WOWOWの契約はもう不要? 衛星放送に動画配信サービスに対する優位性はあるのか

動画配信サービスの普及により、国内外で「テレビ離れ」が加速。その影響は、WOWOWのような衛星放送にも及び、契約者数は減少傾向にあります。かつては独占放送されるスポーツ中継などが魅力でしたが、動画配信サービスもこれらのコンテンツを充実させており「WOWOWを契約する意味」について考えている人もいるのではないでしょうか。

今回は「WOWOWの現状」や「2024年現在、WOWOWと契約することに意味はあるのか」を改めて見ていきましょう。

WOWOWの契約件数は継続的な減少傾向

まず2024年現在、WOWOWの契約件数は継続的な減少傾向にあります。

WOWOWの契約件数は継続的な減少傾向1

(画像は「WOWOW」公式サイトより引用)

2024年9月時点での累計正味加入件数は240万1,354件ですが、

・2023年度:246万7,112件
・2022年度:255万9,552件
・2021年度:268万0,411件
・2020年度:279万1,471件

という推移であり、右肩下がりのフェーズにあると言えるでしょう。およそ4年の間に30万人以上の加入者を失っているとみられます。なお2010年代半ば~2020年度頃までは契約件数はどちらかと言えば横ばい~微増傾向でした。たとえば2014年度の累計正味加入者数は、275万6,330件です。

「巣ごもり需要」を逃したWOWOW

先の加入者数推移の注目点は「2020年以降、右肩下がり」である点です。2020年度からの数年間は、新型コロナの感染拡大が顕著な時期であり「巣ごもり需要」が生まれていた時期。WOWOWのようなサービスと「巣ごもり需要」は本来は相性が良いはずです。

「巣ごもり需要」を逃したWOWOW1

(画像は「WOWOW」公式サイトより引用)

実際、U-NEXTやNetflix、ABEMAなどはこの巣ごもり需要をきっかけに成長しています。一方で、WOWOWはその波に乗り切れなかったと言えます。「衛星放送」の視聴開始までのハードルの高さや、他の動画ストリーミングサービスや、より手軽に見られるYouTubeなどの存在がWOWOWへのハードルをより高くしてしまった可能性があるでしょう。

競合であるスカパー!は宇宙事業へと軸足を移す

なお衛星放送が動画配信サービスに対して明確な強みを打ち出せず、苦戦する傾向は「WOWOW」だけにみられるものではありません。たとえば、スカパー!も同様です。しかしスカパー!は、実は宇宙事業へとすでに事業の軸足を移しており、業績は好調。ほかにも航空機やクルーズ客船で使えるWi-Fiの提供も進めていて、業績は極めて好調。つまり放送・通信やコンテンツ制作とは別に収益の主軸があると言えます。

スポーツなどライブエンターテインメントの独占性の高さを強みとしてきたWOWOW

では「衛星放送」にいまだ主軸を置くWOWOWの将来は明るいのでしょうか?

まず従来、WOWOWの加入者数はスポーツイベントの有無に大きく左右される傾向があります。たとえば、サッカーのチャンピオンズリーグの放送があった2022年度第2四半期(6〜9月)では、5四半期ぶりに会員数が1.3万人増加し、一時的な下げ止まりを見せました。

スポーツなどライブエンターテイメントの独占性の高さを強みとしてきたWOWOW1

(画像は「WOWOW」公式サイトより引用)

WOWOWは長らく「スポーツ、音楽などのライブエンターテインメントの独占性」を大きな強みとしてきた放送事業者であると言えるでしょう。

その象徴的なライブエンターテインメントの1つが「スペインサッカー ラ・リーガ」です。WOWOWで「スペインサッカー ラ・リーガ」の放映がはじまったのは2003年。この年はデビッド・ベッカム選手がレアル・マドリードに加入、また、ロナウジーニョ選手がバルセロナに加入した年。これは「スター選手の試合を見るにはWOWOWに加入しなければならない」ことを印象づける出来事でもありました。

こうした人気が高いライブエンターテインメント(スポーツ、音楽など)を独占配信するという方向性は、WOWOWの「中期経営計画(2021年-2025年度)」にも重要な項目の1つとして盛り込まれており、2024年現在でも方向性に大きな違いはないとみられます。

「スペインサッカー ラ・リーガ」は中継終了

前述した通り、「スペインサッカー ラ・リーガ」はWOWOWの目玉のひとつでした。しかし、ラ・リーガの中継は2023年5月に終了を発表。その理由として、「放映権料の高騰」と説明されていました。一方、U-NEXTは専用パックで「ラ・リーガ」を配信。さらにDAZNでも配信が行われています。

こうしたライブエンターテインメントの独占配信は、動画配信サービス各社も主要な収益源になり得る対象としてライセンスの獲得に非常に積極的に動いています。

つまり「独占配信」を重視する反面で、加入者数の下降が止まらず、放映権の取得競争でWOWOWは徐々に不利になりつつあります。少なくともスペインサッカーに関しては、放映権の高騰に企業体力が追い付かない状態になってしまった可能性が高いです。

今後の重点的な取り組みに「大型オリジナルコンテンツ」を掲げるWOWOW

WOWOWの「中期経営計画(2021年-2025年度)」ではライブエンターテインメントの独占配信のほか、大型オリジナルコンテンツへの取り組みも明かされています。

その一例の「大型オリジナルコンテンツ」が、北方謙三さんの歴史小説『水滸伝』の初の映像化とみられます。監督は映画『沈まぬ太陽』などを手掛けた若松節朗さん。主演は織田裕二さん。

今後の重点的な取り組みに「大型オリジナルコンテンツ」を掲げるWOWOW1

(画像は「WOWOW」公式サイトより引用)

織田裕二さんは「この歳で、このような作品と出会えて嬉しい。人生観が揺さぶられるような撮影になることを期待して。この閉塞感の続く日本に水滸伝は見逃せない。」とも述べており、WOWOWで放映される連続ドラマとしては屈指のスケールの作品となることが期待されます。

一方で2020年度から4年間で30万人以上もの加入者を失い、さらにライブエンターテインメントの中心であったスペインサッカーの放映権も失ったWOWOWの苦境を一本の連続ドラマが救い得るのかは未知数でしょう。『水滸伝』の放映開始時期と、放映開始後の加入者数の推移は注目に値します。

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