「Amazonプライム・ビデオ」が動画配信サービス市場で存在感を増すことになりそうだ。というのも、プライム・ビデオを提供するAmazonが、ハリウッドを代表する老舗映画スタジオ・MGMの買収を発表したのだ。買収成功によってMGMの所有する多数の映像作品をAmazonが保有することになるとされており、これをきっかけに市場シェアが大きく変わる可能性もありそうだ。
今回は、Amazonが狙う市場の影響力拡大の様子についてお伝えしていきたい。
Amazonが映画スタジオの買収に成功
MGMは、「007」「ロッキー」といった人気シリーズや名作と名高い「風と共に去りぬ」、「トムとジェリー」などアカデミー賞受賞作からアニメ作品まで、多彩なジャンルで世界的な作品を生み出してきた有名な映画スタジオだ。
しかしそんな老舗スタジオも近年は資金難に苦しんでおり、2020年にはコロナ禍の影響で映画「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」の公開延期が繰り返される事態に。資金繰りが悪化し、これまでもアップルや「Netflix」との間で買収交渉が進められていたものの残念ながら決裂してしまっていたようだ。
その状況でプライム・ビデオの拡大を狙うAmazonが買収に名乗りを上げたといい、AmazonはMGMを約90億ドル、日本円にしておよそ9,800億円、で買収するための契約の交渉段階に入っている、と報じられていた。そして現地時間26日、84億5千万ドル(約9,200億円)での買収が実現したという。
Amazonが過去の名作映画の権利を多数獲得し、プライム・ビデオで独占配信できるとなれば動画配信サービス市場にも影響を及ぼすことは確実だ。プライム・ビデオの競争力はアップし、市場シェアの拡大につながることだろう。
エンターテイメント業界を中心としたマーケティング会社・GEM Partners株式会社(ジェムパートナーズ)が2月に発表した「動画配信(VOD)市場規模」によれば、日本国内における定額制動画配信(SVOD)の全体市場規模は推計3,894億円。プライム・ビデオはそのうちの12.6%を占めて業界2位のシェアを獲得しているとされている。しかし1位のNetflixは19.5%とコロナ禍で一気にシェアを拡大した格好だ。これ以上離されるわけにいかないプライム・ビデオとしてはなんらかの起爆剤が必要なのは確実で、今回はMGMの持つ作品群に期待を寄せているのかもしれない。
近年の動画配信サービスでは、質の高い“オリジナル作品”の豊富さが競争力の要因として取り上げられることも少なくない。しかし当然ながら“不朽の名作”の需要も健在で、プライム・ビデオでしか見られない作品が多数あるならばそれが大きな強みとなるだろう。
AmazonのMGM買収成功によってプライム・ビデオの躍進へとつながるのか。今後も動画配信サービスのシェア争いから目が離せなくなりそうだ。
参照元:米Amazon、映画製作大手MGMを9200億円で買収 Netflix対抗【ABEMA TIMES】
出典元:定額制動画配信(SVOD)のサービス別市場シェア推移【ジェムパートナーズ】
※サムネイル画像(Image:AhmadDanialZulhilmi / Shutterstock.com)