「テレビ局」と「Netflix」アメリカではどちらがより多くテレビで視聴されている?

この記事をお読みの方の中でも、『家のテレビをチューナーレステレビに変えた』『テレビは家にあるけれど、実際に視聴しているのはYouTubeやNetflix』という方は少なくないのでは?

よく「テレビ離れ」が議論される際、比較されがちなのは「テレビ」と「スマホ」。しかし、実際にはコネクテッドTVが普及したことで「テレビで視聴されるコンテンツもYouTube配信などに置き換わっている」ことを肌で感じている方も多いはず。

「テレビ視聴時間」だけに計測対象を絞った際、テレビ局の番組はいまでも見られていると言えるのでしょうか?

アメリカのテレビ視聴行動に関する調査結果が、この疑問に対する興味深いアンサーを出しています。今回はアメリカの視聴データを参考に、テレビ視聴行動「だけ」を参考にした際、いわゆる「テレビ」とストリーミングはどちらがより多く見られているのか解説します。

「テレビ局」と「ストリーミング」はどちらが勝っている?

まずアメリカのテレビ放送はCBSやABCに代表される局と「独立系(ケーブルテレビ)」の2つに分けられます。

今回の記事では「(※アメリカの)テレビ局」と総称する際は、ABCなどの局とケーブルテレビをどちらも指すものとします。そしてアメリカの「テレビ局」の、テレビ視聴行動における視聴割合は47.7%(2024年6月時点)であり50%を切っています。

(「Nielsen」調べ)

これは米メディア測定会社ニールセンが2024年7月に発表したテレビ経由のストリーミング視聴時間に関する調査です。

・ブロードキャスト(※ABCなど):20.5%
・ケーブルテレビ:27.2%
・ストリーミング(※Netflixなど):40.3%
・その他:12.0%

調査によると、2024年6月のストリーミング利用時間はテレビ利用時間に対して40.3%。つまり、アメリカでは「テレビ自体は見ているけれど、実際に見ている人のうち40%以上はYouTubeやNetflixなどのストリーミングサービス」という結果になっていました。

ブロードキャストやケーブルテレビを合算した「テレビ局」全体では47.7%の視聴があるため、テレビをストリーミングが完全に逆転したとは言えません。しかし合算せずに個別に数値を見ると、アメリカで一番視聴されているのは「ストリーミング」であると言えます。

なおストリーミングの内訳に目を向けるとYouTube:9.9%、Netflix:8.4%であり、この2つのサービスは単体として見ても極めて高い視聴割合を保持しています。

VODから「FAST」に移行しつつあるアメリカの動画市場

アメリカでのストリーミングの人気の高さはすでに述べた通りですが、あえて厳しい見方をすると「地上波の人気が日本ほど高く無いアメリカでさえ、ストリーミングがテレビ局を逆転するにはいたっていない」という考え方もできます。意外に「テレビ局をストリーミングが逆転するには、あと一歩が足りない」のかもしれません。

こうした点を議論する際に注目されているKWが「FAST」です。たとえば、Netflixは「VOD」に位置付けられるサービス。無数の映画やドラマ、バラエティなどのコンテンツの中から自分好みのものを能動的に選ぶことが求められる点が「良い点」でもあり「悪い点」でもあります。テレビほど気軽にながら見できないのが、視聴者を遠ざけている側面もあります。

一方、従来のVODサービスから、新たに消費者が選び始めているのが、「FAST」(Free Ad-Supported Streaming Television)と呼ばれるサービス。FASTは、無料で視聴できる代わりに広告が挿入される仕組みで、従来のテレビ放送のように、リアルタイムで番組が流れる仕組みとなっています。FASTはテレビのような「ながら見」に適している一方、広告収入で成り立っているため視聴者に費用負担がなく、さまざまなチャンネルを楽しめます。

「FAST」の中心的な役割を担うRoku

(画像は「Roku」公式サイトより引用)

FASTサービスの中で、特に注目を集めているのが「Roku」です。RokuはもともとはNetflixを主な用途とするストリーミングデバイスのメーカーでしたが、2024年現在では独自のFASTサービスも展開しています。2014年にRoku TVを開発した同社は、Netflixとはすでに決別。いまではアメリカで約400近くの膨大なチャンネルを提供しています。

VODが課題として抱える『「選ぶ」工数が大きく、だらだらと視聴するのに向かない』、『VODサービスに広告プランを導入すると視聴者からの反感を買うリスクが大きい』といった点を解消し得る一つのビジネスモデルとして「FAST」には熱い視線が注がれており、テレビ視聴時間を対象とした新たな広告サービスとして一大市場に発展する可能性を秘めています。

「FAST」の流れは日本にも波及する?

・テレビ局の総合編成的な番組作りの「退屈さ」
・VODの「ユーザーに求める能動性の大きさ」
・VODの「広告ビジネスとの若干の相性の悪さ」

という欠点を埋める可能性があるのが「FAST」です。2024年現在はNetflixに代表されるVODサービスが世界的に見ても人気ですが、徐々にVODは「FAST」へと移行していく可能性があります。

つまり『テレビ局』『VOD(※主に有料サービス)』『Rokuに代表される「FAST」』という三つ巴の形で、テレビ視聴時間のパイの奪い合いはアメリカで過熱するでしょう。

実はこの流れは「日本」にも一部波及しています。その代表格が「ABEMA」であり、特にFIFAワールドカップカタール2022の中継をきっかけに、ABEMAをテレビで視聴する習慣が身についた方も中にはいるのでは。

ABEMAを筆頭とする「コネクテッドTVでの視聴とFASTのモデルを前提に、配信事業へと乗り出す事業者」が国内でも次第に増え始めるかもしれません。アメリカのようにテレビ視聴の内訳の「40%弱」がストリーミング視聴という時代が、日本にも訪れる日はそう遠くないのかもしれませんね。

※サムネイル画像(Image:Wongsakorn Napaeng / Shutterstock.com)

オトナライフ編集部
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