・カーペンター「Espresso」
【7】チェイス・アンド・ステイタス「BACKBONE」
【8】BL3SS & CamrinWatsin「Kisses (feat. bbyclose)」
【9】Myles Smith「Stargazing」
【10】サブリナ・カーペンター「Please Please Please」

2024年前半に世界的ヒットとなり、2024年9月現在も国内チャートでは上位のCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」がランクインしていないのが、国内の音楽リスナーにとってはやや驚きの点かもしれません。なお日本のアーティストだけでなく、韓国のアーティストもTOP10にはランクインしていません。

ちなみにアメリカのチャートでも、サブリナ・カーペンターやイン・シンクは上位にランクインしており「アメリカ」「イギリス」のチャートは比較的類似点があります。

8月30日~9月5日のYouTubeチャート(日本)

日本の8月30日~9月5日のYouTubeのチャートTOP10は以下の通りです。

【1】こっちのけんと「はいよろこんで」
【2】Mrs. GREEN APPLE「ライラック」
【3】Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」
【4】LE SSERAFIM「CRAZY」
【5】GEMN , 中島健人 & キタニタツヤ「ファタール」
【6】Snow Man「EMPIRE」
【7】Number_i「INZM」
【8】Mrs. GREEN APPLE「familie」
【9】Mrs. GREEN APPLE「点描の唄 (Live)」
【10】tuki.「晩餐歌」

8月30日~9月5日のYouTubeチャート(韓国)

韓国の8月30日~9月5日のYouTubeのチャートTOP10は以下の通りです。
【1】LE SSERAFIM「CRAZY」
【2】aespa「Supernova」
【3】NewJeans「Supernatural」
【4】QWER「고민중독」
【5】fromis_9「Supersonic」
【6】NewJeans「How Sweet」
【7】FIFTY FIFTY「Starry Night」
【8】DAY6「HAPPY (Live)」
【9】NMIXX「별별별 (See that?)」
【10】ILLIT「Magnetic」

日本人2名が所属するLE SSERAFIMや、日本のTV番組や夏フェスに度々出演しているNewJeansなど国内でもなじみ深いアーティストが多数上位であると言えるでしょう。そして韓国のチャートでも、英語圏で人気のサブリナ・カーペンターの楽曲は上位ではありません。

つまり、韓国でもいわゆる英語圏の「洋楽」は聴かれなくなっている可能性がありそうです。洋楽離れは日本だけの現象ではないと言えるかもしれません。

「英語圏」「非英語圏」での上位ランクイン楽曲に大きな差

8月30日~9月5日のYouTubeチャート(日本)で上位のアーティストは、こっちのけんと、Mrs.GREEN APPLEなど。同時期で韓国で上位のアーティストはLE SSERAFIM、aespaなど。そしてこれらのアーティストは、どちらも英国のチャートでは上位ではありませんでした。ちなみにアメリカのチャートでも上位ではありません。

たとえばLE SSERAFIMの楽曲がよく聴かれている地域はソウルやバンコク、プサン、日本では大阪など。つまりLE SSERAFIMは非英語圏のアジアを中心に人気があり、欧米では圧倒的な人気というよりは「認知が広がり始めている」段階に近しいと言えます。

逆に欧米で長らく人気を保っているアーティストであっても、アジア各国のYouTubeチャートでは上位にランクしていないケースが非常に目立ちます。

2024年8月30日から9月5日の間に特に世界的な話題となった「Oasis」の楽曲再生数などをベースに、もう少し詳しく国別の人気アーティストの違いなどを見ていきましょう。

8月27日に再結成を発表したOasisがランクインした国は?

先述した通り、この時期はイギリスの人気ロックバンド・Oasisが再結成を発表した時期でもあります。再結成が明らかになったのは2024年8月27日でした。

この時期にはYouTubeでも、Oasisの楽曲の再生回数が上昇。地域別に見るとロンドン、バンコクなどで上位となりました。

しかし、8月30日~9月5日のYouTubeチャート(韓国)ではOasisの「Don’t Look Back In Anger」が76位にランクインしているのみ。なお日本ではOasisの楽曲は100位までにランクインしていません。

8月30日~9月5日のYouTubeチャートでは、Oasisの楽曲はイギリスでは「Wonderwall」をはじめとする人気曲が上位にランクイン。一方で同じヨーロッパでも非英語圏であるフランス、ドイツなどでは楽曲はランクインしていません。

つまり少なくともYouTubeのデータを基に、あえてドライな見方をするとOasisの再結成で盛り上がっているのは「英国だけ」であるようにも見えます(※ビルボードなど他チャートでは別の傾向が見える可能性はあります)。

Oasisの楽曲は日本のYouTubeでどれくらい聴かれている?

もう少し長いスパンのデータも、見てみましょう。

日本のYouTubeチャートによると、Oasisは2023年9月4日~2024年9月4日の365日間で1,740万回再生されています。なおグローバルでは、上記期間中に5億3,500万回再生されています。

この数値は大きいのでしょうか、それとも小さいのでしょうか。同期間における、日本や韓国のアーティストと再生回数を比較してみましょう。同期間での再生回数の例を4組分、ご紹介します。

・LE SSERAFIM:同期間で2億2,500万回再生
・King Gnu:同期間で4億300万回再生
・スピッツ:同期間で1億5,100万回再生
・モーニング娘。:同期間で6,510万回再生

「国内のYouTubeでの再生回数」及び「8月27日の再結成発表後の日本のYouTubeチャート」をベースにすると、Oasisは「グローバルでの数値は大きいものの、国内での人気は決して高くはない」と残念ながら言えるかもしれません。

日本以外の国でも「アメリカ」「イギリス」と共通するチャート上位曲が減少傾向

国内で「洋楽離れ」が進んでいることは間違いないありませんが、韓国のチャートでもアメリカやイギリスのアーティストが上位進出しているわけではないようです。

また、たとえばインドネシアのチャートでもLady Gaga & ブルーノ・マーズの「Die With A Smile」が上位にランクインしているものの、それ以外はインドネシア国内の人気アーティストが上位。

つまり「アジアではアジアの音楽が聴かれ、英語圏では英語圏の音楽が聴かれている」のが現状と言えるのではないでしょうか。これまで「音楽」の発信は欧米やラテンが中心でしたが、そうした文化圏に次ぐか、追いこす勢いでアジアも「音楽の文化圏」になりつつあるのかもしれません。

良い見方をすると、アジアの国々は音楽を「輸入」する必要がないほど文化が成熟したと言えるでしょう。一方でザ・ビートルズやマイケル・ジャクソンの楽曲のような世界的ヒットは明らかに生まれにくくなっているとも言え、同じ音楽を世界中の人が楽しむ光景は段々と見られなくなっていくのかもしれません。

オトナライフ編集部
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