従来のテレビと異なり、チューナーを内蔵していない「チューナーレステレビ」は、いまや家電量販店でも頻繁に目にする機器です。地上波の受信が不可のため「NHKを物理的に受信できないテレビ」としても注目を浴びています。
とはいえ多くの家庭では、チューナーを内蔵したテレビを利用し続けているケースの方が多いのではないでしょうか。ではチューナーレステレビに買い替えた場合、引き続きテレビで見られるものと見られないものはそれぞれ何なのでしょうか?
チューナーレステレビで視聴できるもの
先述した通り、チューナーレステレビの最大の特徴は「チューナーが内蔵されていないこと」。そのため、地上波の番組を視聴することはできません。代わりにネット接続は可能であり、多くのチューナーレステレビに内蔵されている「Google TV」「Android TV」を利用するか、Fire TV Stickに代表される周辺機器を用いることで、YouTubeや動画サブスクなどを視聴することが可能です。そして「自宅にチューナーレステレビだけがある」場合はNHK受信料の支払いが不要に。
さらに価格も2万円~4万円程度と非常に安価で、これらの点から若者層からの支持を集めています。チューナーレステレビで視聴できる例を、より具体的にご紹介します。
YouTubeなど動画サイト
「Google TV」「Android TV」や、Fire TV Stickを利用することでまずYouTubeに代表される動画サイトの視聴が可能です。
Googleの日本法人の公式発表によると、YouTubeの月間視聴者数は2024年5月時点で7,370万人を超えています。老若男女問わず「自分の好きな動画」や「自分の好きなチャンネル」を見つけやすい動画サイトが、YouTubeだと言えるでしょう。
チューナーレステレビでYouTubeを視聴することが習慣になると、「好きではないテレビ番組をダラダラと見る」習慣が自然と消えていくことに気付く方もきっと多いはずです。
なお、チューナーレステレビではYouTube以外にも「ニコニコ動画」「ABEMA」などの視聴ももちろん可能です。「Google TV」などからアプリをダウンロードすることも可能ですし、チューナーレステレビ上でブラウザを起動して視聴することもできます。
NetflixやAmazonプライム・ビデオなど動画サブスク
YouTubeやニコニコ動画のように無料でも視聴可能な動画サイトだけでなく、Netflixに代表される有料の動画サブスクを見ることも可能です。
これらの動画サブスクは「映画」「ドラマ」が充実しているのはもちろん、近年はライブ中継も充実。たとえばNetflixは2024年冬に、ボクシングのレジェンド選手であるマイク・タイソンの19年ぶり復帰戦を中継しました。国内外の大型スポーツイベントを見る際のプラットフォームとしても、動画サブスクは地上波に代わって定番サービスになっていくかもしれません。
TVer
チューナーレステレビでは、民放公式の配信サービス「TVer」も視聴可能です。地上波のドラマや番組も引き続き見たい場合、貴重なプラットフォームとなるでしょう。
Google TVやAndroid TV、Fire TV Stickを利用して「TVer」アプリを起動することで、民放のドラマやバラエティ番組、ニュース番組などを、放送後一定期間無料で視聴できます。
スマホやPCからのミラーリング
スマートフォンやパソコンの画面をテレビに映し出す「ミラーリング」機能を、チューナーレステレビで利用することもできます。Fire TV Stickなどを利用してミラーリングを行うことも、HDMIケーブルとAVアダプタを利用し、テレビと端末を直接つないでミラーリングすることもできます。
スマートフォンで撮影した写真や動画を大画面で楽しんだり、パソコンで作業中の画面を家族や友人と共有したりすることができます。
チューナーレステレビで視聴できないもの
一方で、チューナーレステレビでは地上波やBS/CSデジタル放送などは視聴できません。
地上波
チューナーレステレビ最大の特徴は、その名の通りテレビチューナーを内蔵していないことです。そのため「地上波放送」を視聴することはできません。もっとも、前述の通り「TVer」の視聴は可能です。NHKではなく民放の番組を楽しんでいる方の場合、意外とチューナーレステレビでも不自由を感じることがないかもしれません。
BS/CSデジタル放送
地上波と同様に、BS/CSデジタル放送も内蔵チューナーがないため視聴することができません。もっとも、たとえばスカパー!は放送契約者向けに「スカパー!番組配信」を提供中。また配信サービスとして「SPOOX」も提供中です。
BS/CSデジタル放送でどのチャンネルを視聴するかにもよりますが、局や番組によっては「放送」ではなく「配信」で楽しめる環境がすでに整っている場合があります。
「テレビ局」と「ストリーミング」の存在感が並ぶ日が近い?
チューナーレステレビが家電量販店に並ぶのが「当たり前」になったように、テレビ視聴のスタイルは、確実に変化を遂げています。特に若い世代を中心に、従来の放送波による視聴からインターネットを介したストリーミング視聴へとシフトする傾向が強まっていると言えるでしょう。
たとえば米メディア測定会社ニールセンが2024年7月に発表したテレビ経由のストリーミング視聴時間に関する調査によると、アメリカではNetflixなどのストリーミングサービスの利用時間はテレビ利用時間に対して40.3%。ブロードキャストとケーブルテレビを合算した割合が47.7%のため、ストリーミングサービスの視聴時間が「テレビ局の番組視聴時間」にかなり迫っていると言えます。
これはアメリカの調査結果ですが、「若者のテレビ離れ」は日本でも顕著です。日本でもチューナーレステレビが流行り、なおかつNetflixなどの動画サブスクの加入者が増えていることを考えると、アメリカと同様にテレビ局の番組視聴時間とストリーミングサービスの利用時間が並ぶ日は近いのかもしれません。
※サムネイル画像(Image:Jeppe Gustafsson / Shutterstock.com)